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はんなり???!!!着付師物語 第二章❹父親の怒り

未来は、相変わらず遊び歩いていた。
ある日、先輩が車で出かけようと誘ってくれた。
30分ほどドライブした後、ボーリング場にでも行こうという話になった。

ボーリング場のパーキングに入った。
その頃は、ボーリングが流行っていたから、満車に近くて、停める場所がなかなか見つからない。
やっと、見つけたので、そこに停めようとした時、大きなクラクションの音が鳴った。
自分たちのこととは思わず駐車しようとしていたら、ガラの悪そうな男が2人、先輩の車のウインドウをゴンゴンと叩いた。
先輩はウインドウを下ろした。
「お前、舐めてんのか?俺らがまっすぐ進みたいのに邪魔しやがって!!降りろ!車から」
どうやら、自分たちの進路を未来たちが遮ったと言って難癖つけにきているようだ。
先輩もわざと彼らの行手を侵害した訳ではないし、こんなに混んだパーキングなのだから、仕方ないとしか言えない。
けれど、その柄の悪い2人は、喧嘩する理由が欲しかっただけなのか、車から降りた先輩にいきなり殴りかかった。
そして、殴る蹴るの暴行を加え続けた。
先輩は地面に倒れ込んでいる。2人は上から横から蹴りつづけている。
未来の頭の線がプチッと音を立てて切れた。
未来の仲間たちは、車やバイクに、なんらかの武器になるようなものを必ず積んでいる。先輩の車にも警棒のようなものが積まれていた。未来はそれを手に取って、車外に出た。
1人の男を狙って、未来は思い切り棒をふりかざした。一撃で男はうずくまった。
そのまま、棒と脚をつかって、1人の男を殴る蹴るの集中攻撃をした。
未来は、「こら!舐めんな!!お前らが悪いだろ!!こっちは車停めてただけだ!!反省しろ!!」大声で奇声を上げながら、男をボコボコにしている姿は、まるで阿修羅だった。
未来はとにかく動きが早い。そして見た目と裏腹な馬鹿力がある。
男は気絶した。
それを瞬きも出来ずに、止まったまま見ていたもう1人の男は、未来と目が合った瞬間腰が抜けてへたり込み、なんと失禁した。
よほどの恐怖を感じたのだろう。
未来は、気が済んだので、先輩を担ぎ起こした。
「大丈夫?先輩?」救急車呼ぶね。こいつもいるし。
未来は、なんと、自分が1人を気絶させたにも関わらず、救急車を呼ぶのだ。
未来は、ただ理不尽なことが嫌いで、先輩を助けるためにやるしかなかったと思っているから、逃げも隠れもするつもりはなかった。
救急車がやって来た。パトカーも来た。
未来の先輩と失神している男を搬送して行った後、未来と失禁した男は、パトカーに乗せられて、警察署に向かった。そこで事情聴取を受け、また、勾留された。

未来の父親が、翌日、無表情のまま迎えに来た。
未来は、その姿にただならぬ怒りのオーラを感じずにはいられなかった。

2人は無言のまま父親の車で帰宅した。
家に入ると、その日、母親たちは出かけていた。

「みんな出かけてるんだね。」

「お前と2人きりで話があるから、お母さんたちは、近くのホテルに泊まらせた。」

「へぇ、、、」
未来は嫌な予感がした。

次の瞬間、父親の拳が未来の頬に食い込んだ。無防備だっただけに、頭がグラングランする。
「オレは、約束を破る奴は、絶対に許さない!!お前が足腰立たなくなるまでめった打ちにした奴は、また病院送りだ。しかも、あれはオレが世話になってる人の息子だ。
それは、知らなかっただろうが、とにかく、お前は前回オレに誓ったことを見事に破ったな!!尻拭いは全部オレがやってるんだ!」

「だって、私がやんなきゃ、先輩が半殺しになるとこだったし、わたしたちに言いがかりつけてきたのあいつらだよ!わたしたちは悪くなかった。」

「黙れ!!全然反省してないな。」

父親は、未来の髪の毛を鷲掴みにして引きずった。
「痛い!お父さんやめてよ!!」
父親は、未来の言葉なんか気にも留めずに、風呂場まで未来を引きずっていった。
バスタブの蓋を開けると、めちゃくちゃ熱そうな湯がはってあった。
父親はそのまま未来の頭を熱い湯の中に突っ込んだ。
「ごぼ!ゴボゴボ、、、アツっ!、、」
未来は熱湯に頭を突っ込まれ、父親に頭を押さえつけられ、熱いし、息が出来ずに苦しい。
しかも、もがくから鼻から口から水が入ってきてパニックになった。
もう死ぬかもしれないと思う寸前で、父親が髪の毛を引っ張って、水上に顔を出させた。

「ゲホ、ゲホゲホ、、ゲホ、、、」咳き込んでる矢先にまた熱湯に顔を突っ込まれ、落ちる寸前にまた髪を引っ張られて顔を出して息をするも束の間、また、湯の中に押し込まれる。
これが数回以上続いた時、未来は本当に命の危険を感じた。

未来は一生を通じて、三回、本気で死ぬかもしれないと感じる目にあったが、これがその第一回目だった。

父親の折檻がどうやら終わったらしい。
未来は、反省したかどうかは別として、父親がここまで怒り狂うぐらい約束を破ったことに重みを感じたし、二度と約束は破らないようにしなければと思った。
そして、父親に何か言い返す気力も体力ももはや残っていない。

父親はぐったりしている未来を見て言った。
「本当に、お前はオレにそっくりだ。
一番似て欲しくないそのキレやすい質と自分が一番強くて誰にも負けないと思っているとこ、そのまんま受け継ぎやがって。
下の二人は穏やかな母さんに似たのに、なんで長女の、娘のお前がそんなに荒くれなんだ。
お前を見てると腹が立つ。
綺麗な服着せて、蝶よ花よと育てるつもりだったのに、人様の子どもに怪我させるほど、暴れん坊に育ちやがった。
その性格は、直らねえ。
けどな、もう一度言う、偉そうなこと言うのは一人で生きれるようになってからだ。
それから、二度と約束を破るな!
分かったな。
今日は、このまま寝床について、しっかり考えて反省しろ。」


続き↓



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