逡巡(ためらい)

切り揃えた前髪を揺らす緩い晩夏の風

黒目がちの三白眼 所在ない迷子のよう


微笑んだ唇がわずかに陰るのを見た

青白い横顔に反射するのは僕の虚像


「僕の傍にきなよ、怖がらなくていいよ」

わかってる これは自惚れだ

背負ったのがどんな痛みだとしても

いまの僕らにはもう届かない


色めいた花弁を濡らす温い仲春の雨

凛と伸びた華奢な背中 いま旅立つ人のよう


孤高が君を愛すると知っても

口をつくのは愚かな言葉


「僕の傍にいなよ、強がらなくていいよ」

わかってる それはわがままだ

描いたのはそんな未来じゃなかった

伸ばした手はまた届かない



“僕の傍にいてよ、どこへも行かないでよ”

わかってよ 僕はわがままだ

望んだのはこんな終わりじゃないんだ

隠した思いはまだ声にならない


果ての果てを目指して

どこまでも君は往くんだろう

痛いほど真っ直ぐな瞳に

見惚れていたはずなのに


「君の傍にいたい。どこへも着いていくよ。

……わかってる、いつか嘘になるけど」


笑ってるくせにどうして泣くの?

執筆活動で生計を立てるという目標を持っております!!