バースにて

川があんなに低くにあるのは
街の上に街を積み上げたからだ
橋桁にとまるふくろうが
こちらをじっと見つめている

どれほど天井を高く作っても
空だと言い張ることはできない
そう気づいた人がどの時代にもいて
だからせめて空を指さすことにした
できるだけ正しく
できるだけ末永い方法で

積み上げられた街の中心に
ひときわ高く尖塔はそびえる

指させる空は
どこにでもあるし
どこにもない
もしかすると身体の縁から既に
空が始まっているのかもしれない
と気づいてもなお
指さす先に目を向けたがる

顎を上げれば嗚咽のように
喉はしめつけられ
尖塔の先の風見鶏が
夕刻の最後の光を集めている

(2017年3月)

ユリイカ 詩と批評 平成29年5月号 三角みづ紀選 佳作


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