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歯のない父にそっくりなわたしの話②

高校に入って
実家の居酒屋が破産した

中学の終わり
高校受験のときに
すでに分かっていたこと
だから引っ越すことが決まっていた

父がある日、
住居部分からひとつ扉を開けて
居酒屋部分を覗くと
カウンターで
ひとり泣いてるのをわたしは見た事があった。

なんだか見ちゃいけないものを見た気がして
何も言えず静かにドアを閉めた

引越し先はわたしの高校から
自転車で15分位の場所だった

あの時 引っ越した先は
いわく付きの借家だったと今でも信じている

5.6台ほど
駐車可能なスペースが広くあって
裏には小さな庭
2階に3部屋
1階はリビングに和室、お風呂、トイレ
なかなかキレイで月10万円。
今思うと多少の田舎とはいえ
車で10分圏内に色々揃う町としては安いと思う。

引っ越してから
さらに両親の喧嘩は目に見えて増えていった
どうしてそんなことで喧嘩になるのかと
分からないものが多くなるほど
家族の空気は悪くなっていた

遊びに来た霊感のない友人が分かるほど
なにかおかしな家だった

友人は泊まりに来て
深夜にトイレへ…
戻ってくるなり
「ねえ、隣の家の人まだ起きてんだね」と
言ってきた
寝ぼけてんのかな?と思いながらも
いつのまにか寝てしまい
朝を迎えた

そして家から出た瞬間
友人が
「え!隣の家ないじゃん」と青ざめた顔で呟いた

話を聞くとトイレから聞こえたのは
夫婦が話し合っていて
間に赤ちゃんの鳴き声が響いてる感じだったらしい。

他にも
1階にいると2階で何かが駆け回る音
母はネズミや猫だと言っていたが
こんな鮮明に聞こえるかな?ってほどだった

その頃の母はよく分からないことで
わたしにも怒っていた
「お母さんのクローゼット開けたでしょ!開けっ放しになってんのよ!!」
とよく言われたが
わたしは開けた記憶がなかった。

わたしはこの頃初めてちゃんと失恋して
食事も取れなくなるほど落ち込んだ時でもあった

何もかもうまくいかないなぁ

リビングのソファでずっと天井見てた
成長期でもあったのか
わたしは体重変わらず急激に背が伸びた。

特に反抗期はなかったが
バレンタインのとき
友だちに作ったチョコの失敗作を見て
父が「これ、食べていいか?」と遠慮がちに言ってきた

今思うと、
父の分も作ってあげたら良かったなと思った。

ある日
母がわたしの部屋に来て
「2週間後に離婚します。」
と告げた

決定事項だった。

結果報告だ。

紙を出すのが2週間後なだけで
すでに結婚歴25年に終止符を打っていた

わたしは16歳だった。

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