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なぜチェンマイで歌うのか〜2024年〜

2024年。元旦に北陸で大きな地震が起き、被害に遭った方々がいる。1月2日には、海上保安庁の緊急物資を運ぶための飛行機と旅客機が接触する事故が起きた。
運命とは、何故かくも残酷なものなのだろうか。
人は生まれる前から自分の魂の成長のために、いつどういう出来事に見舞われるのかあらかじめ計画してきているという説がある。
今までの自分の半世紀の人生を振り返って、それはある程度信じられるのだが、こと災害や事故・犯罪のニュースを見ると、やはり無関心ではいられないし、心乱れる。何かしてあげたいと思うようになる。

年末、12/28〜12/31にかけて4days、チェンマイでThinkParkというところで依頼があり、弾き語りライブを1時間ずつ行った。その謝礼が出るようなので、そこから半分は日本のために、半分は昨年取材をしてもうすぐ記事をアップ予定のタイにあるボランティア団体に寄付しようと思う。

歌うのは趣味だ。自分の歌は自分でそこそこ気に入っている。
ヘタではないと思うし、第一人前でヘタだと思ったら歌えるわけなんてない。
もちろん、自惚れるほど子供じゃない。
毎回、適度な緊張感を持って臨む。
ステージでアガったことは今まで無い。
本番に強いタイプだ。
それも、めちゃめちゃに。

自分が13歳のころに亡くなった親父(享年48歳)は、高校生の頃トランペットを吹いていたらしい。野球の強い高校で、甲子園の常連だった。
親父は甲子園で応援団長をしたこともあったようだ。
全て本人から聞いたことはない。
聞く前にあの世に逝ってしまった。

3年前、親父の亡くなった歳に到達した。
どうやら自分はもうちょっと長く生きるようだ。
だったら、これまで以上に自分のために生きていこうと決めた。
そして、地元のタイ人のシティポップバンドに誘われてボーカルになった。

もともと高校生の頃からドラムを叩いていた。
大学生の頃には一瞬プロを目指したこともあった。
ただ、プロになるにはいろいろなものを犠牲にして捨てて、「ドラムバカ」にならないといけないようだった。
そんな道は捨てて、国際協力の道を志した。
道半ばにいろいろあって、今はチェンマイで暮らしている。

そのチェンマイで、自分の歌を求めてくれる人たちがいる。
バンドメンバー、そしてそのお客さんたち。
自分で言うのも何だが、ステージ根性が良いので、とにかく実力以上のものを発揮できることがある。
いや、おそらくそれが自分の実力なのだろう。ステージでしか磨けない感覚は、確実にある。

大晦日までの4days、ステージは狭くて両隣の店からそれぞれ聞こえてくるBGMやそのお店の雇ったミュージシャンによる演奏が否が応でも聞こえて、自分の歌やギター演奏が聞き取りにくいこともあった。
だが、そうした困難な状態のステージでも、いや、だからこそ新たな経験が積める。

精一杯、毎回ベストを尽くした。ギターは下手だ。もともとギタリストじゃないし、簡単なコードを押さえてリズムで誤魔化すしかない。
楽譜が見えにくくてコードを間違えることもあったし、キー設定を間違えたりもした。
でも、目の前で喜んで聞いてくれる人たちがいた。

終盤、日本の歌なんて知らないはずの女の子がじーっと聞いてくれて、最後にはわざわざ親に頼んで10バーツコインを持ってきて、渡してくれた。
目も合わせず恥ずかしそうではあったけれど、確かに彼女の意思で来てくれた。
おじさんの歌には、それぐらいの力はあるんだな。

x0.5レンズ設定のせいで、横にびろーんと広がって太って見えるICHI-SAN。
まぁ、実際ちょっと太り気味ではあるし、ルックスで売るのはもう無理なお年頃。帽子もかぶっておかないと可哀想。でも4days最後にしては声はなかなか出ているし、リズムも悪くない。
音楽はテクニックじゃない(あった方がいいけど)、ハートだ。

目の前に座っていた二人組のタイ人の女の子たち。
米津玄師や竹内まりやの曲の反応が良かった。
もしや?と思ってやってみた「恋するフォーチュンクッキー」では、座りながらだけれど振り付きでノってくれた。
後で聞いてみたら、一人は日本語がペラペラで、アユタヤの日系企業に勤めていて、今日は地元に帰ってきて友達と二人で来ていたそうだ。

自分の歌が必要なければ、ただの騒音だし迷惑だっただろう。
だけど、楽しんでくれる人がいる。
認めてくれる人がいる。
少しでも何か感じてくれる人がいる。大袈裟だけど、少しでも世界平和に貢献できる気がした。

だから、2024年も歌う。好きな歌を歌う。
ヘタなギターを弾く。
たまに、素晴らしいバンドメンバーと、大いに盛り上がって歌う。
全て出し尽くす。
愛と根性を込めて。

その中でお金がもらえたら、ちょっとだけでも寄付にまわす。
それが自分のできること。そうさせてもらうことで自分を守る。
誰かを守る。地球を守る。
下手なギターを弾いて歌う理由ができたから、もっと強くなれる。
好きな歌を歌うたびに。

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