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ジャック・リヴェット監督作「セリーヌとジュリーは舟でいく」1974@早稲田松竹

早稲田松竹にて、待望のジャック・リヴェット特集が始まりました。この日を待っていました。


「セリーヌとジュリーは舟でいく」1974
Céline et Julie vont en bateau (Phantom Ladies Over Paris) , 1974

上映時間192分です。

1974年にロカルノ映画祭やニューヨーク映画祭で特別賞を受賞するなど、世間的にヒットした(?)リヴェットの代表作。とはいえ、3時間越えの長尺、わかりやすい物語でもないし、美男美女の恋愛もないし、、。この実験的で演劇的な作品が、当時、どれほど一般に受け入れられたのだろう。。

とはいえ、これこそ、リヴェット先生の金字塔。パリの空間の軽やかさをそのまま映像化したリヴェット作品はまさに「パリっぽい」感じで、個人的には大好きです。


過日、ゴダール先生が91歳で亡くなり、ヌーヴェルヴァーグの灯火はきえたのか、いや、とっくに消えていたのかも、とも思いつつ、やっぱり、「映画」を信じながらも安穏と受け入れるのではなく、「映画」システムを懐疑しながら世界を構築しつづけたのがヌーヴェルヴァーグであり、その中のひとりで、映画に舞台劇の竿をさしつつ、物理的空間をそのまま映像化したかのリヴェット作品がもっともヌーヴェルヴァーグ・パリジェンヌであった、とか、ともかくよくわからないけれど、内容なくとも一文で長々書けばどうにかなる的なのがヌーヴェルヴァーグです。一文を短く書けとかメルドです(遠慮がちに)。。

3時間超えの長尺のなか、独特の倦怠感と疾走感がリヴェット映画のだいごみで、モンマルトルや、パリ郊外(rue du Nadir-aux-Pommes)の風景を背後に、ふたりの女性が出会い、現実の生活から虚構の生活へと手を取りあいながらしのびこんでいくめくるめく映画時間。

セリーヌとジュリーが生きるパリの時空と、郊外の一軒家内部(セリーヌが不幸な幼少期をすごした家?)の物語の時空が、おしゃぶり飴で仮想体験となり、最終的に物理的にふみこむことで、最終的に、映画というシステムにおける「現実」と「虚構」の境界線を破壊してしまう。

映画における物語性に対する懐疑から出発することで、映画という構造により、ひとつの生きられた虚構をスクリーン上に実現してしまうやりかたは、たぶん、少なくともこの時代においては、リヴェット独特の手法であったと思います。

モンマルトルのケーブルカーとか、ケチなので乗ったことなかったです。いつか乗ってみたい。2分で頂上までついちゃうみたいだけど。

それはともかく、映画に資料性を求めるのであれば、おうちの小さな画面でVHS、DVDやネット配信もよいかもですが、リヴェット作品のように、持続する時間を体験することで成立するタイプの映画は、やっぱりスクリーンでみるのが一番だな、と思いました。

リヴェット先生、母校であるルーアンのピエール・コルネイユ高校のサイトで紹介されていた写真があまりにさわやかだったので、最後にリンクしておきます:


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