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【いちばんすきな花8】相手に向き合う円すい

志木美鳥(しき・みどり)は円すいだった。ゆくえ・春木(椿)・よよ(夜々)・佐藤君(紅葉)によって、受け取られ方は違うけど同じ円すい。久しぶりに再会しても、それぞれにとってしっくりくるのも面白い。

ゆくえは言う。
円すいは見る人の勝手によって、三角形にも円にも見える。でも、円すいの気持ちはどうなのだろう、と。

私見だが、円すいはそれでもいいと、思っているはずだ。
いちばんすきな花に関するある考察動画で、小説家・平野啓一郎さんの提唱する分人主義が取り上げられていた。人はそれぞれに見方によって違う側面があってその集合体である。個人のしっかりとした核が外見に覆われている個人主義ではない。

円すいが三角形にも円にも見られるのは、見る人が向き合ってくれるからだと私は思う。見る人の見やすい見方によって相手を表現する。いい加減な見方ではない。いい加減だったら、ああ、普通の「円すいだね」で終わってしまう。

あんなに複雑な図形を平面に落として考えられるのは、単に単純化しているのではなく、自分なりの切り口に落とし込んでいるから、とは考えられないだろうか。

駒は向き合うように並べる

表面を模倣するだけなら、始めて将棋の駒を並べたときにどちらに向けて並べてよいかもわからない。相手に向き合えばこそ対峙できるのだ。

みんなと同じ考え方をしない精神は、次の世代にも引き継がれているのもうれしい。ゆくえの学習塾に通うふたりの生徒(希子と穂積)にも、人と違う苦しさと向き合ううれしさが垣間見えていた。

さて、次回はいよいよ、紅葉と美鳥の対面。得意の数学で赤点を取ってまで受けたかった美鳥の授業とは。4人のうち最後に迎える化学反応はどんなだろうか。それと、美鳥の教え子だったゆくえと赤田の関係がどう変わるかも楽しみだ。静かな余韻と期待でまた一週間過ごせそうだ。

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