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「成瀬は信じた道をいく」はやりすぎか?

「成瀬は信じた道をいく」は、2024年本屋大賞「成瀬は天下を取りに行く」の続編。主人公の成瀬はパワーアップする。

前作で成瀬が天下を取りに行ったといっても、せいぜい、西部大津店に毎日通うかM・1に挑戦するくらいだった。もちろん、これだけでも常人の想像する範疇を超えるのだが、続編はさらにぶっ飛んでいる。

たとえば成瀬といえば、今どきスマホを持たない珍しいどこか考えの固い少女というイメージだった。続編ではそのイメージを軽々と乗り越える。持たないことが目的ではなかったのだ。観光大使という目的のために、持つだけではなくInstagramにまで手を出す積極性に驚く。個人的に一生スマホは持たない変わった人物でいてほしかったが、作品の世界観が爆発的に広がった。

周りの巻き込み方も半端ない。成瀬に憧れ執着するのは、親友の島崎だけではない。最終話の探さないでくださいでは、この本に登場するオールスターキャストで成瀬を追い続ける。まるで大団円へ向かう推理小説のようだ。

当初本作を読み終えたとき、続編での活躍ぶりは飛躍しすぎではないかと思った。しかし、冷静に考えればバイトやパトロールに励んだり、得意のけん玉を生かしたりしているだけで現実世界から浮き足だってはいない。やりすぎとの印象を持った私は、彼女の活躍に興奮しすぎていたに違いない。前作を気に入った人に全力でおすすめする。

最後に、前作のレビューも載せておきます。


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