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How to Hide an Empire: A History of the Greater United States 帝国の隠し方:より広大なアメリカの歴史

2022年2022年6月11日

著者、Daniel Immerwahrは、シカゴの北に隣接するエバンストン市(関西で言うと神戸に隣接する芦屋みたいな位置づけかも)にあるノースウエスタン大学の歴史教員。

副題のthe Greater United Statesは、掛け言葉になっていて、皮肉をこめて「より偉大な」という意味でのGreaterと、思っている以上にアメリカの覇権が広がっている、という意味での「より広大な」の意味とになっています。

この本は厳密な意味での学術書ではありません。膨大なリサーチを基にしつつも、参考文献や注釈をあまり上げていない、日本で言えば良質の新書的な位置づけ。でも、ボリュームは学術書並みです。いかにアメリカの植民地が歴史から隠されてきたか。たとえば、フィリピン。たとえばプエルト・リコ。純粋な意味での植民地ではなくとも、「本土」とは対等ではない数多の土地、と言う意味では立派な(?)植民地扱いだと思います。読後、日本もその一角を担っていることを意識させられます。

一番、驚いたのは"Puerto Ricans became citizens in 1917, U.S. Virgin Islanders in 1927, and Guamanians in 1950, though in all cases, because their citizenship is statutory, it can be revoked. Filipinos were never made citizens in their forty-seven years under U.S. rule. American Samoans, despite having been "American" since 1900, are still legally only "U.S. nationals. They are allowed to fight in the armed forces, which they do in extraordinary numbers--theirs is ranked top of all 885 U.S. Army recruiting stations. But they are not citizens, as the Fourteenth Amendment does not apply to them." (86-87).

要約するとプエルト・リコは1917年に、ヴァージン島は1927年に、そしてグアムは1950年に市民権が与えられるのですが、それは法令であって憲法で保障されたものではない。ということは、いつでも剥奪可ということでもあるのです。フィリピンは47年間アメリカの統治下にあったものの市民権は与えられず。アメリカン・サモアは1900年以来アメリカの統治下にあり、「国民」であるものの「市民権」はない、という複雑さ!にも拘らず、サモアの人たちは885ヶ所もある、軍隊のリクルートサイトでは、一番のリクルート率なのだそうです。(86−87)市民権はないのに兵士にはなれるよ、って。。。

次に驚いたのは、真珠湾攻撃のあと、アメリカ統治下のフィリピンでも日本人(日系人も含まれるか分かりません)が短期間とはいえ収容所に入れられた、ということでしょうか(181)

アメリカは、いわゆる従来型の非難されてきた植民地型支配をやめ、基地を置くこと、諸島を要塞化していくことで他国を支配していることがよくわかります。プエルト・リコが大きな実験場だったこと、ハワイ、グアムといった地域が軍事基地として存在していること、その延長にある沖縄。そう考えると、日本列島自体が基地、要塞化していくことは驚くことではないかも知れません。

アメリカ人の同僚に話したところ、市民権の二重性やフィリピンが植民地であったことを知る人はいませんでした。アメリカ史の専門家ではないとはいえ、大学教員でも知らない、ということです。

ともかく、情報満載で読後一ヶ月くらい経ちますが、いまだに色々な人に話して勧めている本です。

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