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なんでCD作らないんですか?

2020年の12/26にリリースしたアルバム『ほうれんそう』、丸一年が経過しました。改めて、末永くご愛聴をよろしくお願いします。
リリース以降、いくつか「なんでCDを作らないんですか?」「CDはありませんか?」というご質問、お問い合わせをもらったりしました。そもそも音楽配信サービスを使うことに馴染みが無い方は、ハードルを感じてしまった人もいたと思います。そして中には「無料で聴けてしまっているのだけど、ちゃんとお金に還元されていますか?大丈夫ですか?」と、心配していただいたりもしました。今週のポッドキャストでは、それらのアンサーをしようという内容になっています。
そして、なぜ配信だけなのか?、そのメリット、デメリットについても話しました。ミュージシャンサイドの話を知ってもらうのも面白いし、意義深い気がしています。是非聞いてみてくださいね。

作品を世に出す =?

配信のみという方法を取った理由は、主に金銭的に、そして気持ちとしても「現時点での自分のミュージシャンとしての規模感にフィットする方法だった」という感じです。

僕はこれまで「作品を世に出す」 = 「CDを作る事」と思っていました。そういう頃に活動を始めたので、どうしてもそういう思考になってしまいます。ソロでもバンドでも、アルバムを出すのは楽しい。だけど僕と我が家にとってはすごくギャンブルで、負担でした。「自分の音楽を作って、誰かに聴いて欲しい」という気持ちがスタートなのに、掛けたお金と時間を取り戻す為にやらなくちゃいけない事が生まれ、更にその為にやらなくちゃいけない事が生まれ...という連鎖で慌ただしくしているうちに、なんだか自分が何をしたくて頑張っているのか分からなくなってしまう感覚があって、苦しかったのです。
特に『チグハグソングス』を精一杯の形で出してからの数年は、ずーっと自分に合う方法について色々試したり探っていました。徐々にサブスクが一般化して、個人レーベルでも配信の登録が出来るサービスが生まれ、「作品を世に出す」という事の方法と答えが一気に多様化して、僕もやっとこれまでの当たり前や思い込みを捨て去ることが出来たのでした。

ローリスク・ローリターン

正直、音楽配信は今のところお金にはなっていません。アルバム1作品ごとの年間登録料を支払い、曲1回の再生で約0.3円〜多くても約0.8円くらい。更にそこから手数料が引かれたものが僕の取り分になります。情けないけど僕の再生数では雀の涙もいいところ。ローリスクだけどローリターン。
それでも、後ろ盾の無い僕には作品を出せる方法があるだけありがたい。しかも、在庫を抱えず、日本中&世界中に聴いてもらえるチャンスが広がったのです。これはものすごく夢のある事だと思います。次にやってみたい事、作りたいものについて、軽やかな気持ちで考えられています。

CD派の方がまだまだいらっしゃるのも否定しませんし、僕自身もフィジカルなモノが欲しいタイプの人ではあります。ただ、自分の今の規模感やスタンスに合わせて、なるべくシンプルに音楽を作り、世に出すことを大事にする為に、次回のアルバムも配信のみでと考えています。
なのですが、少しずつミュージシャンとして、より良い状況を積み上げていけたら、逆にモノとしての魅力に注力したような作品も作ってみたいという野望があります。どうか、今後も応援よろしくお願いします。

「仕方なく聴く」文化

僕が思っているサブスク時代の最大のデメリットは、「仕方なく聴く」という、作品との出会い方、向き合い方が多く失われたという点です。
昔、2000円とか3000円のお金を出してCDアルバムを買っていた頃は、お目当ての曲だけで満足しても、全体的にあまりピンとこなくても、「うーん、買っちゃったし、もうちょっと聴いてみようか...」というような“責任感”や“もったいなさ”のような気持ちで、仕方なく再生を繰り返していました。そうしてるうちに、初めは飲み込めなかった曲たちが存外スキになり、なんなら次第に人生に響いちゃうような大事な1曲、大事なアルバムになっていくというような事がちょこちょこありました。今、サブスクでそんな“責任感”や“もったいなさ”は感じる必要がありません。いくらでも試して、ピンとこなければ飛ばしてしまえる。勿論それは音楽を楽しむ側の自由で、何も悪くはないのだけど、そうなるとこれまで以上に、シングルっぽくない曲の独特な魅力といいますか、一聴では気が付きづらい、少し時間をかけて味わってもらいたいような曲たちが愛されたり、発見されるチャンスが減ってしまう。“味の濃い音楽”、“強い音楽”しか生き残れなくなるというのは、なんだかつまらないなと思っています。
僕の曲も、味で言うならたぶん“薄味”。よく噛んだり、よく味わったりしてもらうほうが向いてる気がしています。数秒でスキップされてしまうかもしれない恐ろしさと儚さを思いながら、新曲を編んでいます。頑張ろう。




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