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南イタリア🇮🇹プーリア州サレント地方の観光業。地元のビジネスマンとの対話からの気づき

先日結婚5周年祝いに、南イタリアのプーリア州のマッセリアと呼ばれるホテル施設の中にあるレストランにディナーに行きました。

マッセリア(Masseria )とは南イタリアのプーリア州、イタリアブーツのかかとの部分の半島特有のホテル施設。


16−18世紀に農家として建てられた石造りの建物を囲む広い農地で、その後時が経ち、使われず放置されていたものを約20年前にプーリア州都のバーリの近くのあるビジネスマンが「放置されていて勿体ない、ホテルにしよう!」といってベッドアンドブレックファーストに転換したのが始まりで一気にホテル化が進み、今では昔の石造りの建物を生かした可愛くてロマンチックな自然の中の宿として親しまれているそうです。

こんな記事もありました。イタリアのマッセリアとは

私たちが行ったのはこちらのマッセリアの中のレストランです。Tenuta Mosé

場所自体もとっても素敵だったのですが、こちらでレストランの責任者をしているヴィンチェンソさんとの会話が本当に興味深かったのでここに書き留めておきたいと思いました。

ヴィンチェンソさんは南イタリアのサレント地方の出身(空港のあるBrindisiブリンディシの街の出身)ですが、二十歳ぐらいでもっと広い世界が見たい!と北イタリアのミラノに出ていって長く住んで、家族が出来て落ち着きたく再びサレント地方に戻って来ていまはここのマッセリアで働いているということで、サレント地方の観光地としてのポテンシャル、美しさ素晴らしさと、そこで働く人々の「遅れている」のんびりしたメンタリティ、サービスレベルの低さなどにフラストレーションを感じているとのことでした。

私たちはこのプーリア州が大好きで、いつもサレント地方の大きな街レッチェに宿泊しており、今回はレッチェから30分ほどの美しいビーチのあるトッレデロルソという町にアパートを借りて滞在しています。
サレント・プーリアには、4回目の訪問になります。

どうして私がプーリアに恋に落ちたのかはこちらをご覧ください。

ヴィンチェンソさんとお話ししている中で色々と疑問に思っていた点が明らかになって来ました。

◆ヴィンチェンソさんは、プーリア州の南側半分のサレント地方は、もう少し北側のポリニャーノアルマーレ(宇多田ヒカルさんが結婚式を挙げたことでも有名)、アルベロベッロ、モノポリ、オストゥーニなどと比べてマーケティングが下手で、アトラクションが少ないと嘆いていました。
確かに観光客が遠くから旅行にきたときに、上述の街を訪ねますが、さらに南の街、レッチェやガッリーポリ、オートラントなどの知名度は低いように感じます。
サレント地方の観光業に携わる人々はマーケティング能力が低い・本気でマーケティングしていないことが国際的地名度をあげることが出来ていない原因の一つと言います。
ヴィンチェンソさんは、例えばイギリスの有名な女優さんが最近サレントに夏休みできたそうですが、あるマッセリアにお泊まりで日中はずっとマッセリアのプールで過ごし、食事もマッセリア内で済ませて、ほぼ一歩もマッセリアから出ずにバカンスを終了。
ここで例えば彼女が近くのガッリーポリの街を歩いてレストランに行った・・などとなればものすごいアピールになるのに、サレント州の街は、そういう誘致をするための努力に欠けていると言っていました。

可愛いガッリーポリの街


◆サレント地方の(観光産業の)人々は4月のイースターぐらいから仕事を始めて、9月半ばのスクールホリディ終了まで働くが、その後はホテルもお店もすべて閉めてしまう(実際1年のうち7ヶ月弱働くと1年分のお金が稼げてしまうのでそれ以上頑張って働こうというモチベーションがないと言います)、冬だって色々やろうと思えばイベント開催したりして観光を盛り上げられるのに、何もしないことを残念に思っているとのことでした。
例えば半島の最南端のレウリカという町がありますが、一番最初に新年の日の出が見えるということで12月31日にたくさんの人が来たりするそうですが、「来たところで、何も開いていない・・・」
ここで大きなお祭りやイベントをぶち上げればものすごいビジネスチャンスになるのに・・といっていました。
実際私たちが美しいビーチで有名なトッレデロルソの街を歩いていても、9月半ば時点ですでにたくさんのホテル施設が完全に閉まっていたり(開けていたらまだお客さんが来るであろうのに)、9月になった瞬間にいきなりビジネスが縮小して静かになりびっくりしていたところでした。
こういうメンタリティや慣習が、背景にあるのですね。

美しすぎるトッレデロルソのビーチの海の水の色


フランス人の主人に言わせると、南仏ではこういうことは絶対ないと、例えばカンヌなど10月などでもホテルも頑張って営業しているし、ピークシーズンを過ぎたら例えば施設のプールでパーティイベントを開くなどして客引きに積極的とのことでした。

他にもビーチで隣に座った女性がミラノ出身でサレントに移住して来た方で「サービスやメンタリティが遅れている/発展途上」と言っていたことや、
同じコメントがサレントでピッツェリアを開いた北イタリアのモンツァ出身の女性からも聞かれたこともあり「サービスが悪い/メンタリティが遅れている」ってどういうことなんだろうと思っていたのですが、ヴィンチェンソさんの話を聞いて何と無く彼女らが何を言いたかったのかがわかって来ました。

◆私たちがプーリア旅行が好きな理由の一つに、イタリア人観光客がほとんどで家族連れが多くとっても安全なことが挙げられますが、ヴィンチェンソさんは国際便の不足(空港・州を上げて例えば格安航空会社とうまくパートナーを組んでフライトのプロモーションをするなどしたらいいと言っていましたが)もサレントの名がもっと多くの観光客の間に広がらない理由の一つと言っていました。
観光客の私たちからするとこのドメスティック感、穴場感がとってもいいのですが、現地の観光産業でもっとビジネスを盛り上げたいと思っている立場からしたら、残念な点の一つになってしまうのですね。
また車がないと何も出来ない(公共交通機関が全然発達していない)ので、レンタカーして運転出来る人がいない限りほぼ楽しく旅行することが出来ないのも弱みの一つと指摘していました。

とは言え外からのアクセスが悪くイタリア人中心の家族連れが多い観光地なことのおかげで治安に良さ(めちゃめちゃ安全で夜も静かです)が守られているという良さもあるので、単に国際的に有名な観光地になることが良い事ばかりではないと観光客の立場からは思うのですが…

トッレデロルソビーチで夕方にアペリティーボ

ちなみにここのオーナーは以前はアパレルの仕事をしたそうです。旅先で地元でビジネスをやっている色々な人の話を聞くのは本当に面白いです。
また学んだイタリア語でこういうお話が出来るのも何だか嬉しいですね。

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