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ふさわしい不倫(18)

ある土曜日の昼に、大地が新宿で会おうとラインしてきた。

最近は、週末の夜に家に泊まって、翌朝帰るばかりで、外食もすることがなかったので楽しみだ。
いつもスッピンパジャマの家飲みだから、女が廃れていたと思う。
丁寧にお化粧をして家を出る。

大地は海鮮居酒屋で先に飲んでいた。
なぜかいつも戦争の話になる。
この世から戦争がなくなるには、過去に奪われた土地を取り戻したい強い思いがあるかもしれないけど、今後、他国の土地を奪わないよう全世界で締結するしかないと思う。
今いる土地が安全であり、誰にも攻められないという大前提から始まり、今ある土地でどう繁栄するか考えることに集中するしかない。

大地は絶対に戦争は無くならないと言う。
人はそれぞれ価値観が違い、自分では正しいと思っていることが、他人からしたら悪だからだ。戦争が悪とも思っていない人もいるだろうから、そんな締結はまずできないと言う。

「じゃあ、できない、できないって、なんの進展もないよね。」

「だから、できるよね、って考えがもう相手の立場になってないんだよ。」

イライラするし、悲しい。

何の理想もない、現実だけみたいで。

私が思いっきり口を尖らせていると、
「店変えよう。」と大地が言った。

そして、歌舞伎町の方に歩いていく。
昼の歌舞伎町はビルの古さが目立つ。
静かで寂れた街並みが、夜には安っぽいライトで目覚めるのだ。
ラブホでも行くつもりかと思う。

すると、スナックらしきお店が6店舗ほど入った雑居ビルに着いた。

大地が「来たいって言ってたよね?」と言う。

何の話だろう…

え!!

まさか、あれ!?

カップル喫茶!?

(つづく)

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