見出し画像

【選挙ウォッチャー】 大阪府知事選2019・大阪維新の会と公明党のケンカ。

大阪維新の会の松井一郎知事が公明党とケンカをして、水面下で合意していた文書の存在を暴露。公明党が誠意を見せないのなら今年4月の統一地方選で大阪府知事選と大阪市長選のダブル選挙をしてやるとぶちまし、皆さんに「んなアホな!」とツッコませていました。そんな自分勝手な理由で選挙をされても困るのですが、年末にあれだけ鼻息荒かった松井一郎知事が、年明けにはまるでなかったように振る舞いはじめ、最終的には公明党と仲直りすることになったようです。どうやら橋下徹さんに説得される形で、公明党と仲直りする方向で調整が進んでいたようなのですが、あのケンカは一体、何だったのか。皆さんもそこまで追いかけている暇はないと思うので、改めてチェックしてみることにしました。


■ 松井一郎府知事が公明党との合意文書を暴露

事の発端は、大阪都構想をめぐる住民投票の実施をめぐり、なかなか首を縦に振らない公明党にキレた松井一郎府知事が、公明党大阪府本部と水面下で交わした合意文書の存在を暴露したことです。誰にも内緒で密かに交わしていた約束を「こんな約束がありました!」と暴露するのは、誰にも内緒でこっそり不倫をしたにもかかわらず、「この人とエッチしました!」と暴露するのと一緒で、「は? コイツ、何言ってるの?」という話です。犯罪であれば正義感で暴露するということもあろうかと思いますが、お互いの思惑があって密かにやっていたことを暴露するなんて、そんなことをしてもお互いが傷つくだけで、両者にとってメリットがない。というか、あまりに自分勝手すぎて、こんな人とは付き合っていられないとなるのが一般的な感覚だと思います。公明党がちっとも合意してくれないから、合意するという話になっていた秘密の文書を暴露した。維新側は「こんな文書がありました」と言っていますが、公明側は水面下で交わされた文書の存在を認めるわけにはいかないので「答えない」の一点張り。不倫していたことをバラされ、奥さんに問い詰められても「答えない」の一点張りで乗り切ろうとするタフなオッサンの一幕を見るようです。


■ 大阪都構想の住民投票は昨年秋の予定だった

もともと日本維新の会と公明党が交わした約束の中では、2018年の秋に住民投票が行われる計画でした。ところが、公明党は住民投票に消極的なため、なかなか議論が進まないまま、今年4月の統一地方選と同日実施にするということにして日程を先送り。なのに、いざ統一地方選が近くなると「選挙の方が大事なので協力はできない」と言ってくるようになり、とうとう参院選との同日実施までズレ込むことになったのです。このままのペースで行くと、今度は冬の大阪府知事選や大阪市長選と同日ということにされかねない。そこで松井一郎府知事は、改めて大阪府民に信を問うべく、大阪府知事と大阪市長がダブル辞任をして、4月の統一地方選で大阪府知事選と大阪市長選を実施すると言い出したのです。そんな自分勝手な理屈で選挙をされても困るわけなのですが、大阪府民の皆さんはそんなに気にしていないようです。


■ 秘密の合意文書を暴露されても公明党は歩み寄る

毎年、お正月に開催されている公明党大阪本部の新春年賀会。松井一郎府知事と吉村洋文市長はここ最近、3年連続で出席していたのですが、年末のゴタゴタの影響で今年は欠席。なので、日本維新の会と公明党の仲は終わったのではないかと考える人もいたのですが、この新春年賀会に参加した公明党代表の山口那津男さんが維新との協力を呼びかけ、公明と大阪府本部代表の佐藤茂樹さんも維新との団結を呼びかけ、「(維新との)信頼関係がなくなったとは考えていない」と強調。今は少しずつ雪解けムードになりつつありました。ところが、大阪都構想の具体案を早くまとめたい維新に対し、統一地方選に集中したい公明党は「3月中にまとめるのは無理だ」と反発。「早くしろ!」と言う維新と「とにかく統一地方選が終わった後にしてくれ!」と言う公明党で意見はまったく噛み合わず、このままでは4月の統一地方選で大阪府知事選と大阪市長選のダブル選挙になってしまう可能性がありました。


■ 統一地方選でのダブル選挙になった場合の秘策

もし4月の統一地方選のタイミングで大阪ダブル選挙となった場合、任期をさらに4年間伸ばすため、大阪府知事選に吉村洋文さんが立候補し、大阪市長選に松井一郎さんが立候補するという策が有力視されています。橋下徹さんがその可能性に言及しているので、当初からそういう方向で考えていたのだと思います。これでうまく行くのかという疑問がすごく残りますが、いざとなった時にはまた辞職して出直し選挙をするのでしょうか。ただ、大阪維新の会とも創価学会とも太いパイプを持っている菅義偉官房長官は昨年末、松井一郎府知事が辞職することはないと思っていると語っており、「そんなに心配していない」としていました。話し合いで解決できるレベルだと言っていて、選挙になるとは見ていなかったようです。


■ この騒動に決着がつくのは3月頃になる見込み

大阪都構想をめぐっては、1月は23日と29日で法廷協議会が開催され、2月7日に大阪市議会、2月25日に大阪府議会が開会します。2月~3月にかけて法定協で都構想案がとりまとめられる予定となっていますが、これがうまく行くかどうかで選挙をするかどうかが決まります。もし3月までに維新と公明が合意をできた時には11月に大阪府知事選、12月に大阪市長選が行われることになりますが、もし維新と公明が決裂した時には4月7日に大阪ダブル選挙となり、3月21日から選挙に突入します。3月になるまではギリギリまで話し合いが続くと思われていました。


■ 維新と公明が電撃和解しかけた

2月8日の夕刊から9日の朝刊にかけて、維新と公明幹部が今年の秋に都構想住民投票を行うことを検討するということで合意に至ったと報じられました。2月初旬に大阪維新の会と公明党の間で極秘会談があったといい、公明党側が松井一郎さんに話を持ちかけて成立した会談だといいます。この会談の中で、公明党は今年11月と12月の大阪府知事と大阪市長の任期内に住民投票が実施できるように協力する考えを示したといいます。そのうえで、維新側が提案していた大阪府知事選と大阪市長選の統一地方選との当日出直し選を回避する方向で協議に入ったそうです。朝日新聞の2月9日の朝刊にはこう書かれています。

背景には、選挙への影響がある。府、市両議会で過半数に満たない維新は住民投票実施には公明の協力が不可欠だが、松井氏らは早期実施に否定的な公明への批判を過熱させてきた。公明の支持母体・創価学会内には、イメージ悪化を心配する空気が広がった。

僕はてっきり「都構想住民投票をやる」なんて言ったら、創価学会の方々が黙っちゃいないので消極的な姿勢を見せていたのかと思っていましたが、むしろ創価学会の方々は「あんまり維持を貼ると公明党のイメージが悪くなっちゃうんだから、さっさとやると言っちゃいなさい」というテンションだったのです。新聞には「維新と対立する姿勢への批判が寄せられるようになった」と書かれていることから、創価学会の方々は維新と仲良くすることを望んでいるということになります。確かに、ダブル選挙が繰り広げられることになったら、松井一郎さんや吉村洋文さんのことですから、街頭演説でクソほど公明党のことを批判したことでしょう。そうなったらイメージの悪化は避けられないと思ったようです。ただ、依然として公明党内には「ダブル選をやったらいい」という声もあるそうで、維新と仲良くすることを歓迎していない議員もいるということです。ということで、公明党が大阪維新の会に歩み寄る形で今年の秋には都構想の住民投票をすることになったわけなのですが、そもそも大阪維新の会が想定していた「参院選と同日」という日程は公明党が「無理」と言っているので、7月の参院選から11月の大阪府知事選までの間に住民投票をやるということになりそうなので、いまだ実現するのかどうかは不透明で、吉村洋文市長も「今はまだ信頼できない」と話しているようです。


■ 大阪維新の会が、古き良き大阪の文化を壊す

ゴリゴリの利権と新自由主義経済を掲げる「日本維新の会」がドヤ顔で進めたのが、大阪市営地下鉄の民営化です。民営化したことにより、それまでは最も見積もりの安い企業に発注しなければなりませんでしたが、これからは見積もりが安くなくても友達の会社に発注することができるし、その理由が「友達だから」だったとしても、市営と違って追及されることはなくなります。その結果、将来的には料金が高くなったり、不採算路線が廃止されて交通インフラを失う地域の人が出るかもしれませんが、その時はその時です。2025年に大阪万博が開催されることになりましたが、大阪メトロは夢州駅に巨大なビルを建てる計画を発表しました。市営地下鉄だった頃には絶対にできない駅ビルの建設。しかも、これは公共工事ではありませんので、最も条件の良いところに発注する必要はありません。私企業がどこに発注しようが、そんなものは企業の自由です。少しくらい見積もりの高い会社に発注したからって、誰かに文句を言われる筋合いはありません。これこそ「日本維新の会」が民営化を進める本当の狙いです。大阪メトロが松井一郎知事の親族や友達の企業に高めの見積もりを出されて、そこに発注する理由が「友達だから」だとしても、その責任を問うことはできません。そして、こうなってしまうと松井一郎知事や吉村洋文市長を敵に回すことはできなくなり、少なくとも大手ゼネコンは日本維新の会のご機嫌を取ることになります。そうでなければ数百億円、数千億円という仕事を失ってしまうかもしれないのですから、お金のためには仲良くしないわけにはいきません。

大阪メトロは今、地下鉄の駅の全面改装を検討しています。しかし、大阪の地下鉄の駅は一つの「文化」であり、あの蛍光灯の配置を含め、長年かけて人々の心にササり、「アート」の領域に突入しています。江戸時代から続いてきた「築地」ですら壊されてしまうのですから、大阪の地下鉄の駅のデザインを壊すぐらいのことは何の躊躇もないレベルなのかもしれませんが、愛されているものを人々の合意もなく、それもまた何のソウルを感じることもないクソダサいデザインに変更されるというのは納得のできないものがあります。それもこれも維新のセンスがないからなのですが、大阪のソウルを破壊する大阪維新の会を支持できる大阪府民のセンスも、改めて問われるところだと思います。


■ 選挙ウォッチャーの分析&考察

3月8日、松井一郎大阪府知事と吉村洋文大阪市長が辞職をすると記者会見しました。これにより「大阪ダブル選挙」はほぼ確実になったわけですが、大阪市長に立候補する松井一郎さんはともかく、大阪府知事に立候補する吉村洋文さんの当選には黄信号が灯ったと考えられます。というのも、もし大阪府知事選に、今年の夏の参院選に立候補する予定だった柳本顕さんがスライドして立候補するようなことになると、柳本顕さんに風が吹いてしまう可能性があるからです。大阪維新の会による公明党バッシングは止まらないでしょうから、公明党が自主投票を決めても自民党に流れる可能性があり、リベラルからも集票できる強みを考えると、十分に逆転可能だと考えられるからです。参院選でほぼ当選確実だと思われる柳本顕さんが大阪府知事戦にスライドすることは野党にとっても願ったり叶ったりで、柳本顕さんにとっては絶好のリベンジチャンスとなります。

ある程度の想定はできていたと思いますが、もし柳本顕さんが立候補するのであれば、なるべく早いタイミングで表明した方が良いと思いますし、非常に現実的な路線だと思います。大阪維新の会が進めてしまった利権政治をどれだけ大阪府民のために戻せるか。大阪維新の会が進めた新自由主義経済の尻ぬぐいだけで最初の任期が終わってしまいそうな勢いですが、実は、11月や12月に選挙をされるより、大阪維新の会の候補を止めるチャンスはあるかもしれません。個人的には11月と12月にやってくれた方が「選挙ウォッチャー」としては助かったのですが、こうなったら全力で追いかけるしかありません。もちろん、大阪ダブル選を取材する予定です。

いつもサポートをいただき、ありがとうございます。サポートいただいたお金は、衆院選の取材の赤字分の補填に使わせていただきます。