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【選挙ウォッチャー】 東村議選2018・分析レポート。

おいしいパインが作られていることで知られる沖縄県東村。今となってはパインより「高江のヘリパッド」がある村と言った方が知っている人が多いかもしれません。米軍ヘリが低空飛行し、米軍たちが村人たちを仮想敵として訓練している「標的の村」です。この村でも村議選が行われるのですが、沖縄県北部にある小さな村なので、ほとんど全員が知り合い状態。なので、この村の選挙で勝つために必要なのは「選挙活動」というより、地元の人たちからどれだけ好かれているか、親戚が多いかだということになります。

定数8に対して10人が立候補するため、小さな村では「激戦」と言ってもいいかもしれません。沖縄県中部の人口が増えている村とは違って、こちらはガチの村なのです。つい最近まで高江地区でヘリパッド建設に反対していましたが、地元住民の抵抗も虚しく完成してしまったため、現在は抗議活動も行われていません。わざわざ沖縄県知事選の選挙期間中に「東村」というマニアックな自治体の選挙をお届けするのには、もちろん理由があります。沖縄の現実を一人でも多くの方に知っていただきたいと思います。


■ 東村の人たちはヘリパッドに興味なし

沖縄県東村の人口は約1800人。名護市の北東にあり、非常にのどかで自然に溢れた場所と言えます。沖縄県は名護市より北に行くと、ほとんど自然しかなく、人もあまり住んでいないのです。そんな東村にオスプレイも着陸できるヘリパッドが建設されることになり、地元住民が猛反発したのですが、猛反発したのは東村の中でもヘリパッドが建設されることになった高江地区の住民だけです。同じ東村にありながら、東村の中心部である平良地区に住んでいる人たちは「ヘリパッドって何?」ぐらいの感覚で、東村という過疎の村の中でも高江地区はさらなる過疎の地区であり、村民すら興味がなかったというわけです。しかも、ヘリパッドが建設されることになれば、当然、国から再編交付金が支給されることになるわけですが、まずは東村に支給されて、そこから地区の人数で配分されることになるため、最も米軍ヘリの騒音や墜落リスクに悩まされている高江地区の人たちは、地区で暮らしている人の人数があまりに少ないため、ほとんどお金をもらっていないという不平等なのです。東村の中でもリスクを負わない都市部がたくさんお金をもらい、最もリスクを背負っているエリアには雀の涙ほどのお金しか入らない仕組みになっているというわけです。

この仕組みを変えるためには高江地区から村議会議員を生み出し、地区の声を議会に届けてもらう必要がありますが、東村で当選するのは人口の多い平良地区の議員ばかり。ヘリパッドのある高江地区の人々が地元から議員を生み出そうと一致団結しても、高江地区で暮らしている人が少ないので、議員を生み出すことすらできないというわけです。ただ、昔からここで暮らしている人たちに「うるさいと言うならオマエが出ていけ」と言ってしまうのはかなり乱暴です。残念ながら、東村で議員をやっている人たちは、どいつもこいつも無所属でありながらも、実質的なところは自民党というような議員しかいないそうで、この村のことを真剣に考えている人はほぼ皆無。役場の人だけが情報を独占し、村人に情報が知らされることはほとんどないと住民たちは不満を漏らしています。しかし、地域に親戚が多ければ当選してしまうような世界、これがリアルな田舎の選挙というヤツです。住民がさまざまな苦しみから開放されることはなく、政府に簡単に押し切られてヘリパッドが建設されてしまうというのが現実なのです。


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