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たかが1000円、されど1000円

シングルサイズの毛布。それも、昔ながらの分厚くて重たい、ヨーロピアン(?)な花柄なんかが入っちゃっている毛布。夫はそれを、リビングでひざ掛け代わりに使っていました。見た目にザ・毛布でオシャレじゃないし、毎度毎度リビングを後にするときにぐちゃっとソファーの座面に置くので「ったく!」だし、その重さゆえ「ったく!」と毒づきながらたたむたびに体力を奪われる。一応洗濯機に入るサイズで、洗濯機で乾燥までかけられちゃうから、かろうじてクリーニングには困らないものの、坊主憎けりゃ……でソファー(2階)と洗濯機(1階)の移動も重くて億劫になる、世にも恨めしい毛布。

もともとおばあちゃん家にあったものだから(引っ越しのときにその家の不要なモノを寄越される伝統、ぜひ平成の世で根絶したい!)、現実としてイマココにあるんだから、と我慢して数年使い続けてきたけれど、我慢に取り込まれて、我慢している状態が当たり前になって、違和感に鈍感になっていたことにハタと気がつきました。目の前をよぎった「これ、ヤだ」を捕らえてしまったが最後、おばあちゃんへの「わるいなぁ」よりも、もったいない精神よりも、「やめよう!!!」が圧勝。夫と話をして、先週末にさっそく軽い毛布を求めて商店街の寝具屋さんへ向かいました。(わたしだったらぜったいデザインのいい毛布を探して買い替えるけど、夫はそのへん優先順位が低いので、今回は家計のためにも安価バンザイ作戦で)

わたしたちが毛布をみているあいだ、お店の中をあっちへちょろちょろこっちへちょろちょろしていると思えば、「こっち来てーーー!」とわたしの手を引っぱるひよこ。しゃあなしに連れて行かれてみたら、「これ、欲しくなっちゃったの!!!」と指差す先に、枕がありました。子ども用の枕。縦に並んで陳列されたミニーマウスと、ハローキティと、マイメロディのそれらを前に指がぶれているので、まだ本人のなかでターゲットは定まりきっていない様子。ちらりと値札を見ると、1350円でした。枕はひよこがまだ手にしたことのないアイテムです。柄だってひよこにとっては「ヤバい! かわいい! 超ヤバい!」のだろうし、値段的にも買えるよ、ぜんぜん買えるけど、さ。

わたしは躊躇しました。欲しがるものをおいそれと買い与えてよいのだろうか、という教育的観点ももちろんあります。都度都度悩むのは面倒なので、お菓子やおもちゃについてはある程度バーを設けているけれど、枕は評価リストにラインナップされておらず、ぽくぽくぽくぽく……シンキングタイム、スタート。並行して、「あんたぜったい枕の上で寝えへんやろ!?」問題も脳内審議。眠りについてから覚めるまで、お行儀よく枕に頭をのせていられる子どもなんて、存在するのでしょうか。ひよこは、布団にはいってから寝入るまでもあっち向きーのこっち向きーの、頭ごと寝返りを打ちます。その時点で枕、障害物と化しますよね。1350円分、ちゃんと使うぅぅぅ? 布団の脇のオブジェになるだけなんちゃうぅぅぅ?

厳正なる審議の結果、今回は見送りとしました。「おかーさん、買えないわ」の回答は、枕が欲しいのか「欲しい」ものが欲しいのかをすでに見失うほどにボルテージの上がっているひよこに非難轟々でしたが、「おうちになる枕に、ミニーちゃんのタオルを巻くのはどう?」と提案するや「うん!!!!!」と納得してもらえて、一件落着。ほっ。無事に「これならまあいっか」な柄のマイクロファイバーの毛布だけを2400円で求めて帰宅しました。

それにしても、本当にひさびさに、1000円(正確には1350円)を真剣に天秤にかけました。くしくも先週末は、楽天で買い回り(1000円以上買い物をした店舗数によって付与されるポイントが倍々ゲームになるイベント)が開催されていて。要るモノ・欲しいモノリストがだいぶたまってたので参戦したのですが、リストの上から順にダダダッと買い回っていると、向こうの思惑どおりテンションが上がってきて、「ついで」の買い物もしたくなってきてしまうわけです。あと1000円で送料無料になるとか、1000円のコレ買ったらまた1店舗かせげるとか。誘惑。それで、「まぁ、1000円なら」とエイヤッと乗っかっちゃう。「悩む時間がもったいないわ、タイムイズマネー!」ってな具合に。

「人にはきびしく、自分にあまく」の典型じゃないか。そんなあまい気持ちで買って、結果、あの分厚くて重たい花柄の毛布みたいに、見るたびに「どよ~ん」なオーラを放たせているものはあるまいか。ある、あります。ゆびさきトング、とろけるバターナイフ、あれやこれや(大森史上最強のトングは工房アイザワ、バターナイフは柳宗理です)。うじうじ思い悩むのも嫌だし、やらない後悔よりやった失敗の方がよほど糧になる。だから、衝動買いがまったくダメだとは思わないけれど、「ひよこの枕 or NOT!?」を自らに問うくらいのきびしさは持っていこうと思います。

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