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誌   夏の傷

あの夏に
あなたに言えなかった言葉
伝えられなかった言葉
今も残る恋の傷
冬の木枯らしに傷はひび割れて
春風が吹いたとて
癒えることはない
あの日と同じ夏がきて
はっきりとわかるせつなさ
もう逢うことはないと
わかっていながら期待する
あの街のあの角を曲がったら
知らないあなたに逢えそうで
知らない私に恋をして
またあの夏に帰りたい
潮風は心にしみるのに
あの夏の夕陽に抱かれて
私は古い傷に向き合って
また新しい傷を作ってしまうだろう
夏なんてなくなってしまえばいい
そう思いながら
またあなたの影を探す







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