英語の問題集ばかり読むことにほとほと嫌気がさし、代わりにペーパーバックを読むようになって数年。ペーパーバックは軽くて、安価な紙のざらっとした感触もよく、インクと紙の匂いが昔小学校で配られたお便りみたいで気に入った。鉛筆の芯が紙にひっかかって書き込みしやすいのもいい。そして日本の文庫本ほど文字が小さくなく、読みやすくて幸せ。
次は何を読もうかなと思ったとき、かなり前に愛読した「モリー先生との火曜日」の25周年記念版が出ているのを知って、嬉しくてすぐに注文した。
モリー先生。私には勝手に自分の恩師とよぶ先生がたくさんいる。モリー先生もそのひとりだ。転校生のとき優しくしてくれた小学校の女の先生、深い目で学生を見つめる修道士のようなドイツ人の大学の先生、憧れの須賀先生、お茶の先生、和菓子の先生、近所のお料理とお花と着付けの先生、画家の先生、音楽の先生、宗教学の先生。人生の先輩、諸先生方のご指導ご鞭撻がなければ、迷子のまま、どの一歩も踏み出せなかった。
大学で社会学の教鞭に立つモリー先生は難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)、残された時間がいくばくもない。死に向かう「私に学べ」と残された命を全うすることに最後の力をふりしぼる。偶然、先生のインタビュー番組をテレビで目にしたかつての教え子ミッチが先生を訪ね、モリー先生との最後の授業が始まる。この14回の授業が「モリー先生との火曜日」となって出版され、先生との約束だったミッチの本はベストセラーとなり、映画化もされた。
オリジナルを読んで25年前は素通りしてしまったモリー先生の「波の話」が胸に響いた。第13週の火曜日、モリー先生はもはや食事も寝返りもできない。呼吸もままならないなか、ミッチに静かに語る。
海の一部分。波なんかではなくて海の一部分。
なんてわかりやすいんだろう。そう思えることを、どうか望ませてくださいと思う。
そして、波は、岸や岩に砕けてはじめて、その形があらわれるということもよくわかる。ぶつかってはじめて、自分のかたちが現れる。何かにぶつからなければ、私に形はないのだ。
Tuesdays with Morrie(1999) - official trailer
日本語吹替え版のDVDもあります。
宮城道雄「春の海」
海つながりで選びました。新春といえばこの曲の「春の海」、琴と尺八の曲ですが尺八の代わりにヴァイオリンでも演奏されます。毎年3月に武道館で行われていたスズキメソードの全国大会では、琴とヴァイオリンでこの曲を演奏するのがお決まりでした。なので私も何度となく弾きました。
宮城道雄オフィシャルサイト