闇の雨

外は雨。
一度寝たのだけど目が覚めてしまって、いつものように眠れないでいる。

静かな時間。
時折外を走る車の水音が部屋に響く。

半狂乱になるであろう前のただただ凪いだ時。
まともな人間のふりなんて彼の前ではしなくていい。
そんな幸せな時間を前に回りの静けさとは逆に鼓動は大きく、早くなる。

何を着ていこうか。
何を持っていこうか。
当日の朝はやらなければならないことを短い時間で効率良くやらないとならない。

なんとかねじ込んで髪は整えられた。
録音機材は直前でなんとかなる。
あの声と、あの指と、あのぬくもりに触れるまであと少し。
身体に刻み込まれた記憶を存分に開放できるまであと少し。

早く会いたい。
心は急く。
頭の中はやらければならないことの段取りを始める。
身体は身体で大脳旧皮質の言うなりにあちこち蠢き始める。
春になって、桜も満開になって、私自身も花開く。

眠らないとならない。
わかってはいるのに眠気は来てるのに彼のことで一杯の頭の中は一向に眠ろうとしてくれない。
こういう時、薬を飲んで強制的に眠ってしまわないとならないのは私も一緒。

とはいえ飲んでしまうと逆に起きられなくなるから、これを書いたらすぐ目をつぶるとしよう。

雨音に身を委ねながら。

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