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『廃墟の国のアリス』coverからの考察~夢想と覚醒~:0120

 6人のバーチャルライバーがカバーした『廃墟の国のアリス』。

 そこは不思議の国のアリスの世界だった。

6人のキャラクターに扮するライバー。


帽子屋は楽しげに狂い、チェシャ猫は試練を与え、

ハートの女王は冷酷に裁き、青虫は惑わすように、

眠りネズミは悲しげに、白兎は突き放すように、

アリスに呼びかける。


聴き終わった後、一つの舞台を観劇した心持ちになった。


 


【原曲考察:目覚めるアリス】


作詞:まふまふ 作曲:まふまふ

「廃墟の国のアリス」は2018年8月に公開された楽曲だ。

イラストも壊れた街の中にアリス一人が佇んでいる、歌い手はアリスに向かって「ここに来ちゃいけない」と呼びかける。


 僕がまふまふさんの歌を聴いていた時は、不思議の国のアリスとしてよりも、現代の閉塞感をテーマにした歌だと思った。SNSでつながれる一方互いに監視されているような束縛や、同じ言語で話しているのに深まっていく溝について歌っているのではないか、と解釈していた。

現代はもう既にディストピアと化している。

イラストのアリスは鳥籠の格子の中にいるけど、それに気づいている様子はない。

気づかないアリスに「ここに来ちゃいけない」と声をかけるのは、この世界の絶望に気づいてほしくないから。

でも、呼びかけること自体がアリスに疑念を与える行為で、心の底では気づいてほしいのか。

 陰鬱なテーマを鋭く韻の踏まれた歌詞と高音のサビで歌い上げ、中毒性のある一曲としてとても魅力的だと感じていた。


【カバー曲考察:夢見るアリス】


 一方、にじさんじライバーのカバー『廃墟の国のアリス』は、メッセージ性より演劇性を強く感じた。
 アリス通の森中花咲さんが2年前から構想を練って企画し、パズルのピースを嵌めたような配役と歌割りによって一つの舞台が完成した。

 元々歌唱力の高い6人だが、物語のキャラクターに憑依する演技力で夢を見せるように楽曲を表現している。

こちらの雑談では、楽曲の制作過程が聞ける。
企画が実現することの難しさや、それ故に完成した喜び、こだわり抜いたポイントを語ってくれていた。


今回のカバーを聞いて、改めて原曲の強いメッセージ性を考察できた。

 夢想と覚醒。

是非聞いてほしい楽曲だ。

自由研究をしないと死んでしまう性分なので、不思議だな・面白いな、と思ったことに使わせていただきます。よろしくお願いします。