札幌「わらび」(閉店)
記念すべき第一回目の投稿では、東京・高円寺が自分の故郷であると書いたが、今回は打って変わって北の大地のお話。
何を隠そう、北海道は父親の出身地。ということは、私はハーフ道産子だ。
幼少期から、夏休みや年越しなど、毎年ことあるごとに帰省していたこともあり、札幌は第二の故郷なのである。
先にネタばらしをしておくが、今回も惜しまれつつ閉店されたお店についてだ。だが、このnoteを今はなき名店たちの回顧録にしようとしているのでは決してない旨、書き記しておこうと思う。
2019年6月。第一回に登場の高円寺「BONY」を訪れるわずか3日前のこと。
帰省のチャンスを狙い、いつもの純喫茶巡り札幌編を執り行う。もちろん、下調べも入念に。他のどこを諦めてでも押さえておきたかったのがこちらの「わらび」である。
入口にはウエスタン風の「アレ」がある…これだけで名店間違いなしの風格。
創業は1967年(昭和42年)、ということは半世紀以上の歴史があることになる。迎えてくれたのは大変柔らかい口調のママさん。
テーマがあるようでないような雑多な置物類も、その居心地の良さを作り出す重要な存在。ウォールランプの装飾なんか、現代ではなかなかお目にかかれないデザインセンスだろう。
「時間気にせずゆっくりしていかれてね」
コーラを運んでくれたママさんの一言。入店したのは閉店20分前。
申し訳なさを感じつつも、そのあたたかさにじんわりする。
2020年春、SNSにて「わらび」閉店の事実を知る。
お店の歴史は人の歴史。半世紀以上、ひと筋にお店を守ってこられたママさんにもたくさんの歴史があるだろう。その中のまばたきにも及ばない1ページのなかで、たまたま居合わせた私に優しい言葉をかけてくださった。
なんでもないことかもしれないが、こういうことがあるから、私は喫茶店に通い続ける。喫茶店には、お店の歴史とともに人と人との触れ合いが溢れている。
(2019年6月25日訪問)