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あこがれ

つくづく良い時代に幼少期を過ごしたなあと思います。時代は高度成長期です。
当時、日本は世界2位の経済大国。
SONY、TOYOTAと輸出大国だった日本は、
テレビというメディアの全盛期でした。
僕んチはといえば、超!貧乏笑。
母が寝る間を惜しんで仕事をしていたので、僕の相手をしてくれるのは主にテレビでした。

その頃のテレビは、もっともクリエイティブな箱でした。
夜のヒットスタジオ、ザベストテン、オレたちひょうきん族、どの番組もセットや出演者が豪華で、1回の放送でどれだけお金がかかっているんだろうと心配になるレベルでした。
当時の夢は、漫画家か映画監督か、テレビで働くことでした。出演者よりも作り手、特にひょうきん族は、横澤さんや佐藤さん、三宅さんなど、プロデューサー、ディレクターと呼ばれる人がテレビに出てきて、カッコイイと思っていました。
作り手にあこがれていました。

本気で僕は何がやりたいのかなとか、
就職、ということを考え始めた頃には
バブルという時代が終わった90年代にはいります。
ここから日本は暗黒の平成、抜け出せない不景気にはいりますが、何もわかっていないバブルを知らない僕たちは、それでも日本は素晴らしい国で、あこがれの街は、どの国でもなく東京でした。
この頃から、テレビの情報に頼らず
雑誌が僕にとって、1番の情報源になっていきます。
Olive、Relux、ブルータス、Casa、装苑、ハイファッション、エスクワイアなどの影響で東京カルチャーにあこがれて、好きなものの解像度が高まっていきます。
クリエイターが集う中目黒や代官山中心に、ファッション、音楽、渋谷系カルチャーとのめり込み、年に4回は深夜バスに乗ってレコードや洋服を買いに京都から東京に通うようになりました。1995年から2000年、二十歳の頃。
TOKYO to KYOTOというか、
京都にいながらにしても、そのあこがれを満たしてくれたのがクラブというカルチャーです。
メトロという京都、丸太町にあるクラブに毎週通いました。
そこで聴く音楽、目に飛び込むVJ、出会う人、すべてにあこがれ、夢中になりました。

世の中は、バブルがはじけ、テレビも低予算化していきました。それでも電波少年やガキの使いなどロケや企画の面白さで華やかさは変わらなかったというイメージです。
今考えてみると、テレビというメディアが、日本という国で生きる上では、すべての情報源であり、そこで起きていることがウソでも、台本があっても、信じて疑う、他に調べる方法がなかったということ。テレビ=日本人を形成していたと言っても過言ではないかなと思います。

2001年、ピチカートファイヴが解散し、90年代、渋谷系、と呼ばれるカルチャーの時代が終わっていきます。小沢健二さんもメディアから姿をけし、レコード、カルチャーマガジンも、ものすごい勢いでなくなっていきます。
その年、グラフィックデザイン界には、佐藤可士和さんというスターが登場します。SMAPのジャケット(赤、黄、青だけ)という、本人たちの写真表現じゃないアルバムをデザインします。それまで日本の広告にはまったく興味がなかった僕が、「東京に行こう」と決意します。

何が言いたいのかというと、
今2022年、そのあこがれはどれだけ残っているのか?

デザイナーになって25年が経った今あこがれたメディアはすべて過渡期にあります。
日本を支配したテレビは、インターネットが登場し、YouTube、Abemaに押されていくとともに、CDは配信になり、ポスターはデジタルサイネージになり、デザインできるカルチャーはほとんどなくなってきています。
相変わらずADCは、ポスターやCMを評価していますが、広告はYouTubeやTikTokの方が影響力があります。
やりたいことと、今のクリエイティブはあまりにギャップがあり、もう新しいことに脳を切り替えていく事すら苦しい作業になっている気がします。デザイナーはYouTuberやTikTokにあこがれれない。切り替えれない。そんなジレンマがあるのではないでしょうか。

そんな中、
今年サイバーエージェントと出会いました。

広告部門で、電通の売り上げを抜いて1位になったのは驚きでしたが、今の時代の流れを見るとなるべくして起きた出来事なんだなあと思います。
広告といえば電通です。
戦後ずっとその定義をゆずらなかった日本社会が、変わろうとしているということです。

サイバーエージェントの広告チームの話を聞いていると真面目に、新しい価値を作ろうとしています。CMや渋谷駅ジャックだけが広告じゃない。他の新しい価値です。
デザインのやり方も、もう目から鱗、AIが考えるという手法を取り入れています。

僕のあたらしい「あこがれ」です。
何かワクワクしてます。

デザインへのあこがれのスタートは映画の中のデザインでした。
その後、ポスター、TV CM、CDジャケット、本などのデザインがしたい!第一線で活躍するデザイナーのデザインにあこがれて、そこを目指して頑張ってきました。
今そのほとんどが過渡期にあり、デザインの仕事は本当に様変わりしてしまいました。

だからといって、
WEBメディアやリアルな体験はデザインのあこがれになれないのか?グラフィックの経験は、意味がないのか?そんなことはない。
デザインの力は、ポスターや、CDジャケットだけではなく、その枠を飛び出し新しい世界をつくっていける。

というより、つくっていかなくてはいけない。
僕たちが。

「あこがれ」
これからのグラフィックデザインは、それを作っていけるだろうか。新しい広告の世界を切り開くサイバーエージェントさんとの出会いで目が覚めた。これまでのデザインメディアにすがるのではなく、その経験を活かして新しいメディアをつくっていくのだ。新しいデザインのあこがれを。

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