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思わぬ経験が輝く日が来る

 仕事のコツを尋ねられると、誰しも思いつくことがあるだろう。

 年長になればなるほど、様々なテクニックをお持ちなので、アレもコレもと容易に挙げられるかもしれない。

 私はというと、20歳で専門学校を卒業してからこの方、20年超にわたり今もなお現役で働いている。

 そんな私が、大ベテランの先輩方には及ばないかもしれないが、私なりに思う仕事のコツに繋がる「仕事に必要なこと」をご紹介したい。

面白いか面白くないかを決めるのは自分次第

 これまでいろんな仕事をしてきたが、「業務ソノモノが嫌い」と思ったことは一度もない。

 唯一辛くて続けるのは難しいと思ったのは、とある業種の「テレアポ」だったが、それ以外の業務においてはどんな仕事も楽しく取り組んできた。

 私の原動力は基本的に「負けたくない」だったので、例えコピーの印刷をするだけでも「誰よりも早かった」と言わせたいという思いだけで、真剣に効率だけを考えて印刷作業に取り組んだ。

 もちろん早さだけでなく、印刷された印刷物そのものの美しさも褒められたいと思っていた。
 薄すぎて裏映りする用紙などを印刷するときは、間に紙を挟み、一枚一枚丁寧に印刷した。

 上司からメモとしてスケジュール表を持ち歩きたいといわれたときは、若干縮小をかけて手帳に貼り付けやすいサイズに変更するなどの小技も入れてみる。

 そうすると、とても満足してくださり、次からも頼むと言ってもらえた。

 いいように使われている……と言われればそれまでだが、ようは喜ばせられたらいいなといつも思っていたのである。

 「君に頼んで良かった」その一言が聞ければ、私の仕事は全うできたんだと日々思いながら業務にあたっていた。

 公務員として勤務していた時も、担当があなたで良かったと思ってもらいたい一心で全力を尽くしていた。

 相手に良く思われようと悪く思われようと、私の評価になるわけでもなく、給与が増えるわけでもない。

 しかし、喜んでもらえた方がやり甲斐があると思って親身になることが、私一人だけで完結でき、頑張れることだと思っていた。

 部署異動をしても同じで、前任者より早く美しくをモットーにしていた。
 勝手に競争心を持ち、勝手に自己研鑽していた。

 何をそんなに闘っているんだと、振り返ると自分に言いたくなるが、お陰で仕事が遅いなどと言われたことはない。

 そしてなにより、どの仕事も全て楽しむことができた。
 恐らく私にとって、仕事はある種ゲームだったのかもしれない。

 「次の敵は文書発送か……よし、ミスなく丁寧に封書して、時間通りに終わるように全力を尽くそう!」と思いながら仕事に取り組んでいた。

 やる気を出して生き生きしていれば、周りの人たちも一緒になって面白がるようになってくれる。
 そうするとチーム全体が楽しくなる。

 仕事にはもちろんコツもあるだろう。
 でも、まずは「全力で頑張るマインド」が必要かもしれない。

どんなこともいつか役に立つ

 「こんなことできるようになったって、意味がない」という人に出会うことがある。

 私はその意見を聞かされるといつも、そうかなぁ……と思って黙ってしまう。
「どんなことも役に立つ日が来る」と思っているからだ。

 以前勤めた会社で、「GA4の解析結果についてお客様に説明してきて欲しい」と言われてとても困ったことがある。

 GA4とはWebの解析ツールで、サイトの利用者層や、よく閲覧されている商品はどれかなどが把握できるGoogle社のツールである。

 私はそれまでGA4という単語すら知らなかったので、GA4で解析して……という話を聞いただけで頭が痛くなった。

 しかし私は、ひとまずGA4に関する書籍を購入し、一から勉強することに決めた。
 これも勉強するチャンスをもらった、と考えたのだ。

 しかし同僚は不満そうだった。
 「こんなことエンジニアがすることで、営業がやることじゃない」と言うのだ。
 もちろん同僚の意見はごもっともで、営業がしなければならない業務が増えてしまうことで、業務が圧迫されてしまう。

 けれど、これはこれで勉強できるチャンスじゃない? と思っていた私にとって、その発言が不思議でしかたなかった。

 その後、当時所属していた会社は退職し、GA4を利用した仕事に従事することはなかったのだが、今になってその知識が生きるときが来た。

 ネットショップを自分で運営する日が来たのだ。 

 5年前の私なら全く知らなかったGA4。
 その単語すら聞いたこともなかった。

 しかし今は、その単語をもちろん知っており、多少なりと知識も持っている。
 もし知らないままオンラインショップ運営を始めていたら、恐らく手を出すことすら考えなかった。

 残念ながらド素人の域をでない知識量だが、それでもショップと連携して解析結果を読み込ませることには成功した。
 日ごとの利用者数や、利用地域などを把握することもできる。

 最近は海外からのアクセスも多々あり、面白いなと解析結果を楽しめてもいる。

 そのときそのときには、こんなこと役に立つのか? やる意味あるのか?
 などと思ってしまうこともある。

 でもそんなときはぜひ、いつか役に立つかも! と思って楽しんでみると良いのではないかと思う。

やはりタイムマネジメントが重要

 これまで散々マインド主体の話をしていたくせに……と思われそうだが、何よりも重要なことは「時間とタスクの管理」だと考えている。

 特に、緊急性と重要性を捉えておくことは仕事の要であり、この2つを考えずに仕事をすると全く仕事は捗らない。

仕事が捗る=時間通りにきちんと業務が進む
 と考えていて、時間通りができないことほど、自分も他人も苦しめることはない。
 時間は命だからである。

 誰だって命を大事にしてくれる人を嫌いにはならない。
 仕事が遅く人に仕事を押しつけて残業を推奨する上司よりも、さっさと仕事を終わって「さあ帰ろう!」と言ってくれる上司の方が百倍好きなはずである。

 私は以前、両極端な2人と共に仕事をさせてもらったことがある。

 Aさんはとにかく仕事が早く、定時に「お先!」と言って帰る人だった。
 けれど、残された私が困ることはほとんどなく、いつもきちんと全ての仕事が片付いている人だった。

 当然机の上はキレイで、書類もきちんと分けて並べられている。
 何よりその人の仕事の速さは、先を見越して何もかも準備をしておられたところにある。

 期日までに仕事が終わっていることは当然で、焦って仕上げなければならないといった姿はほとんど見た事がない。

 また、私が電話に出ると、必ず横でリアルタイムに聞き取りをしてくれた。
 メモを取った方が良い内容は、横で速やかに報告書の形で作成してくれる。

 それが分かっているので、私も電話の内容を繰り返したり、横から聞き取っても分かりやすいように言い換えて話をしたりしていた。

 結果、電話を切った後に私が作成するべき書類はできあがっており、私の仕事も減らしてくれていた。

 この人ほど仕事が早く、的確な人に出会ったことがないので、今も変わらず一番尊敬している。

 うってかわってBさんと仕事をしたときには随分苦労した。
 ほとんどの人が10分程度で片付けられる業務が、60分かかってようやく終わるというような段取りの悪さだったからだ。

 どうにか仕事がしやすいように付箋を事前に貼っておいたり、メモを作ったりして早くできるよう進めてみたが、それでも大した解決には至らず大変手を焼いた。

 そこであるとき、重要性と緊急性を軸にしたマトリックス表をA3用紙に作成し、現在手持ちの業務を4つの分類に分けて付箋を貼って欲しいと頼んだ。

A:緊急性が高く重要も高い
B:重要性が高く緊急性は低い
C:緊急性が高く重要性は低い
D:緊急性が低く重要性も低い

 一般的に言われるA~Dのこの分類。
 間違いやすいのはBとCで、人は焦りすぎるあまり「Cを優先してしまう」傾向にあると言われている。

 だから私がBさんにこの表を渡したときも、BとCの混在程度は起こると思っていた。

 ところがBさんから言われた一言は
 「私、これまで重要性とか緊急性とか考えたことないです」
だった。

 新社会人ではない。当時40才、勤務歴15年を超える大ベテランの回答に私は目眩がした。

 結果、悩みに悩んだBさんは、全ての業務を「D」に貼り付けた。

 「私たちのやっている仕事には、緊急な仕事も、重要な仕事もありませんか?」

 そう尋ねると、俯いて固まってしまった。

 これではダメだと思った私は、Bさんに毎日重要な仕事と緊急な仕事を分類する習慣を付けてもらうようにした。

 さらにそれを報告してもらい、仕事の段取りを決める作業を毎朝行った。
 正直それだけでは解決できたとは言えなかったが、このときほど「タスクの状況把握」「タスクの段取り」が仕事に必要だと思ったことはない。

 とはいえ、そんな苦労があったからこそ今私は、タイムマネジメントの重要性が語れると感じている。
 何冊も本を読み、学び、実践してトライアンドエラーを繰り返した。

 さらにそこが評価され、現在「タイムマネジメントコーチ」として業務を請負っている。

 ただただ疲労したばかりの経験と思っていたが、その経験こそが今に活きていると思うと、あのとき頑張って良かったなと思える。

 そう考えると、結局のところ仕事のコツは、やはりマインドセットなのかもしれない。

 今日のあなたの仕事が、より楽しく輝きますように。  

#仕事のコツ

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