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魔法少女の話

私、魔法少女になります。


ご報告

 この度、私翠蘭(すいらん)は、今勤めている会社を退職し、魔法少女の仕事をすることになった。上司にはもう話してあり、「頑張れよ」と背中を押していただいた。今勤めている調剤薬局は4/20付けで退職し、ゴールデンウィーク明けから魔法少女として再び精進する所存である。

具体的には何をするのか

 魔法少女といっても、実際に悪と戦うわけではなく、所謂先生というか遣手婆というか、そのような仕事である。具体的には現役の魔法少女、魔法少女見習いの指導や、どこの悪に誰を派遣するかの采配の業務である。
 それに伴い、都内某所にある大学(母校)の魔法少女研究部(通称まほけん)に籍を置くため、位置付けとしては大学に講師として雇って頂くことになった。5月からは住み慣れた湘南エリアを離れ都内で一人暮らしをする。

翠蘭の経歴について

 昨年、別の媒体で公表した通り、11歳の夏から25歳の夏まで、14年間魔法少女をやっていた。

 元々はNARUTOの影響を受けた友人と一緒に忍者になるつもりで、くノ一養成予備校に通っていたのだが、友人は優秀、私は落ちこぼれであり、友人との差がどんどん広まるばかりで、忍具の開発と研究にあたる「科学班」に在籍。

 ある日、その友人に「翠蘭は魔法少女の方が向いてると思うよ」と言われ、魔法少女のアジトになっている中学受験の予備校に足を運んでみることに。そしたらやっぱり向いているようだったので本格的に通い始める。どうせなら中学入試もして、魔法少女活動が盛んな中高一貫校を目指すことに。そのため魔法少女になったときの願い事が「志望校に合格しますように」というありきたりなものになり、具現化した武器がコンパス(円を描くアレ)になったのは良い思い出。ちなみにイメージカラーは白だった。

 中学に進学すると、学内には魔法少女の2大勢力のようなものがあって、美樹さ◯か派と暁美ほ◯ら派みたいな感じの雰囲気に近かったのだが、かねてから憧れていたさ◯か派の勢力に加入。
 しかし人間関係がうまくいかず、中2の中頃に脱退。フリー(帰宅部)で活動しながら、ほ◯ら派が集まる理科準備室に入り浸っていた。そのときにマスコットを連れることを先輩に勧められる。当初はほ◯ら派で人気だったウーパールーパーにしようと思っていたが、僕の戦闘スタイルがヒーラー兼バッファーであったため、火力が高い子の方がいいよと先輩に言われ、成り行きでデーモンコアをマスコットに。
 そんなこんなで学業と魔法少女を両立して頑張っていたのだが、高3のとき同級生がどんどん魔法少女を引退していった。魔法少女は高3で辞める人が多い職種である。受験勉強との両立、戦闘服が恥ずかしい等が主な理由だ。でも私は、大学に進学しても魔法少女を続けたかった、なんなら6年間魔法少女できたら楽しいよね程度の理由で薬学部に進学。(医学部に進学する頭の良さはなかった)

 大学では魔法少女仲間ができて、脳筋2人、遠距離アタッカー1人、デバッファー1人と私(バッファー)だったのでバランスが取れたチームだった。私達ならどんな悪とも戦えるという無敵感があった。まほけんには所属していたわけではないが、情報収集や戦闘訓練に時折顔を出していた。
 やがて仲間達が先に魔法少女を引退すると、本格的にまほけんに所属。以後24歳まで魔法少女を続ける。24歳で引退を考えていたが、後輩に泣きつかれたため半年卒業を延期し、後輩の指導をメインとして25歳の夏まで魔法少女を続けた。
 その後、就職先が決まったことを期に25歳の9月で魔法少女を卒業することとなった。ちなみにこのまほけんが次の職場である。

魔法少女業界を取り巻く諸問題

高齢化・なり手不足

 今や少子化や多様性の時代。魔法少女の適性を持つ少女そのものが減少、魔法少女という職に興味を持つ少女となるともっと少ない。悪の数は横ばいであるため、相対的に魔法少女不足に見舞われ、成人後も魔法少女を続けている女性も年々増えてきている。魔法少女を引退できず大学進学を諦める女子高生も少なくないという。
 魔法少女の平均年齢は、2023年の統計によると16.3歳だった。2003年の12.4歳を大きく上回る結果となっている。

世間の考え方の変化

 「年端もいかぬ少女を危険な仕事に従事させる」魔法少女の業界に対して、世間の目は冷たいものになっている。幼い少女を魔法少女業界から守ろうというNPO団体も全国に存在している。また、少女の労働に対し政府の取り締まりも厳しくなっており、検挙された魔法少女アジトは312件にのぼっている。さらに、本人と保護者の書面での同意が必要になったことから、魔法少女の契約が難しいものとなっている。仮にこういった書面契約を交わしていたとしても、親のネグレクトが疑われたり、親のネグレクトの隠れ蓑になったり、かわいそうという考え方があったりと、世間の目が冷ややかなものであることに変わりはない。

ジェンダーレスの考え方

 魔法少女は少女だけの特権だろうか。今は、そのような考え方自体が歓迎されない。男の子は戦隊ヒーロー、女の子は魔法少女という時代はもう終わったのである。そう考えると、魔法少女というものが最早時代遅れであり、年齢や性別を超えた新しい概念が求められている。

先生の必要性

 こういった社会の変化に伴い、今までの魔法少女業界にあった「先輩が後輩の面倒をみる」ができなくなってしまっている。そこで必要なのは先生であるという仮説が立てられた。今まで先輩がやっていたことを先生がやることにより、新たな法や倫理への適応と人員不足の解消を図るという計画である。私の母校のまほけんでは、試験的に講師制度を実施することになり、講師としてお声をかけて頂くこととなったわけである。

 将来、世間に受け入れられる魔法少女業界になることを祈っている。これが魔法少女の願い事にならなければ良いのだが。

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