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ゴエモンは幸せなのか

今日は、ゴエモンのお話をします。

ゴエモンは、実家で飼っていた猫と犬。何故同じ名前かというと、飼っていた時期が違うから。

最初に飼っていたのがトラ猫のゴエモン。今から48年も前のお話です。
私がゴエモンに出会った時、片側の前足を引きずった状態の子猫ちゃんでした。我が家の庭から家の中をずっと覗き込んでいて、全く逃げる気配のない子猫。ご近所では見たこともないし、子猫が生まれた話も聞かない。いったいどこから来たのか。

実家の近くには湖と公園があり、当時「犬猫を平気で捨てる人がいる」という噂を聞いたことがあり、気になって父に話すと「怪我をしていそうだからとりあえず動物病院だね」と言われました。

とりあえず病院…。レントゲンを撮ると、前足はポキッと折れていて「すぐに処置を」ということで処置。迷い猫だと話しをすると、同じように足をポキッと折られた子猫は、一昨日から4匹目だと。

「きっと誰かが子猫を捨てるときに、長く生きられないように足を折ってから捨てたんでしょうね」

獣医さんはそう言いました。まさかそんな酷いことをできる人がいるなんて考えたくない。が、被害に遭った子猫が目の前にいるんです。

このまま引き取って、自分の家で飼うことを告げると、「不幸な猫が生まれないように」と、獣医さんは無償で去勢手術をしてくれると言い、私たち家族は数日子猫を預けることに。

何日くらいだったか記憶が曖昧だし、病院の代金は父が支払ったので、実際の去勢費用がどうなっていたのかはわからないけれど、トラ猫ちゃんはこうして我が家の「ゴエモン」になりました。
ゴエモンは10年ほど一緒に暮らし、病死しました。たぶん、幸せに生きてくれたと思います。


トラ猫のゴエモンが逝って間もなく、私の通う高校に真っ白な迷い犬がやってきました。子犬?よりもたぶん少し成長しているように見えるその犬は、何故だか私の後をずっとついて回る。記憶では、恐らく2~3週間ほど学校に住み着いていたように思います。

ある時、授業中の教室にやってきたその犬が私の隣に座り込み、それを見た英語の先生が言いました。

「家に連れて帰っちゃえば? たぶん捨て犬だよ」

捨て犬、薄々は気付いていたけど。家族の承諾を得て、私は先生の車で送ってもらい、白い犬を我が家へ迎え入れました。この子が犬のゴエモンです。何となく、生まれ変わりか、トラ猫のゴエモンが引き合わせてくれたような気がして。

犬のゴエモンは、それから9年後に旅立ちました。死因は、大量の殺鼠剤。ご近所へ越してきた犬嫌いの男性が、ご飯に混ぜた殺鼠剤を投与したと聞きました。

獣医さんによると、胃と腸は内出血とただれが酷かったそう。犬のゴエモンは、もしかしたら私が引き取らなければ、こんな風に痛くて苦しい思いをしなくて済んだのかも知れません。

ゴエモンのような悲しい一生を送らなければならない犬が、少しでもいなくなればいいと願い、私は迷い犬と女子高生を描いた小説を書きました。ある出版社の方が読んで下さり、電子書籍で出版することが決まりました。40日後、他の2作品と一緒に、一冊の本として出版されます。


たぶん、ふと思い出したのではなく悔いとして、ゴエモンは私の中にいつもいます。トラ猫のゴエモンがたぶん幸せだったと思えるような、そんな感情を犬のゴエモンには抱けない。そんな自分をどこか責めながら、ほんの少しでも、犬猫にも優しい社会になればいいと思っています。

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