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赤い靴

倉敷ジャズストリート、倉敷アヴェニュウにお越し賜りましたお客さま、誠にありがとうございました。皆さまに演奏をお聴きいただけて、感謝の気持ちでいっぱいです。

アヴェニュウのリハーサルの後に、急に曲が頭の中に降りてきました。音楽がふと浮かぶことは頻繁にありますが「本当に書きたい曲ならば、また思い出すし」とたいてい何もせずに放置します。そして、記憶がよみがえってきた時に書きとめます。

でもアヴェニュウの演奏前に降りてきた曲は
「Écoute, écoute, ce moment!
聞いて 聞いて この瞬間!」
(なぜかフランス語……??)
と叫び、わたしを強く引きずって離さなかったのです。それは長い間ずっと自分のなかで眠っていた音楽だったのでしょうか。少々複雑な構成は地図のようにはっきりとしていました。とにかく一刻を争って書きとめるしかありませんでした。衣装も着替えず、メイクもせず、人前で(しかもお客さまの前で)PCに向かってひたすら書きました。きっと険しい表情だったことでしょう。お待ちいただいて申し訳ございません。曲を書いている間、わたしは憑依されて、命令に背けなかったのです。

アンデルセンの「赤い靴」という話があります。
赤い靴を履いたら、踊ることをやめられない少女の物語です。わたしも同じく赤い靴を履いています。
いったんその赤い靴が踊り出すと、わたしは音や言葉や光のなかで踊り続けます。どうか踊り続けたまま、棺に入れますように。

降りてきたばかりの曲の誕生の場にお客さまが見守ってくださって、その曲を聴いていただくという最高のお祝いを授けてくださいましたこと、筆舌に尽くしがたい喜びです。

いつも皆さまがこんなに素晴らしい時間をくださいますことを忘れません。深く御礼申し上げます。


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