49歳で漫画家デビューした話⑨

なにかこの連載、着地点が見えないというか、誰の参考にもならない気がしてきました。

2020年、コロナ禍での話。

暇なので、過去漫画をツイッターや投稿サイトに上げて、どの漫画がウケるのか分析してみようと思った。

ツイッターでは、一番「バズった」のは「ケン一くんの図書館つうしん」だった。次が「実録!精神科外来」。いずれも怠けていた時期の作品である。

また、「オレ外伝」と「オレは咲く」もどれがウケるかやってみた。すると、オレ外伝よりはオレは咲くの方がウケる傾向にあった。また、その中でも人気があるのは母の誕生日を祝う「傘寿」、次が父の入院を描いた「いつか晴れた日に」だった。これは参考になると思った。この方向でやるべきなのかなとわかったからだ。

投稿サイトの方は、講談社の「デイズネオ」に投稿してみた。ツイッターで漫画家の田中圭一氏がここを薦めていたのをたまたま見かけたからだった。

ここは、講談社の各雑誌の担当者が見ていて、担当したい人を見つけたら手を上げ、双方合意したらめでたく担当になる、というシステム。手っ取り早くて良いと思った。自分も漫画家志望者に薦めるならここのサイトを推すと思う。

「未来三国志レッツゴー」を投稿してみたら、担当希望が来た。コミックDAYSの某さんという方。これはラッキーと思い、担当してもらうことにした。また「未来三国志」に助けられた。

そして、ネット通話でやりとりし、他の作品もあったら見せて欲しい、というので、「オレ外伝」「オレは咲く」を全部アップした。

すると、これはすごく面白いので、単行本化したい、という。あまりの急展開に驚いた。

やはり、タイトルを変えたいという。そして各話タイトルも今までの「病休」だの「好日」だのはやめて、「日付」にしたほうがいい、との事で、とにかく言う事を聞くことにする。なにせ単行本が出る最後のチャンスだと思ったからだ。

担当氏は、まず上司の決裁を貰わねばならないという。取れる自信があったようだ。

自分はわくわくして、単行本化の準備を勝手に始めていた。空きページを数えてカットを全部描いたりした。

そうして期待して待っていたが、やはり、「決裁が貰えなかった」という返事が来た。上司は「いい作品と思うが、商業作品としては何か物足りない、何か案はないか」と言ったそうだ。担当氏も色々考えたが、いい案が浮かばなかった。タイトルも自分も考えたが、これといった案は出なかった。

この上司は売れるかどうかを見る目は確かなのだという。担当氏は、ほかの編集者にも作品を見てもらい、感想を聞いたが、やはり同じで「いい作品だが、商業としては物足りない」と言われたそうだ。

というわけで、申し訳ないが諦めて欲しい、新作なら見ます、とのことだった。

自分としては、そちらから単行本化を言い出しておいて、適当だなあと思ったが、仕方なく諦めることにした。しかし、各話タイトルなどを日付にするなどはいい案だと思ったので、それを基に同人誌を作って他に持ち込みたいので、と言って企画書をメールで貰った。

こうして束の間の夢は潰えた。

今度は、またトーチの元担当氏に漫画を送ってみた。「夏の回廊」これは不評だった。こういう奇を衒ったものではなく、ちほちほさんらしい漫画を描いて欲しい、との事だった。

次は「未来三国志レッツゴー」をやけくそ気味で送ってみた。すると、面白く拝読しました、といういつもの決まり文句と、「第二回トーチ漫画賞があるので、なにか自信作を出してみないか」と言われた。「ちほちほさんの作品が、他の編集部員や審査員にどう評価されるか見てみたい」との事だった。

自分は、これは「もう漫画をメールするのはやめてくれ」と遠回しに言われているのだな、と捉えた。考えてみます、と返事した。

トーチ漫画賞と言っても何を出せるのか。未来三国志はやんわり駄目なようだし、オレ外伝は前に経緯を書いたとおりトーチで既にボツっている。

そこで、先程のデイズネオでもらった案を活かしてみたらどうか、と考えた。タイトルを変え、各話を日付のタイトルにし、オレ外伝とオレは咲くを一つの作品としてまとめて本にし、提出したらどうか。

本にして提出というのは、第一回トーチ漫画賞の受賞者、INAさんがそのようなやり方で大賞を獲っていたため、自分も真似したい、と考えた。

そして、作業を始めた。タイトルは、前の年に読んだ村上春樹の「ねじまき鳥クロニクル」の背表紙を見ていてひらめいた。「みやこまちクロニクル」。これはいいタイトルだと思った。また、元担当氏は前にオレ外伝の新しいタイトルを考える時「みやこ」という言葉が入るのがいい、と言っていたのだ。これは「みやこ」が入るから気にいるだろうという計算もあった。

しかし、一度はボツっている作品を含んでいる。まあほとんど駄目だろうとも思った。

あとこの漫画の一番みんなが引っかかる点、一話の忍者展開を削除した。これで話としてはスッキリする。

全260ページをすべてスキャンしなおし、セリフ、文字も全部打ち直した。名前も実名は全部やめて訂正した。受かった時の事を考えてである。

そうして表紙も描き、オンデマンドでたった一冊だけ本を作った。五千円くらいだったと思う。写真が残っている。

そうしてやっとできた本を、郵便ポストに投函した。厚くてギリギリ入る感じだった。

送ってスッキリした。あとは、ほとんど望みは無いと思っていたので、そのうち送った事も忘れて生活していた。

そんなある日、2020年8月、電話がかかってきた。トーチ編集部の知らない方だった。

「みやこまちクロニクル」が一次選考を通過したという。耳を疑った。ええ?あれが一次で通るのか?ボツった作品なのに…。一次は編集部員の選考である。

「すごく面白かったです」と編集さん。ついては、審査員に読ませるために、原稿データを送って欲しい、との事だった。なるべく早く、とのこと。すぐ送った。

そんなこんなで、驚いたが、嬉しかったし、わくわくした。でも、最終審査で何かに引っかかるか。難しいだろうなと思った。

結果が出るまで時間がかかった。

続きます…。

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