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オペラの記録:バイロイト・ワーグナー祭、《ニーベルングの指環》、第三夜《神々の黄昏》(8月30日)


《ニーベルングの指環》チクルス上演も《神々の黄昏》で終わりました。
今回の《指環》チクルス上演は3回ありました。


プログラム。


第一幕が終わったところ。
第ニ幕以降、出番のない役、ワルトラウテ(左から5人目)と3人のノルン(右側、ヒラヒラの衣裳の3人)もここで出ています。
左側の子供はジークフリートとブリュンヒルデの子供(この制作の創作)。


第一幕終了後の休憩時。ハーゲン役(黄色いポロシャツ)のアルベルト・ドーメンが楽屋の窓から外を見ていました(手前の仕切りに描かれた赤い扉の絵の上方です)。
気づいた人が写真を撮っていました(左下に手が見えます)。

コーラス・メンバーのほとんども出番が第二幕だけなので、第二幕終了後のカーテンコールに出てきました。
真ん中で手を伸ばしているのは合唱指揮者です。


第二幕終了後の休憩。たそがれが迫ります。


最終幕のための予鈴。金管奏者たちもこれが最後です。


公演終了後、オーケストラもステージに上がりました。指揮者も一緒です。
バイロイト祝祭劇場のオーケストラ・ピットは外から見えない構造になっていること、またとても暑いこともあり、普段着で演奏しています。


さらに歌手が加わりました。

歌手と指揮者だけのカーテンコール。
左から、3人のラインの乙女、ブリュンヒルデ、ハーゲン、ジークフリート、ジークフリートとブリュンヒルデの子供、グンター、グートルーネ、指揮のマイスター

この後、大変な事が起こりました。

ブリュンヒルデ役のイレーネ・テオリンが平土間前方の観客3人を次々に人差し指で指し、彼らに向かって中指を立てたのです。
テオリンの出来はよくなく、きっと彼女はこれまで自分にブーを浴びせた客がステージから見えたのでしょう。
これまで、というのは《指環》は通常チクルスでチケットを売るので、4回の公演とも同じ席で観ることがほとんどなのです。
というわけで、テオリンは《ワルキューレ》に続きブーイングをした観客の顔を覚えていたのではないか、と思います。

ブー自体も決して行儀の良い行為ではないのですが、それにしても中指を立てるのは言語道断です。

テオリンの最盛期はずいぶん前に過ぎており、今回、ブリュンヒルデを歌うこと自体が疑問でした。今回の出来では、彼女は来年は無理でしょうし、いずれにしてもバイロイトを去ることになるのであれば、もういいかと思ったのかもしれません。

それにしても・・・です。

オペラ公演には多くの人が関わり、多額の金と時間がかかります。税金という公的支援もあります。観客も世界中から集まってきているのです。
コロナで大変な思いをし、みんなでやっとここまできたのですから、多くの人は、感謝と今後も無事公演ができるように願う気持ちでいっぱいだと思います。


まぁ、とにかく《ラインの黄金》から、毎回、いや各幕ごとにものすごいブーの嵐でした。よくあそこまでブーに情熱を傾けられる、と思うほどでした。

とはいえ、ブーはワーグナー作品の公演、そしてバイロイトでは特に珍しいことではありません。

それに、これまでもプレミエで大ブーを浴びた制作が、回を重ねるごとにブラボーに変わり、最後は『上演史に残る名制作』として評価が定まることはよくありました。

指揮者に対してもブーが浴びせかけられました。
でも指揮者のコルネリウス・マイスターは予定していたピエタリ・インキネンがコロナにかかったため急遽、指揮することになったので、準備する時間もほとんどなく、その分、割り引かなければなりません。
さらに、マイスターはまだ42歳の若さです。

それに、演出を手がけたヴァレンティン・シュヴァルツは33歳。
ものすごいブーの嵐でしたし、私の周囲の人たちも否定的な意見が多かったように思います。

でも私自身は、新しい観点で《指環》を捉え、視覚化したシュヴァルツとそのチームの能力はとても高いし、良い仕事をしたと思います。

暑い7月の開幕から約5週間、開幕時には終演後もまだ明るかったのですが、最後は2回目の休憩時には黄昏が迫っており、終演時には暗くなっていました。

熱いバイロイトの夏も終わりました。

FOTO:©️Kishi


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