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親子の傷

家で1人になった時、ふと父親の寝室を覗いた。
相変わらず片付けられないようで、色々なものが
中途半端に散らかっている。

汚い机の上に、ペンギンとたぬきの
手作りフェルトマスコットが置かれていた。

恐らく…母の手作りだろう。
母は手先が器用だったので、若かった頃、
このようなマスコットをよく作っていたと
昔聞いたことがある。

それに、ピンポイントで父と母が好きな動物、
ということを踏まえると、明らかに母が昔に
作ったものとしか考えられない。

そして何故か、それを今になって
大事そうに置いている父。

私の気持ちは、虚しくなった。

うちの父と母は決して仲がいいとは言えない。
一緒に出かけたりはするから、表面上は仲のいい夫婦と思われがち。
でも近くで見てきた娘としてはそんなの信じないでくれと思ってしまう。

うちの父は、わかりやすく言うとモラハラというやつで、私が小さかった頃、かなり苦しめられたという。

それでいて、母は解放されたい気持ちが強いのに対し、今更繋がりを求めようとする父。

父がこちらにいい顔するようになったのは、
父方の母である祖母が亡くなってからだ。

今まで散々、祖母のこと最優先で、
母の実家には顔すら出さなかった父。

その態度に母は呆れ返っているのに、
分かろうともしない父。

マスコットが姿を現したのは
母が仕事の都合で転居することになって
家を出たあたりからだ。

きっと昔は母も少なからず乙女心があったのだろう。
マスコットはとても丁寧に作られていた。

今の母には、あのマスコットを作っていたときと
同じ気持ちはないだろう。

なんでこんな気持ちにならないといけないのかと、
娘にそんな気持ちにさせるなよと、
拗れた関係の両親に苛立ちを感じた。

うちの親子にあるのは、絆じゃない。
取り返しのつかない、大きな傷だ。

思い出したくないのに、ときどき考えてしまう。
そういうときは1人になって、綺麗な景色でも見に行って、心を浄化させてやるのだ。

自分はそんな親になんかなりたくないと、
切に願いながら。

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