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映画「ベイビーわるきゅーれ2ベイビー」感想

 一言で、B級アクション映画でありつつも、前作よりパワーアップしており、今一つだった部分もブラッシュアップされていました。敵兄弟も魅力的で、嵌まる人が多いのも納得の作品でした。

評価「C+」

※以降はネタバレを含みますので、未視聴の方は閲覧注意です。

 阪元裕吾監督作品の女子高生ガンアクションストーリー『ベイビーわるきゅーれ』(2021)は小規模上映ながら口コミ効果によりヒットを記録しました。そして2年後、満を持して続編の『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』が公開されました。舞台は前作から数年後、殺し屋として生活するちさととまひろと、彼女らを狙う新たな殺し屋コンビが登場します。

 ちなみに主題歌は、今をときめくダンスボーカルユニット、新しい学校のリーダーズによる『じゃないんだよ』です。


・主なあらすじ

 うだつの上がらない殺し屋アルバイターの神村ゆうりと、弟のまこと。先行きの見えない日々に不安を覚えつつ、彼らは仲介役の赤木と共にのし上がりを夢見ていました。

 ある日、簡単な殺しの依頼を受けた彼らは、なんとか依頼を成功させるも、殺し屋協会の伝達ミスによるターゲット違いにより、報酬は支払われず。

 不満を述べる兄弟に対し、赤木は「正規の殺し屋を殺せば、空いた枠に繰り上がりになる」噂と、「台東区で活躍する別次元の腕を持った女殺し屋コンビ」の話を聞かせます。

 その殺し屋コンビこそが、『ベイビーわるきゅーれ』の主人公、杉本ちさとと深川まひろでした。そこで、神村兄弟は、二人を殺して正規の枠を狙うことに奮闘しますが…。

・主な登場人物

・神村ゆうり 演 ‐ 丞威
 神村兄弟の兄。兄弟で殺し屋アルバイターを営み、仲介役の赤木と共にのし上がりを夢見ます。特技は格闘技。

・神村まこと 演 ‐ 濱田龍臣
 神村兄弟の弟。年齢に反して幼い面があり、いつも着ているシャツに描かれた猫に餌をやるなど、奇癖を持ちます。食堂の看板娘の向井さくらに想いを寄せています。

・杉本ちさと 演 ‐ 髙石あかり
 前作より、まひろとコンビを組む美少女殺し屋。黒髪ロングヘアーの方。口数が多くお調子者で、思い立ったら即行動する性格です。それ故に、本作では「賭け将棋」に乗せられますが…。

・深川まひろ 演 ‐ 伊澤彩織
 前作より、ちさととコンビを組む美少女殺し屋。金髪ショートヘアーの方、ちさとと比較すると口数は少ないですが、周囲を察することに長けています。

・田坂 演 ‐ 水石亜飛夢
 殺し屋協会に属する清掃スタッフ。説教が長いせいで、若い女性たちにナメられます。

・宮内莉奈 演- 中井友望
 田坂の部下。

・赤木 演 ‐ 橋野純平
 神村兄弟をサポートする仲介役。殺し屋協会からは完全にナメられており、ターゲットの伝達ミスで報酬が支払われないことが日常茶飯事の模様。噂を信じて神村兄弟をちさと・まひろにけしかけるも…。

1. 前作より、映画の質が向上していた。

 本作は、前作の『ベイビーわるきゅーれ』続編となりましたが、まずシンプルに映画の質が向上していたと思います。

 前作に引き続き、「若い女性+殺し屋」設定でやりたいことは出来ていると思います。「ゆるいコメディ」と「ハードなアクション」とのギャップが良かったですね。
 まぁ作風は「B級映画」ですが、その中では見れる方でした。前作は、所々「間の悪さ」が気になっていたのですが、そこは改善して圧倒的に見やすくなっていました。

 ハードなアクションは前よりもパワーアップしており、とても良かったです。今作の敵キャラは、丞威さんと濱田龍臣さんとはっきりしていたのも良かったです。そしてアクションは相変わらず最高で戦闘シーンが来るたびに見入ってしまいました。恐らく、アクション指導の園村健介氏がかなり良いのでしょうし、前作がヒットして予算がついたのでしょう。

 この戦闘のシュチエーションのバリエーションですが、例えば銀行や廃車工場、また拳銃がないからこそどう戦うか、といった設定は練れてたと思います。
 ちさととまひろはジムの滞納会費を払うために銀行に行くのですが、そこで強盗事件に遭ってしまいます。最初は「身バレ」を防ぐために、大人しくしてようとしていた2人でしたが、強盗の暴れっぷりを見かねて、遂に「征伐」を決意します。
 強盗との戦闘では、机の引き出しを下げて相手を転ばせたり、固定電話でヌンチャクして応戦したり、強盗を回転椅子に座らせて回しながら二人でビンタしたりと、凄いんだけど、どこか笑っちゃうような香港映画や漫画的な雰囲気を感じました。ちなみに、若い女性ペアからダブルビンタされたら、意外と強盗は嬉しかったかもしれません(笑)。

 また、ちさとの「賭け将棋」がバレて、2人が着ぐるみで喧嘩するんですが、視界が悪いし、動きにくいのによくやるね〜と感心しました。本人達は一生懸命なのですが、一方で何処かギャグに見えて笑ってしまいました(笑)。※パンフレットより、あれは別のスタントの方が努められていたそうです。

2. ある意味、ジョジョ5部のブチャラティチームと暗殺チームの再現。

 前作で「岸辺露伴の『だが断る』」が出てきたことより、もしかしたら、阪元裕吾監督はジョジョネタがお好きなのかもしれないと思っています。

 そのため、今作もそれを踏まえて考察しました。
 本作は、2vs2のバトルなので、特に5部『黄金の風』のストーリーの『フィレンツェ行き超特急』を思い出します。このエピソードでは、主人公チームはブローノ・ブチャラティ&グイード・ミスタ、敵チームはプロシュート兄貴&ペッシが電車内でバトルします。
 キャラ設定だと、まひろとちさとがブチャラティとミスタなら、ゆうりとまことはプロシュート兄貴とペッシかな。でも、ちさととまひろは、どちらもブチャラティというよりは…ナランチャ・ギルガとミスタのほうがしっくりきます(笑)
 展開では、最初に敵の視点から描くところがもろそれでした。また、戦闘中にお互い一人が離脱していき、最後は1vs1のバトルになるところも。

3. あるある&ゆるゆるネタな小ネタは相変わらず(笑)。

 本作は、前作同様に随所に「小ネタ」を散りばめているので、それらを探すのは楽しいかもしれません。
 本シリーズは、一応「現代日本」が舞台なので、某パンデミックによるZoomでの上司との会話がグダグダになっていく様は、リモートワークあるあるで草でした(笑)。

 小ネタについてはわかる範囲で箇条書きで。
・映画『花束みたいな恋をした』と『溺れるナイフ』。どんだけ菅田将暉推しなの(笑)

・「悪い顔選手権」。神村兄弟が持つ、ちさととまひろの写真が、指名手配ポスターなみの人相の悪さなのは草でした(笑)。

・漫画『鬼滅の刃』。ちさまひの部屋には単行本があったような。(違ったらすみません。)「そんなんだから嫌われるんですよ」もありました。※実際に髙石あかりさんは舞台で竈門禰豆子役を演じています。やはり似ているなぁ。

・「あのちゃん」。死体処理班の田坂と後輩の宮内莉奈の掛け合いも脱力系コントで、宮内はあのちゃんのような、「口にモノを含んだ状態でしゃべっている感じのウサギ系」な話し方でした。彼女、実はしっかり者なんですよね。

・「俺達、立場が違ってたら共闘できてたかもね」からの「ちゃおちゅ〜る乾杯」。犬猫の餌のちゃおちゅ〜る、そのまま食べる人いるんだ。「ちゃおちゅ〜る餃子」は草すぎて、鑑賞後に思わず調べていました(笑)。

・豆苗レシピ、ツナ缶わかります。私も時々作ります。

 一方で、この辺の小ネタの配置については、前作同様に思うことはあります。こういうネタのオンパレードは悪くはないのですが、ややニッチ過ぎる気もします。わかる人にはわかるんだけど、若干「内輪ウケ感」もあるような。果たしてこれらのネタがそこまで面白いかと聞かれると…少なくとも、何回観ても、何年経っても笑えるものではないかなぁ。まぁ、この辺はファンサービス的な感じなのかもしれません。(ここは完全に私の好みの話なので、作品の質を問うものではございません。)

4. 神村兄弟の特徴と魅力について

 殺し屋バトルについて、ちさまひは相変わらず良かったですが、神村兄弟も同じくらい印象に残りました。

 今作では、最後までお互いがしのぎを削ってたのが良かったです。基本的にはちさととまひろが実力では「格上」なのですが、そこに神村兄弟がしっかり追いつこうとしていたのが良かったです。
 実際に、コンビの片割れである、ちさととまことが負傷したときは、これ意外とヤバいかなと焦ったので。その後も、まひろも肩を撃たれて倒れ、ゆうりも右肩をタイヤに当てて痛がります。二人共同じダメージを負いながらも、ラストバトルに突入する流れは良かったです。
 一方で、「勝った…」発言しちゃったゆうり。きちんと相手が○んでいるか確認しなきゃ、詰めが甘いよ。ジョセフ・ジョースターの「相手が勝ち誇っているとき、ソイツは既に敗北してる」だな。
 うーん、やはり兄弟はもっと見たかったなぁ。活躍が良かっただけにここで終わりは勿体なかったような。まこと、定食屋の女の子とデートできてたら良かったね。まぁ、立場上難しいけど。

5. 前作でも気になった点は本作でも相変わらず。

 本シリーズについて、上記より、前作に比べて、本作の方が悪くなった点は特にないのですが、前作でも気になった点は本作でも相変わらずでした。

 殺し屋の日常を描いている作品として、頭が緩そうなちさまひの雰囲気は、まるで『セトウツミ』みたいでした。
 一方でボソボソ喋ったと思ったら、いきなりワーワーキャーキャー叫んだり、その辺は前作に引き続き、正直邦画の演技でした。
 それでも、アクションシーンになると、いきなり劇伴のテンポも上がり、一瞬でトップギアに入ります。このエンジンを痛めそうなギアチェンジが本作の売りでしたね。

 前作に引き続き、不明な点はそのままです。やはりちさまひのバックグラウンドについては謎だし、この世界の「殺し屋」の立ち位置がわかれば、もう少し世界観に入り込めたかもしれません。所謂、純粋な悪役的な「殺し屋」なのか、街を守るアンチヒーロー的な「殺し屋」なのか、本作を観てもやはりわかりにくかったです。まぁ、後者の線が強いと思いますが。何となく田坂が警察との「関わり」を匂わせていたので。

 ちなみに、ちさまひ、ジムの延滞会費はちゃんと返済できたのかな(笑)?

 やはり、本シリーズは、「漫画の実写化」だと思います。「日本に近いけど日本ではないパラレルワールド」だと思えば、まぁ見れます。
 個人的には滅茶苦茶嵌まったシリーズではないけど、最後まで見れるし、熱烈に好きな人がいるのもわかります。百合っぽさあるしね。パンフレットにはファンイラストも載ってたし。

 ちさまひ、朝ドラや大河ドラマに出てほしいし、1でも言ったけど、やはりRRRの「ナートゥ」を踊ってほしいです(笑)。

 それにしても、まひろ役の伊澤彩織さん、『ジョン・ウィック:コンセクエンス』ではリナ・サワヤマさんのスタントパフォーマーとして、日本・海外で目覚ましい活躍を見せていらっしゃるとは。キャストにいるのかと思って探しましたよ〜
 後は、丞威さんは映画『燃えよデブコン』にてドニー・イェンさんと共演されたとか。こちらも凄いです。意外と『ジョン・ウィック』との縁があったとは、驚きました。

 どうやら、3もあると聞いています。公開はいつになるかわかりませんが、また楽しみにしてます。

・出典

・公式サイト

※ヘッダー画像はこちらより引用。

・公式パンフレット

・本作ウィキペディア





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