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超文系の私が数学の旅にでたらこうなった

ある日の女子会でひとりの友達がこうつぶやいた。
「今日は6日(金曜日)だけど、今月21日って何曜日だったっけ?」
よくある他愛もない会話。
私なら、すぐさまスマホを開いてカレンダーを確認する。
でも、リケジョの友達は違った。

「今日6日は金曜日だよね。21は7の倍数だから、21日は土曜日。」 

?????

なんだかよくわからなかった。

あとで聞いたら理屈としてはこういうことらしい。

今日から1週間後の同じ曜日の日を出すときは、今日の日にちに+7をする。
今月7日の曜日を覚えておけば、+7した14日も、さらに+7した21日も同じ曜日になる(つまり7の倍数は全部同じ曜日)。
6日金曜日の翌日である7日は土曜日だから、21日も土曜日ということだった。

すごい、なんか、かっこいい!!

超文系で昔から数学や暗算は苦手、お会計の割り勘役が自分に周ってきませんように・・・といつも心の中で祈っている私にとって、彼女は憧れだった。
学生時代、数学の定理はいくつか勉強したような気がするけれど、それが実生活の何の役にたつかわからなかった。
何のためにあるのかを理解しないまま、生活の中で生かすセンスを身に着けないまま大人になり、とうとう定理自体も忘れてしまった。
でも、彼女のような人は、数字の使い方と生活への生かし方を知っている。

もしかしたら、彼女たちには、私の見えていない世界が見えているんじゃないだろうか?
全然違う角度で。全然違うフィルターで。全然違う秩序で。
だとしたら、わたしも、その世界を、少しでいいから見てみたい!!

そんな思いが強くなり、私は数学の旅にでることにした。

と言っても具体的には、この本を読んだ。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

私は普段税務の仕事をしている。
5%、8%、8%(軽)、10%
これは消費税率で、(軽)は軽減税率。
業務上目にする項目だけど、ある時ふと思った。
一体これらの税率の組み合わせは何パターンあるんだろう?
10%だけのレシートをもらう場合あるし、全部使うパターンもある(さすがに5%はほぼないだろうけど)。
組み合わせの順番は気にしない。

とりあえず、思いつく限り、書き出して、数えてみる。
5%だけ、8%だけ、8%(軽)だけ、10%だけ、5%と8%、5%と8%(軽)・・・

だめだ。この作業、なかなかしんどい。それに、絶対なんか漏れてる。

そう悩んでいたところ、組み合わせを全部書き出さなくても、パターン数をだせるすごい三角形を発見した(もちろん本の中で)。
作り方は単純だった。

まず、1を左右斜めに並べる。

そして、1と1に挟まれた下の行はその位置の右上の数と左上の数を足す。こんな風に。1+1=2

この調子で隙間を埋めてしまう。

ピラミッドができた。
この三角形は組み合わせの数を表現しているという。
例えば、この色付けした階段。

n個の中から2個取り出す場合の組み合わせを表している。
一番上の1は、2個(A,B)の中から2個取り出す場合で、1通り。
二番目の3は、3個(A,B,C)の中から2個取り出す場合で、3通り(AB,BC,AC)。という具合に。

そこで私は思った。
これを使えば、大人数で総当たりのリーグ戦やるときの試合数がすぐに出せるんじゃないだろうか。
たとえばこの三角形によると、5チームでリーグ戦やるときは、全部で10試合必要ってことになる(黄色の四番目)。
たしかめたい。
何か流行っているスポーツはないだろうか。

そうだ、ラグビー!

ラグビーワールドカップで日本が属していたプールAは、日本、スコットランド、サモア、アイルランド、ロシアの5チームあった。
ほんとに10試合もやってたっけ。
で試しに公式サイトを見てみたら・・・

https://www.rugbyworldcup.com/news/291718
やってた!!!
びっくりした。
これさえあれば、少年野球からオリンピックまで多種多様なスポーツの運営委員を頼まれても自信をもって対応できそうである。頼まれる気配はないけれど。

私はもっとこの三角形の可能性を探りたくなった。
5%、8%、8%(軽)、10% 4個の中から1個取り出す場合、2個取り出す場合、3個取り出す場合、4個取り出す場合全部洗いだして、この三角形に色を付けてみたらどんな形になるんだろう?

やってみた。

きれいに横一直線になった。
そして、自分が欲しかったパターン数、合計15通り(=4+6+4+1)だったってこともわかった。

ただひとつ、一番左だけ、色がつかなかったのがどうも気になる。美しくない。
これは、なんだ?
左から黄色が1個取り出す場合の数、オレンジが2個取り出す場合の数、ピンクが3個取り出す場合の数、紫が4個取り出す場合の数。
てことは、
一番左は0個取り出す場合の数か!
そうだ、何も取り出さないのは永遠に1通り。
だから一番左はどの行も1なのだ。
これを合わせたら行合計で16通りになった。
スッキリした。

しかしこの三角形の潜在能力はこれだけにとどまらない。
行ごとに数を合計すると、2の倍数になっているのだ。

例えば今回の5%、8%、8%(軽)、10%のように項目が4つあって、その組み合わせの合計を出したいときは2⁴ って覚えたら2秒でできる!

感動した。
理屈はわからない、でも圧倒的に美しい自然の法則。
シンメトリーがもたらす安心感。
見たことのない景色を初めて目にしたときような高揚感。
旅に出た甲斐があった。
そう思った。

でも、私以外のみんなは、これを、この景色を知らないのだろうか?
だとしたら、この景色、誰かに見せたい。ていうか自慢したい。んでもって驚かれたい!

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

ある日の就業後、私は理系の同僚に上記の消費税のパターン数の問題を出してみた。

すると同僚は、少し考えてこう答えた。

5%も〇かーしかない、8%も〇かーしかない、8%(軽)も〇かーしかない、10%も〇かーしかないんですよね。
てことは、2通り、2通り、2通り、2通り

2×2×2×2=2⁴ 
=16通りになります。


・・・・・


たしかに。


まさかだけど、数時間戯れたあの三角形の出番は不要だった。
悔しいけれど、このルートが、間違いなく一番シンプルで、わかりやすくて、スマートなゴールへの近道だった。
その上、理屈がわからなかった公式(組み合わせ合計が2の倍数になること)の証明までしてくれていた。

ああ、やっぱり全然違う角度から正解出してくるやん…

理系、おそるべし


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