随分昔の話だが、『校内発明展』に出品せよと、夏休みの宿題があった。その中から子供の『発明品』を数点選び、市内小学校の『合同発明展』に出品させるのだろうと。

　当時、月に一回ほど、休みの日に父が魚釣りに連れて行ってくれていた。河岸でマッチやライター使ってもタバコに火が付かず、風の当たらぬ角度を選びながら悪戦苦闘している父の姿があった。

　そこで、当時の筆者は、ジッポーの存在なんぞ知る由もないが、『強風でもタバコに火が付くライター』を考えてみたのだった。

　先ずは、マテリアル探し。最終的に、母が捨てようとしている口紅があったので、それを貰って、ライターの本体にすることにした。

　作りは至って簡単。乾電池とニクロム線、石綿だけで十分だ。試行錯誤しながら、やっと完成した『強風でもタバコに火が付くライター』。使い勝手については、父に何度か実験してもらい、まあまあ使えることが分かった！

　よって、それを『校内発明展』に出品することにしたのである。ところが、会場の講堂にて、筆者の横を通り過ぎる或る教師の一言に、驚いた。大声で「発想は面白いけど、子供らしくないなあ！」と言って去って行った。

　子供らしいって、『発明』の基準なのかと首を傾げた筆者だったが、その教師の言葉を今でも忘れることはない。子供なりに考えた『発明品』。それが、「子供らしくないなあ！」で片付ける酷い奴。

　今、筆者が大人になって、当時を振り返れば、その教師の「発想は面白いけど、子供らしくないなあ！」という発言に対して、「評価はどうでも良いが、大人らしくないなあ！」と反論したい。

　こんな教師がいるから、子供の夢が一つ一つ潰されるのではなかろうか。