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【第7話】夢は大きく!夢は叶わなくてもどうせ夢!

プロミュージシャンとしてデビューし、レコードショップでわたしたちのCDが並び、周りからもチヤホヤされていた。それで月1回~3回のライブをして動員もそれなりにあって、なんか夢見心地だなぁ。。自分の人生ノッてるなぁ。。なんて思っていた。業界の有名な人とも沢山交流をさせて頂いたりもしていたから、ちょっといい気分になって調子にのっていたとは思う。

このままこの世界が続くんだなぁ。。

なんて思っていましたが、プロになったということは仕事としてお金を頂くという事になる。お金はちゃんと仕事をしなければ貰えないのだから現実は大変です。プロミュージシャンの世界には二通りあって、ある程度に有名になってプロデビューしてすぐ売れる人もいれば、無名でデビューをしてツラい下積み時代を過ごして運がよければ花咲く人もいるわけです。わたしたちは無名でデビューしたから大変だ。事務所から多少のサポートはしていただいていたものの、まだまだ無名でライブは自費で行ってたし、事務所から報酬を貰えるほどではなく"セミプロ"みたいな状態が続いた。

デビューして間もなく「プロってそういうことなんだな」と痛感したよ(笑)

ちなみに2000年あたりの「バズり」というのは、今のSNSのように無名の人がいきなり翌日に有名になるという事はほとんどない。全国ネットのテレビ放送や有名なラジオ番組、それと有線を聞いた人の口コミとかで広まるしかなかったので、誰かが見つけてくれてちゃんと評価されるまでどうしてもツラい下積み時代を過ごさなければならない。わたしたちはプロデビューしていい気になったはいいが、CDだって知る人が少ないのでそれ程売れなかったのが現実です。

レコード会社との契約で、売上利益が出なければレコーディング費用、CD制作費、宣伝広告費は折半で支払うような契約だったので少しづつ支払う事になった事で半年後には完全に「夢の中で変な苦労する」ような結果となった。支払いが出来ないようであれば、その会社の経営するバーで働いて身銭を切ってもらうよう半分脅しのような事を言われた。

でも、これがビジネスの現実世界だ。覚悟がない者は消え、実力者は結果を出していく。
これは社会の当たり前の話。

それでもなんとかライブと小さな地方ラジオ番組などで告知。ライブをすればお金がかかってくるから、夜の居酒屋のバイトで働いて、ライブの利益とバイトの給料合わせて事務所へ支払いをしていたんだけど。それでも、徐々に赤字になってラットゲームになっていく。こうして、事務所から期待をされていたバンドも負債を抱えて、次第にライブの本数も減った。わたしたちは"プロになる事"を夢として頑張ってちゃんと叶える事ができた。でも結果、夢の残骸として残ったものは支払いに追われる中途半端な日々だ。

サッカーの本田圭佑さんの言葉で"目標は今の自分でも頑張れば実現できるターゲット。 夢は今の自分では頑張っても不可能なターゲット"との言葉があるが、わたしの夢としてたものは、数年真剣に頑張れば叶ってしまうようなただの目標だったんだと思う。今、次の世代の子達に言うならやっぱり夢は小さいものではなく、叶ないそうにないくらい大きな方が、最後まで頑張りがいを持てるのでいい。

それでわたしはと言うとこの時「音楽なんてもうやりたくない」という気持ちになっていたので、練習量も減り、音楽から遠ざかるように、夜の居酒屋の厨房のバイトに明け暮れる。お陰様で現在は料理がしっかり出来る主夫にだってなれるくらいまでのレベルになったが(笑)わたしが将来望んでいる姿は居酒屋のバイトで生計立てることではない。夢というか目標がなくなった今、ついに将来に焦り焦り始めるのであった。

次の話ではいよいよ将来を真剣に考え、職人サラブレッドとして生まれた宿命を受け入れるかどうかの分岐点に差し掛かることになります。

つづく

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