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I Don't Feel Like Dancin'/Scissor Sisters

お気づきの方もいるかもしれないが、時折、「曲名/アーティスト名」のタイトルで記事を書いている。この記事がまさにそうだ。しかしこのタイトルには理由がある。我々は、「愛すべきおバカ曲」というテーマの下にこの記事を書いている。そこには、愛情とおバカさの両方が等しく揃っていなければならない。どちらに肩入れすることもできない。だから、客観的なタイトルを付けざるを得ない。ということにしておこう。

誰しも、時折とんでもなく恥ずかしい勘違いや思い違いをすることはあると思う。自分は、中学生の頃、懐メロ(いわゆる昔を思い出すことのできる懐かしい曲のこと)を夏メロだと思い込んでおり、夏の歌というのは日本にかくもたくさんバリエーションがあるのだと、妙に納得していたりしたことがある。幸い、インターネットの発展により早期に自ら気がつくことができたので、人前で赤っ恥を書くことは免れた。インターネット万歳。

ちなみに、この懐メロは、一般的にはひと昔前に流行した有名な曲のみが対象となるらしい。言い換えると、個人的には思い出があるがそれほど流行らなかった曲というのは、厳密には懐メロではないのだそうだ。でも、音楽をそれなりに聞いている人は誰しも「自分だけの懐メロ」というのを少なからず持っているのではなかろうか。
例えば自分にとっては、中学生の頃に授業をサボって、グラミーの実況中継をかじりついて聞いていたNorah Jonesの"Don't Know Why"だったり、受験勉強に打ち込めずセンター試験直前の冬に繰り返し聞いていたDeath Cab for Cutieの"Marching Bands of Manhattan"だったりする。それは、もはや懐メロというよりも自分の人生の一部に組み込まれているのだろうと思う。

そんな自分だけの懐メロを挙げていくだけで、マガジンを一つ作れてしまいそうだけれど、そのうちの1曲に対して、僕はまたも恥ずかしい勘違いをしていることに先日気がついた。

それが、Scissor Sistersの「I Don't Feel Like Dancin'」である。僕はこの曲をずっと、「I Just Feel Like Dancin'」だと思い込んでいたので、先日久々にこの曲を流そうとして、思わず曲名を二度見した。けれど、間違えた理由はものすごくシンプルで、最高に踊れる曲だからだ。

PVもいい調子におバカでサイケな感じである。また、曲調も完全に踊らせにきている。あまりに気になって、初めてちゃんと歌詞を見てみた。

Don't feel like dancin', dancin'
Even if I find nothin' better to do
Don't feel like dancin', dancin'
Why'd you break it down when I'm not in the mood?
Don't feel like dancin', dancin'
Rather be home with no one if I can't get down with you, you, you

「あなたと踊れないなら家で引きこもる方がマシだ」とサビの一番最後でようやく本音が出てくる。洒落が利いていると思うかもしれないし、あるいは捻くれすぎだろう、と感じる方もいるだろう。

Scissor Sistersは、複数の同性愛者同士がニューヨークで出会って結成されている。さらにアルバムがリリースされたのは、2006年である。当時高校生で無知な僕には、その意味を推し量るだけの頭も知識も持ち合わせていなかったのだが、同性愛やゲイカルチャーは、2020年現在よりもずっとマイノリティであり風当たりも強かったのではないかと思う。そんな環境下でもアメリカを飛び出し、英国のトップチャートを席巻した彼らのこの曲を、僕は最大限の敬意を込めて、あえて「愛すべきおバカ曲」と呼びたいと思う。

終わりに

今回の記事を持ってこのマガジンは、一旦の締めくくりになります。音楽好きのアラサー男2名が、交互に「愛すべきおバカ曲を選曲する」というどこにもニーズのない企画でしたが、書いている本人たちはめちゃくちゃ楽しかったです。読んでくれた奇特な読者のみなさま、ありがとう。現在、企画を変えて何か新しい音楽マガジンのネタを構想中ですので、乞うご期待あれ。

なお、本マガジンで紹介した全10曲の珠玉の曲たちを記事の順序通りにプレイリストにしてみました。かなり、癖が強くて人前では流せない笑えるラインナップになりました。38分のジェットコースターをお楽しみください。


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