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今流行りの、細かいストラップがついたサンダル。その紐を、ゆっくりと指に絡ませながらほどいて、右足を線路の上にのせる。同じく、左足。月の光に照らされた線路は固く冷たく光っていて、ひんやりとした空気が私の足を踏んづける。そう、この日のためにとっておきの、真っ白でふわふわしたコットン生地のワンピースを着てきたの。細かい花柄があちこちにくりぬかれていて、月の光がそこを通って過去に行く。私は両手をのばし、バランスをとりながら一歩線路の上を歩く。サンダルは途中、草むらに放り込まれる。月だけが私を照らす。遠くの方からジャガイモがごろごろ入ったカレーの匂いがして、それが私の脳裏を横切る。線路の上を歩くか、線路の外に出るか、どっちを選ぶかは、ねえ、私じゃなくて足の裏に聞いてよね。まめができたって、別にいいじゃない。ほどいた髪の毛で、縛ってみせるわ。

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