（ネタバレあり）

カンテレ（関西テレビ）の冬期ドラマ「春になったら」を最初に知ったきっかけは、ドラマの掲示板とかではなく、日本語学習の掲示板でした。日本語の学習者にとって、「なったら」、「なれば」、「なると」という条件を表す文法は似ていて、紛らわしいように見える場合がよくあります。せめて、「東京タラレバ娘」のような作品のタイトルにも二つの文法がありますし、その違いは日本の方にとってもちょっと微妙に見えるのでしょうか。それで、ドラマ「春になったら」をどうやって英語や中国語に訳した方がよいか、という記事は僕はたまに日本語の学習の掲示板で見かけて、このドラマを観始めました。

ドラマ「春になったら」で、春になったら、二つのことが起こる、と冒頭に語られました。娘役の椎名瞳（奈緒）は、三ヶ月後、バツイチ子持ち、売れないお笑い芸人の川上一馬（濱田岳）と結婚するのです。父役の椎名雅彦（木梨憲武）は、三ヶ月後、末期癌で亡くなるのです。ドラマは、2024年元日に父娘二人はそれぞれのことを告げ合って、葛藤からお互いに気持ちを理解し合って、相手の願いを叶え合っていく三ヶ月の歳月を描写する物語です。

同じシーズンのドラマ「おっさんずラブ-リターンズ-」の「余命一ヶ月（嫁、イカゲーム…）」のような聞き間違いではなくて、父役の椎名雅彦の「余命三ヶ月」は奇跡なしで、決まっていることです。そして、「死の受容への5段階」について、椎名雅彦は「否認」、「怒り」、「取引」、「抑鬱」をすぎて、すでに「受容」の段階につきました。椎名雅彦役の俳優、お笑いタレントの木梨憲武のドラマを観るのは初めてです。ストーリーで、彼は生き生きして、最後まで働きながら、「死ぬまでにやりたいことリスト」を少しずつ実現して、自分の死を「受容」の気持ちで迎えることができました。僕は学生時代にホスピスでボランティアしたことがあるので、木梨憲武の笑顔を見たら、昔自分が直接会った「受容」した患者さんのことを思い出して、木梨憲武が役を上手にこなしたと感じています。

演技と言ったら、ダブル主演の奈緒の演技も見どころだと思います。奈緒の出演を初めて観たのはドラマ「あなたの番です」のところでした。その時、そしてその後のドラマ「ファーストペンギン!」の奈緒の役作りもやや誇張して演じていましたが、「春になったら」の奈緒は抜群にうまいと感心しました。ある回想のシーンに彼氏とのデートの時奈緒の「恋してる目つき」も、笑いながら悲しそうな表情も、上手に表していて、そのシーンの感情をちゃんと伝えてくれていたと思います。「キムタクが出ているドラマが観たい」の妻と同様、これから奈緒の出演を見逃したくないほど応援したいですし、将来いつか奈緒が海外で受賞することもちょっと期待するようになっています。

最後の家族旅行、最後の出勤の日、遺影写真の撮影、48年ぶりに再会した親友に謝ること、どれも素晴らしいエピソードですが、ドラマの重点は最終話の「旅立ちの式」の他にないです。春になったら、椎名瞳と川上一馬も予定通りに結婚式を上げました。同じ日に、最期を迎える椎名雅彦も元々お葬式に来てもらいたかった人々に「旅立ち」を祝ってもらいました。送別会のように、乾杯、食事、スピーチ、タレントショーなどが、みんなの愁傷と相まって、最高の式になりました。

僕もたまに自分のお葬式のことを考えています。撮った写真のアルバム、読んだ本のリスト、観た映画の感想文、買い集めたゲームのコレクション、完走したマラソン大会の記録、歌った合唱団コンサートの動画、投稿したインスタのアーカイブ、全部親友に見てもらいたい、と僕は夢見ています。もちろん、子供なしの僕は、だれに頼ったらいいかという悩みもありますが、ドラマのように死ぬ前に「旅立ちの式」を行ったら大丈夫ではないか、と思うようになっています。大前提は、戦争や事故ではなく、死ぬ前に準備の時間がちゃんと残っていることです。そう考えたら、ドラマの椎名雅彦の「旅立ちの式」という形で、娘や親友に祝ってもらえたことは、至福です。

先週末、家を整理した時、買ったまま観ていなかったと思っていたBlu-rayを観ました。記録しようとしたところで、自分がその同じBlu-rayを二年前に観終わっていたことを知って、自分のボケさ加減を痛感しました。今はまだ末期癌とかを持っていなくても、死に向かって進んでいることを自覚しているし、忘れないうちに、感想文として、自分の「旅立ちの式」という微かな願望をここに残しています。

そして、式の展示品をもっと増やすために、残りの人生引き続き頑張ります。

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