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自販機に500円取られた話

僕には好きな飲み物があって、
キリンのメッツコーラをよく飲んでいる。
炭酸が凄く効いていて最高に美味しいんだ。

会社からの帰り道、家の近くの自販機で
100円出して買って帰るのが僕の日々の楽しみ。

しかし、最近暖かくなってきたからか、
いつも買ってる自販機が一週間ずっと「売り切れ中」だった。

うちの家族は炭酸ジュースはまるで飲まないから自分で買わないとコーラを飲むことが出来ない。

僕は毎日、いつ入荷するだろうかと待ち望みながら帰りがけに自販機をチェックしていた。

そしたら、ついに昨日!!
1週間ぶりにメッツコーラが入荷していた。

昨日はあいにく雨が降っていたが
僕は「待ってました」とゴソゴソリュックの中から財布を取り出し、100円を自販機の中に入れた。

しかし、100円を何度入れても
おつりの受け取り口から100円が返ってくる。

僕はおかしいなと思いつつ、
仕方ないから10円や50円玉を入れてみる。

そしたら、10円や50円玉だけは反応する。
よしこれで買えるぞ!と思ったのも束の間、
僕の財布には10円玉が足らずちょうど70円しか作れない。

僕は雨の中イライラしながら、
仕方なく500円玉を取り出した。

500円玉ならきっと反応してくれるはず、
僕はそう願いを込めて自販機に500円を投入した。

しかし、残念ながら500円玉は反応しなかった。
金額のランプはずっとゼロのまま…。

僕はやっぱり駄目かと項垂れて、
500円を回収して帰ろうとした。

しかし、ここで重大なことに気付く!!!

入れたはずの500円玉が返って来ないのだ。
これまでの100円玉は反応しなかったら、
すぐにおつりとして戻ってきていた。

そんなバカな!!!

僕はおつりのレバーを何度もガシャガシャ動かしたけど、
自販機はうんともすんとも言わない!!!

10円玉や50円玉を入れて、
一緒におつりから出てこないか試してみたりしたけれど、何度やっても500円玉だけが出てこない。

こんな仕打ちがあるか!!!

毎日メッツコーラが入荷してないか
1週間楽しみにしていた男に、
恩を仇で返すようなことをすんなよ!!

僕は雨の中半泣きになりながら、
おつりのレバーを繰り返しガシャガシャしていた。

僕が困っている間にも人は通り過ぎていて、
傍から見たら自販機のおつりに取り忘れがないか
何度も確認してる卑しい人間に思われたかもしれない。

僕はもう自力で回収することを諦めた。

でも、このまま泣き寝入りしてたまるか!

100円ならまぁいいかと思えるけど、
500円玉は僕にとっては大金だ!!
漫画を1冊買えるし、牛丼だって一杯食べられる。
温玉付きでだ!!!!

自販機にはトラブルの際はここに電話して下さいと管理会社のシールが貼ってあった。
僕はここに電話をしてみることにした。

営業時間:9:00~17:00まで。

只今の時刻は19時、とっくに時間は過ぎているけれど僕はイチかバチか繋がるかもしれないと思って、思い切って電話をしてみた。

しかし、やっぱり駄目。
機械音声が「ただいまの時間は営業時間外です」と告げる。
続けて「お困りごとの際は録音に残してください。」と言ってくる。

僕は道の真ん中でひとりで録音するのは恥ずかしいなと思ったけど、
四の五の言ってられないから仕方なく1人で話始める。

「あの~ちくわという者なんですけれども~
500円を入れたんですが反応しなくてですね~
おつりからも出てこないんですよね、あの〜どうしたらよろしいでしょうか…。」

本当にこれで折り返し連絡が来るのだろうか、
僕は不安を抱えながら雨の中、ひとり寂しく家に帰った。

家に帰ってからも500円玉のことばかり考えていたけれど、
僕の不安をよそにちゃんと次の日折り返し連絡はきた。

電話が来た瞬間、すぐに電話に出た。
仕事中だったけど、幸い1人で現場に出ていたから
誰にも見られなくてラッキーだった。

電話をくれた人はかなり話が分かる感じのいいおじさんだった。
「本当に500円吸い込まれたの?」と若干疑われるかもと思っていたが、
そんな素振りも見せず真摯に対応してくれた。

「500円お返ししますので都合がいい時間はありますか、
18時か19時には現場に向かえそうなんですけれども」

19時なら僕も仕事から家に帰ってる時間である。
その時間に約束をして500円を返してもらえることになった。

電話の方は「もし戻られなかったら家まで届けますよ」とまで言ってくれた。さすがに家に着いているだろうと思ったけれど、
念のため住所を伝えて電話を終えた。

これで一安心である。
良かった、500円が戻ってくるんだ!
僕は今にもその場で喜びの舞を踊りたい気分であった。

僕は仕事を足早に終え、家に帰ると母に500円が戻ってくることを報告した。
すると母から今日同じ自販機で「100円返せ〜!」と自販機を叩いている男の子とお母さんを見かけたと話があった。

やっぱり僕以外にも被害者はいたのだ。
だから管理会社も対応が早かったのかもしれない。

僕は夜ご飯を食べながら、管理のおじさんから電話が来るのを待った。
その人とは連絡が来たら自販機の前で待ち合わせする予定になっていた。

しかし、待てど暮らせどおじさんから連絡がこない。

まさか500円返すのは嘘だったのか!?
そんな疑念がよぎり始めていたら
ピンポ~ンとインターフォンが鳴った。

急いで出てみると管理会社のおじさんが500円を握りしめて立っていた。
わざわざ家まできてくれたのだ!!!

僕はちょっとでもおじさんを疑ってしまったことを反省し、
それと同時にそこまでしなくても自販機の前まで行ったのにと思った。

おじさんが言うには自販機はイタズラされていたらしい。
コインを入れるとこに針金のようなものが入れられていて、
それが邪魔をして自販機からおつりが出てこなかったようだ。

おじさんは僕の他にも被害者がいると言っており、その手には100円を持っていた。

僕は心の中で絶対今日お母さんが見た
親子の100円じゃん!!と思っていた。

おじさんは僕に500円を渡し終えると颯爽と去っていった。
ありがとう、おじさん!

これで僕の500円は返ってきた。
昨日はどうなるかと思ったけど泣き寝入りしなくてよかった。
ちゃんと連絡すれば戻ってくるんだ。

さて、自販機も直ったことだし、
またあそこの自販機で懲りずにメッツコーラを買いにいこう。
きっとここまで苦労して飲むコーラは格別に美味いに違いない。




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