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候補

ふと人生がかわった。
僕は15年間、ずっと将来●長になると思って生活してきた。
かみさんに馬鹿にされながら、周囲の噂になるぐらい特に隠すこともなく。
ちょっと自分は違うんだという勝手な特別感を持ちながら。

僕はさまざまな場面で、●長になることを意識した選択をしてきた。
外車に乗ることは避け、
もちろん女性関係も避け、
経済界の誘いはできるだけ断らず、
書き溜めてきた企画書は100枚を超えている。

広く業界にもよく話を聞いてきた。
その都度、その業界なりの困りごとを解決したり、人を紹介したり。
ちょっとした情報を知って、それっぽい人にラインで伝える。そしてありがとうの返信をもらう。
そんなやりとりをなんどもなんども繰り返してきた。
10年間。

自分の情報で、いろんな人たちに貢献できるのは嫌いじゃない。
これからも続けて行こうと思う。

しかし、
そんな状況が、なんの都合なのかいきなりなくなった。
特に終了のゴングも鳴ることなく。
「お前じゃなくなったよ。ごめん」と友人たちから伝えられることもなく。

なんとなく惨めで恥ずかしい思いや、積上が無駄になっていく残念な気持ちとを感じた。

新●長当選のお祝いというていで、ずっと応援してくれていた(と信じていた)友人を飲みに誘った。
最初は、新●長についてちょっと話ができれば、その体制の中での立ち位置の確認という軽い気持ちだったが、
酔っ払うにつれて、口に出すのを我慢できない悔しさがこみあげてきた。

僕は、2次会で酒に酔っぱらった勢いで何度も大声をあげた。
「俺は15年間それをずーっと考え続けてたんだ。」
自分が選ばれなかった不満をぶつけ続けた。その相棒を責めながら。
相棒は静かに聞いていたが、翌朝の「言いすぎた」と伝えたラインへの返信はなかった。

そうやって、僕の15年のテーマは急に幕を下ろした。

寂しいが、
一方で自由も感じはじめている。

車を乗り換え、趣味の情報を集め始めた。
昔の馴染みの店にも遊びに行ってみたり。
ギターを触ってみたり。

とはいえ、偶然だが、思い込み半分だが、
ちょっと変わったテーマで過ごしてこれた15年間は楽しかった。
その気にさせてくれた友人たちに感謝している。ありがとう。

きっとそのうち、ふと次の15年間のテーマがふってくるんだろう。
なんだろうな。楽しみだな。

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