不動産売却のメソッドー物件力を高める

不動産高値売却のメソッドー物件力を高める

「物件力を高める」とは「物件と購入希望者の親和性を高めること」です。具体的には「空室にすること」「物件を磨くこと」によって親和性を高めていきます。それによって高く売却できる可能性が高まります。一例ですが、購入希望者が「100万円の軽微なリフォームで大丈夫そう」と感じるか「500万円で全面リフォームしないと住めそうにない」と感じるかで購入に割ける金額が変わります。その400万円の差がそのまま購入金額に上乗せされることもありますし100万円程度の上乗せに留まることもあります(①)。また、購入希望者は購入可能額の上限に収まる不動産を購入します。仮に3900万円で金額で売却するにしても「500万円のリフォームをしないと住めない家なのか」よりも「100万円のリフォームに収まる家なのか」で購入希望者の数が増えます(②)。

3900万円+500万円=4400万円 = 4300万円+100万円=4400万円
② 3900万円+500万円=4400万円 > 3900万円+100万円=4000万円
  ※購入(売却)金額+リフォーム金額 = 購入希望者の住宅購入費用

大雑把なロジックですが、このような取引は実際に行われています。具体例については「成約事例」の記事をご参照ください。しかし、この「空室」と「物件磨き」が意外と難しい。私たちは自分たちの家の状態に慣れてしまっています。綺麗に掃除したつもりでも購入希望者が気にする箇所まで手入れが行き届かないことが多いのです。床に小さな傷はありませんか?壁紙が剥がれている箇所はありませんか?「これくらいはいいよね」を購入希望者はよく見ています。購入希望者が「どこを見ているのか?」を具体的な対策と一緒に見ていきましょう。


[ Chapter1 ]  空室で高値売却の可能性を高める

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空室にするには勇気が必要

二重ローンを耐える覚悟
居住中での販売と比べ、空室で販売したほうが確実に高値での売却可能性が高まります。ぜひ空室にして販売していただきたいのですが、二重ローンになるケースは少なくありません。

[ 事例 ]
● 勇気をもって空室で販売
「それくらいのことで」と思うかもしれません。ですが、実際に販売するとなると二重ローンになることから現実的に空室にできないことが少なくありません。今回の事例は、奥様が産休・育休から復職することになり、ご実家近くへ引越されるためのお買い替えでした。購入物件を探す前から販売をスタートさせることはもちろん、契約直後に販売スタートすることもできましたが、空室の方が高値売却の可能性が高まることを話し合いお引越し後に売却活動を開始しました。居住中と比べ、空室の方が落ち着いて内見できます。物件を気に入っても居住者様がいると気を使って早く退出しようとします。購入確率は、お部屋の滞在時間に比例して高まる傾向にあるのです。そして、「物件磨き」で不用品を撤去、室内の掃除、スリッパ・芳香剤・部屋を飾る小物(観葉植物など)を購入・設置、電気・水道は使えるようにしておき、照明器具はLED電球をつけました。 「情報の拡散」で他業者を巻き込んだ販売活動を行うことで購入希望者が急速に集まりました。売却が長引けば二重ローンの期間が長くなってしまい、生活を圧迫します。まさに勇気をもった空室での販売が成功を招いた事例でした。


空室が「内覧数」を増やす

伝言ゲームの煩わしさ
居住中の物件と比べると、空室の物件は内覧手配が圧倒的に手間が省けます。居住中物件と空室物件の内覧調整の流れを見ていきましょう。

居住中の場合
① 購入希望者から購入不動産業者へ内覧希望の連絡が届く
② 売却不動産業者へ内覧依頼書が送られてくる
③ 売却不動産業者が売却主へ内覧希望の日程を連絡する
④ 都合が良ければ購入不動産業者へ報告する
④'都合が悪ければ購入不動産業者へ再調整の連絡をする
③ー④を繰り返す
⑤ 売却不動産業者は都合が合致したことを売却主へ報告する
空室の場合
① 購入希望者から購入不動産業者へ内覧希望の連絡が届く
② 売却不動産業者へ内覧依頼書が送られてくる
③ 売却不動産業者は購入不動産業者へ了承の連絡をする

売却主と購入希望者が直に話せば2、3分で決まることですが、間に人が入ると手間が倍に膨れ上がります。売却主、購入希望者双方に言えることなのですが、メールでの連絡を希望されるなど連絡がつきづらい状態にあると日程が決まらず内覧がキャンセルになることもあります。これは損失です。「内見数5件に対して1件が真剣に購入を検討する」というデータがあり、できる限り多くの希望者に内覧してもらうことが成約へ繋がります。逃した魚が大きい可能性もあるのです。また、不動産業者はこの煩わしさを知っているので「居住中」の物件を避けて紹介することがあります。購入希望者に適していると知っていてもです。売却主からすれば(あるいは購入希望者からしても)損失になります。

空室が「滞在時間」を伸ばす

他人の家なのか、売却物件なのか
「滞在時間に比例して成約確率が高まる」というデータがあります。これは心理効果の単純接触効果とも符合する法則です。(初めのうちは興味がなかったり、苦手だったりしたものも、何度も見たり、聞いたりすると、次第によい感情が起こるようになってくる、という効果です:出典wikipedia)できる限り長く滞在してもらうこと、何度も訪れてもらうことが売却に繋がります。居住中物件となると居住者も立ち会います。家具や衣類など生活の匂いがするために、初めて内覧する購入希望者などは「居住者さんに申し訳ないから…」とすぐに帰ろうとしてしまいます。せっかくお互いに都合をつけたのだからじっくり室内をみてもらうべきなのですが「他人の家」では緊張が解けないのは仕方がありません。空室には「他人の家」を「売却物件」にする効果があるのです。

当日の内覧依頼にも対応できる体制
空室にしたならば現地にキーボックスを設置することもお勧めです。上記のように居住中の場合と比べて空室の場合は内覧手配が圧倒的にスムーズです。しかし、前日までに内覧依頼があれば良いのですが、当日に内覧依頼があった場合などは通常のプロセスを経ることができません。現地にキーボックスを設置しておくと当日の内覧依頼に対応することができるようになります。マンションであれば、管理人さんに「キーボックスを設置したいんですけど、どこならOKですか?」と聞いておくとトラブルを回避できます。デメリットも確認しておきましょう。この場合、売却主側の不動産業者は内覧に立ち会いませんので、購入希望側の不動産業者が鍵の閉め忘れ・窓の閉め忘れ・電気の消し忘れが発生することがあります。また、鍵を紛失されることも稀に起こります。このようなリスクがあることを把握したうえで検討してください。

空室で「印象」を高める

● 空室で得られる
居住中と比べ空室は印象を良くするためにかける手段がたくさんあります。

[ 印象を高める売却準備 ]
・ ハウスクリーニングを家全体に入れる
・ あまり費用が掛けられなければ水回りのみクリーニングしてもらう
・ 殆ど費用を掛けられないならばホームセンターなどで専用の掃除用具を購入して清掃する
・ 家の付属品となる給湯器や換気扇などの故障、不具合を補修しておく
・ 定期的に室内を掃除する
・ 壁紙を張り替える
・ 壁紙の張り替えの費用を捻出できないければ専用を購入して清掃する
・ 綺麗なスリッパを用意する
・ 玄関に芳香剤を設置する
・ 玄関、バスルーム、キッチンなどに雰囲気を良くする小物を置く
・ 観葉植物などで室内を飾る
・ カーテンを洗濯する
・ 切れている電球があれば交換する(電球色の統一)

居住中でもできる項目がありますが、ハウスクリーニングや壁紙の張り替えなどは空室ならではの箇所です。費用が掛けられないようであれば、ホームセンターなどで専用の清掃用品を購入して自ら清掃してください。「どうせ売却するのにそんなことをするの?」と思われるかもしれませんが、購入希望者からすれば「購入するのにこんなに汚れているの?」と思うものです。特に女性は清潔性を重視します。明るい新生活をイメージしてもらえるように意識してみましょう。エアコンは後から撤去すると手間になりますが、夏場冬場にエアコンがあると滞在時間を延ばすことができますので、残すことをオススメします。不動産という高額な商品を売却する意識を持って臨んでみてください。


[ Chapter2 ]  居住しながら物件力を高める方法

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商品意識が物件力を高める

● 「自分の家=商品」という自覚を持ち続ける
日常生活に溶け込んでしまっているなか自分の家に商品意識を持つことは簡単ではありません。心理効果に馴化というものがありますが、生物は単調な刺激に対して慣れるようにプログラムされているようです。「床の傷」も「壁紙の剥がれ」も「キッチンの汚れ」もはじめは気になっていたのに、いつの間にか意識の外にあるのではないでしょうか。ちょっと神経質なくらい掃除してちょうどいいと考えてください。なぜなら購入希望者は綺麗に磨かれた新築も内覧しているのです。比較対象に負けないように「自分の家=商品」という意識を持ち続けてください。

内覧前準備のチェックリスト
空室との違いは「印象を高める売却準備」に加えて「内覧前準備」があることです。売却が決まったら「印象を高める売却準備」をできる限り行なってください。空室ほどはできないかもしれませんが入念に行ってください。そして、「内覧前準備」一覧に従って内覧前に実行してみてください。

[ 内覧前10分チェック ]
✔︎ 掃除機で床の清掃
✔︎ キッチンの清掃(食器などはすべて棚にしまう)
✔︎ リビングから衣類をなくす
✔︎ トイレの清掃・消臭
✔︎ バスルームの床に溜まっている水をとる
✔︎ ベッドをホテルのようにセットする
✔︎ スリッパの準備
✔︎ バルコニーサンダルの準備
✔︎ 電気の点灯
✔︎ カーテンを開ける
✔︎ 空気の入れ替え
✔︎ エアコンで室内を快適にする

「内覧前10分チェック」の具体例

玄関を開けた瞬間の印象
「玄関を開けた瞬間」は特別に重要です。玄関は顔なので、開けた瞬間に「買うか買わないか」が決まります。「清潔感を感じられること」「開放感を感じられること」を意識してください。

✔︎ 電気は全て点いていますか?
✔︎ 玄関に物を置いていませんか?(ゴルフバッグなど)
✔︎  靴を全て仕舞っていますか?
✔︎  傘入れは雑然としていませんか? 
✔︎  玄関タイルは汚れていませんか? 

必ず目に入る「スリッパ」で好印象
できればスリッパは新しいものを購入してください。新築ショールームやホテルを意識し「清潔で揃えられている」状態を目指してください。内覧直前に慌てて煩雑に置いたり、使い古しのものを使うと心象が悪くなります。高額な商品に相応しいそれなりのスリッパを用意してください。用意する数としては

男性用2足・女性用2足・お子さんが飽きないように、男の子用と女の子用をそれぞれ1足ずつ用意することをお勧めします。なお、バルコニーからの景色が自慢のお部屋でしたら、バルコニー用にサンダルを用意しましょう。耐久性よりもデザイン重視の新品を置いてください。

無意識に匂いで判断する
ふつうの芳香剤オシャレなスティック芳香剤生活のニオイは、いつもそこで暮らしている人にはわからないものだと思います。そのため、内覧の30前には空気を全部入れ替えておきます。ファブリーズをしたり、芳香剤を置いておくのも良いと思いますが、匂いは人によって臭く感じられることもありますから、無難なのは消臭剤かもしれません。私はいい匂いがする芳香剤が好きなのですが、皆さまはどうでしょうか?なお、オシャレなスティックタイプが個人的にはかわいくてオススメです。

カーテンを開け、電気をすべて点ける
室内は少しでも明るく開放感があるようにしなければいけません。カーテンは内覧前に全て空けておきましょう。レースも空けた方がいいですね。カーテンはタッセルでまとめておくと印象が良くなります。毎日生活している場所だと忘れがちですから、自分が購入するつもりで点検してみてください。カーテンは臭いを吸い込み、汚れが結構ついているものです。室内で喫煙していたり、ワンちゃん・ニャンちゃんがいる場合は、取り外してしまうか、洗濯してキレイにしておいてください。意外と汚いカーテンが重苦しい雰囲気を作っていることがあるのです!次は電気のお話にいきます。電球の色が「昼白色」「電球色」別々になっていると統一感がなく、あまり印象が良くありません。電気を消しているのもダメですね。特に、一戸建ての1階・マンションの北側のお部屋などは暗く感じてしまうものです。お客さまから「消してみていいですか?」と言われていないのに、わざわざ暗い状態を見てもらう必要なんてありません!ちなみにですけど、基本料金をケチって解約している現場をよく見ますけど「ぜったいNG!」ですからね。これは、不動産屋さんがアドバイスをしていないのが悪いと思います。

浴室とトイレを内覧できる状態にする
水回りは女性がぜったいにチェックするポイントです。だからこそ、気持ちを込めたお掃除と入念な準備が必要なのですよ!まずは、お風呂。朝にシャワーを浴びて床も壁もビショビショで中に入れず、扉を開けた瞬間に湿気がムァ~と襲って来たり。また、浴室乾燥機で洗濯物を乾かしているなんてこともよく見る光景です。勝手な主観ですけど、室内が汚れているお家ほど、こういうことに気をつかっていないと思います。…ダメだと思いませんか!?次はトイレです。直前に使って換気していないのは、どう考えてもNGです。せめて消臭スプレーはしておきましょう。また、お子さんのものだから仕方がないと考えず、「おまる」とか踏台とかも片付けるのが良いです。もう1度いいます。「決定権者」の奥さんがぜったいチェックするポイントですから、要注意ですよ。

● アドバイス5:ハウスクリーニングは効果絶大!
キッチン掃除完了!ハウスクリーニング完了!プロのハウスクリーニングは効果絶大なので超オススメしたいです!特に奥さんが毎日使う水回りは重点的に行いましょう。場合によっては、水周りだけでもプロに依頼することを検討してください。写真のような「お掃除完了の報告書」が現地に置いてあると、内覧するお客さまも気をつかってくれて室内が汚れづらくなりますから、良いこと尽くめですね。「汚い部屋なら雑でもいっか。」それが人間心理なのだと感じています…。余談ですけど、テレビドラマに出てくるお姑さんかのように、指で埃をとって息でフッと飛ばす女性を何度か見ました…。失礼な人だなと思いつつ、なんか怖くて文句も言いづらかったです(笑)売主さまが見ていなくてよかった…。こんな人は少ないですけど、常識的な範囲内でのお掃除はがんばりましょう。目に付く大きさの埃をお掃除するくらいでしたら、クイックルワイパーで一拭きですから大丈夫ですよね!?

観葉植物で雰囲気を演出
観葉植物 キッチンに置いてみました観葉植物 玄関に置いてみました観葉植物があると空間が優しい雰囲気で包まれます。空室のお部屋はどことなく寂しい感じがしてしまいますから、明るくかわいらしい緑をちょっと置いてあると良いと思いませんか?大きなものである必要はありませんけど、玄関・主寝室・洗面化粧台・リビング・キッチンなどにそっと置いてみてください。写真映えにも影響しますよ!


● 小物の置き方にも気配りを!
エアコンや照明のリモコンもわかりやすく置いていあると、「あぁ、きっと売主さまは親切な人なんだろうな。」と思ってしまいます。皆さん、バラバラに雑然と置いていますから、ちょっとした差別化につながるかもしれませんね。なお、暑すぎる・寒すぎる季節は内覧時間が極端に短くなります。「エアコンを付けてご内覧くださいね~」と置手紙しておくのはいかがでしょうか?


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