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日本における仏教(1)

日本に伝わった仏教は、大きく分けて三つの系列に分けられます  
1.奈良仏教系(南都六宗系) 
2.平安仏教系(平安二宗系)・密教系 
3.禅宗系(鎌倉仏教禅系) 

これらが時代と共に細分化され、また、日本における文化的、精神的な 
バックボーンから、相互に影響を与えながら発展してきました  

それぞれの系列はまた以下のように細分化しています  
 

奈良仏教系(南都六宗系)
1.1.三論宗 中国・東アジアの大乗仏教宗派
   開祖は慧灌、智蔵、道慈
   経典は中論、十二門論、百論を合わせた「三論」で、
   三論宗と真言宗の兼学で、単独では現存していません
1.2.成実宗 中国十三宗の宗派
   開祖は道蔵
   経典は無く、論宗で論を所依とする宗派で、現存していません
1.3.法相宗 インド瑜伽行派(唯識派)で中国の唐時代に始まった大乗仏教 
   開祖は道昭 
   経典は玄奘三蔵が持ち帰った経典からまとめた解深密経、瑜伽師地論、 
   成唯識論で、遣唐使の僧侶により何度かに渡り伝えられえた宗派
1.4.倶舎宗 中国・東アジアの仏教宗派
   開祖は智通、智達
   経典は阿毘達磨倶舍釋論で、現存はしていません
1.5.華厳宗 中国の大乗仏教宗派系 
   開祖は杜順 
   経典は大方広仏華厳経(華厳経)で、独自の教学体系を立てた宗派
1.6.律宗 戒律の研究と実践を行う宗派 
   開祖は鑑真 
   経典は十誦律、四分律、摩訶僧祇律などで、どの経典を重んじるかで
   さらに分裂し、その後、禅宗と統合し禅律宗と呼ばれたりしたが、
   明治には真言宗として統合されが、
   1900年には律宗として独立した宗派

平安仏教系(平安二宗系)・密教系
2.1.真言宗 中国密教(唐密)を基盤とした大乗仏教の宗派
   開祖は空海(弘法大師)
   経典は秘密曼荼羅十住心論、秘蔵宝鑰で、修禅の道場として開創したが
   弟子に付属分譲し、その後、高野山金剛峯寺と教王護国寺東寺が対立、
   一時的に教王護国寺東寺が主導権を握ったが、東寺の支配から高野山
   の独立を図り古義真言宗派、新義真言宗派に分かれた。
2.2.天台宗 中国を発祥とする大乗仏教の宗派
   開祖は最澄(伝教大師)
   経典は法蓮華経(法華経)で、中国の隋の時代の天台智者大師、
   智顗を中国では実質的な開祖とする大乗仏教の宗派で
   智顗は、鳩摩羅什訳の法華経、摩訶般若波羅蜜経、大智度論、
   そして涅槃経に基づいて教義を組み立て、
   法華経を最高位に置いた五時八教という教相判釈(経典成立論)を
   説き、止観によって仏となることを説いた宗派

   中国での成立は南都六宗より古いが、
   しかし、すでに日本には法相宗や華厳宗が広がっており、
   南都六宗が成立していたので天台宗は後から伝わった宗派となる
   最澄はすべての衆生は成仏できるという法華一乗の立場を説き、
   奈良仏教系の法相宗の徳一と対立していたが、大乗戒壇の勅許が下り、 
   名実ともに天台宗が独立した宗派として確立する
   密教(真言宗)が、日本仏教の中心になる中、
   天台宗も密教を取り込もうと円仁と円珍により密教理論が整えられたが
   双方の弟子が解釈を巡って対立、円仁派は「山門派」、
   円珍派は「寺門派」と分離し、武力抗争を繰り返すが、
   豊臣秀吉の千僧供養により、山門派と寺門派は天台宗としてまとまる。
   密教系ではない天台宗は天台法華円宗として、
   比叡山延暦寺を総本山としていたが、織田信長の焼き討ちにあい焼失

  2.2.1.日蓮宗 日本発祥の仏教の宗派 
     開祖は日蓮
     経典は妙法蓮華経(法華経)で、
     本尊(大曼荼羅)・題目・戒壇を三大秘法として、
     題目(南無妙法蓮華経)を唱えることを重視している宗派
     安房国の天台宗寺院で法華経を得度、日蓮宗を開宗
     立正安国論で自界叛逆難(内乱)と
     他国侵逼難(他国からの侵略)により日本は滅びると予言したが
     元寇は日本が勝ち予言は外れ
     他宗を激しく批判・口撃したため、佐渡流罪となる
  2.2.2.浄土宗 日本発祥の仏教の宗派 
     開祖は法然
     鎌倉時代の法然と言う僧が比叡山延暦寺にて、
     天台宗の教学を学び、阿弥陀仏の本願力を堅く信じ
     「南無阿弥陀仏」と念仏を唱えれば、
      死後は平等に往生できるという専修念仏の教えを説いた宗派
     経典は特にない
     2.2.2.1.浄土真宗 日本発祥の仏教の宗派
         開祖は親鸞
         経典は法然が記した選択本願念仏集で、
         「浄土真宗」を用いるようになったのは親鸞の没後で、
         在家としての規範からはみ出さざるを得ない人々を
         救済するのが本願念仏である宗派

禅宗系 
3.1.臨済宗 中国の禅宗五家の宗派
   開祖は明菴栄西
   師から弟子への悟りの伝達(法嗣)を重んじる宗派で、
   10を超える宗派が存在する
   経典は特に無い
3.2.曹洞宗 中国の禅宗五家の宗派
   開祖は道元
   「正伝の仏法」を伝統とし、「南無釈迦牟尼仏」として釈迦を本尊と
   仰ぐが、各人が坐禅により万法に証せられる(悟る)ことを
   肝要とする宗派
   摩訶般若波羅蜜多心経、妙法蓮華経観世音菩薩普門品、
   妙法蓮華経如来寿量品、大悲心陀羅尼などを読経するが、
   経典は特に無い
3.3.黄檗宗 中国の禅宗五家の宗派
   開祖は江戸時代初期に渡来した隠元隆琦
   明時代の中国禅の特色である華厳、天台、浄土等の諸宗を反映した、
   いわゆる混淆禅の宗派
   お茶の種やインゲン豆を日本に広めた人物で、経典は特に無い

以上が1940年(昭和14年)以前に公認されていた日本における仏教宗派です

脚注
※1)開祖は日本に伝えた人物と日本における各宗派の開祖
※2)経典は代表的なモノのみ、一部は読経される経典も含む
※3)天台宗は多くの宗派派が分裂統廃合しているので、代表的な宗派のみ

昭和以降も日本の仏教は分裂統廃合を繰り返しているので、
余裕があれば後日記事にしたいと思います

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