「旅かえる」がたった一ヶ月で偽物騒動を乗り越え800万DAUの大ヒットとなった理由

晚上好。Gaoqiao(ガオチャオ)です。

株式会社ヒットポイントの放置型シミュレーションゲーム「旅かえる」が中国で大ヒットとなっています。

旅かえる
http://www.hit-point.co.jp/games/tabikaeru/

中国で異例の大ヒット中の日本のゲームアプリ「旅かえる」とは?〈週刊朝日〉
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180129-00000004-sasahi-cn

私がこのアプリの中国でのヒットを知ったのは1/16くらいで知り合いの中国のゲーム会社からこのゲームがすごく流行っていると連絡が来たことからでした。

1/25から開催の台北ゲームショウでも日中ゲーム会社では話題で、これを作った会社を知っていたらコラボしたいなんて話が飛びかっていました。

1/29には日本でもYahoo!ニュースに取り上げられてこの大きなムーブメントがゲーム業界以外にも知れ渡ったといえます。

上海のゲームメディアGameLookの記事によると1/27の時点でダウンロード数が2249万回。DAU(デイリーアクティブユーザー数、一日のプレイユーザー数)が735万人という日本の感覚でいうと10倍はある莫大な数字になっています。1ヶ月で200万ダウンロードとちゃうんや、2000万ダウンロードや。

出典:
《旅行青蛙》DAU超800万排名中国第6:荣耀、恋与、吃鸡玩家最好奇 | GameLook.com.cn
http://www.gamelook.com.cn/2018/01/319710

中国でもこの大ヒットは驚きをもって迎えられています。

中国スマホゲーム業界も日本のスマホゲーム業界と同じようにテンセントやネットイーズといった巨大なゲーム会社が莫大なプロモを打ってユーザーを獲得するという市場になっているので、中国では無名な日本のゲームデベロッパーが大ヒットを産んだこと自体が大ニュース。

もちろん開発者にも注目が集まっていて、国営新聞の人民網も取り上げ、同じく国営テレビのCCTVもインタビューするという異常事態になっています。

いろいろなニュース記事を見ながらざっくり旅かえるムーブメントをまとめてみました。

【旅かえるの中華圏広まり方まとめ】
12/6 中国にてiPhone版配信
1/9 Weiboで話題になり始める
1/17 WeChatのゲーム系の各公衆号で攻略記事が配信
1/19 テンセントビデオのゲームセンターに「旅かえる」が「旅行青蛙」としてフィーチャーされる
1/20 「旅かえる」がAppStoreランキング1位になる
1/22 Weiboで1日で20万の関連記事が配信される、各検索指数がピークになる、30元の有料偽ゲーム「旅行青蛙.」がランキングに登場、「旅かえる」はランキングが大幅に下がる
1/24 偽ゲーム「旅行青蛙.」が通報されて消える
1/26 ゲームに関係ない公衆号で勝手広告コラボが出始める
1/29 週刊朝日が報道して日本のYahoo!トップに掲載
1/31 800万DAU

この中で注目したいのが1/17、1/22、1/26のトピックです。

まずはこの3日に絞ってトピックを一つずつ振り返りたいと思います。


■1/17 WeChatのゲーム系の各公衆号で攻略記事が配信

中国のゲームダウンロード動線も日本と同じようにストアとSNSがあります。

しかし日本と違って中国ではWeibo(Twitterのようなアプリ)やWeChat(LINEのようなアプリ)の公衆号(公式アカウント)でゲームを配信している会社が多くあり、WeChatの公衆号ではまるでストアのようなユーザーインタフェースになっているところもあります。

公衆号はSNSですので記事やストアを容易にシェアできます。そのため中国では検索が必要なストアを介してゲームをダウンロードするより公衆号を通してゲームをダウンロードするケースの方が多くなっています。

ちなみにストアを通さずにアプリをダウンロードすることにはリスクが多いということは日本と同じです。

偽アプリや悪意のあるプログラムを仕組んだアプリなんてのもあるので注意が必要ですが、気にしない人も多いので成り立っています。

大小合わせて3000はあるゲーム系公衆号で下のように旅かえるの攻略記事が流れてきました。

この記事には最後に「このアプリが欲しかったらメッセージで青蛙と送ってね」ということが書いてあります。「青蛙」と送ると下のようにアプリへのダウンロードリンクが配信されてきました。

IOSはAppStoreで「旅かえる」と検索してダウンロードできます。
Androidは下のURLをブラウザで開いてダウンロードできます。
と書いてあります。

問題はAndroidのURLです。このURLは公式のURLではなく、この公衆号が勝手に置いたAPK(アプリのパッケージファイル)のURLです。

このURLは中国国内からじゃないとアクセスできないようになっていて日本にいる今は確認できないのですが、先に書いたように偽アプリまではいかなくても広告SDK(広告を表示するためのプログラム)を差し替えて自社の収益にしてしまうというようなこともできてしまいます。

このAPKがそのような悪意のあるものかはわかりません。このような公衆号の記事により1/17からダウンロード数が一気に伸びていきます。

ちなみに一部の公衆号では下のような中国語版も配信されています。ヒットポイントでは今のところ日本語版しか開発しておらず中国語版の配信はしていないとのことですので、これも勝手にAPKを改造して中国語版にしたケースだといえます。

1/19にはAppStoreのランキング1位になり順風満帆にダウンロード数を伸ばしていた旅かえるですが、1/22に突然ランキングから消え去ってしまいます。


■1/22 30元の有料偽ゲーム「旅行青蛙.」がランキングに登場

出典:
山寨旅行青蛙上架一天骗取百万收入,苹果:陈独秀都没你秀!
https://www.toutiao.com/i6514632303715549699/

突然AppStoreランキングから消えた理由は「旅行青蛙.」という30元の有料ゲームが出現してそちらへユーザーが流れてしまったためでした。

伏線は先ほどの攻略記事です。攻略記事には「旅かえる」の中国語訳として「旅行青蛙」と表示されています。中国人と日本人は文化として漢字を共有していますが、ひらがなを読み書きできる中国人はごく少数です。

当たり前ですがスマホに日本語が入力できるIMEを入れている人もほぼいません。そのため「旅行青蛙」で検索する人が数多くいました。元記事によると百度指数や微信指数といった各検索指数にも現れています。

そこに目をつけた山寨業者(山寨=山賊のすみか、転じて偽物の意味)が「旅行青蛙.」という名前で見た目のよく似た有料ゲームを出してしまいました。

ゲーム性は12月末にWeChatの微信小游戏(マイクロゲーム、HTML5のサブセットで書かれているAPKのダウンロードなしにゲームができる仕組み)でローンチされた無料ゲーム「跳一跳」と同様のシンプルなアクションゲームで「旅かえる」のような放置シミュレーションゲームとは似ても似つかないゲームです。

もちろん間違えて買ってしまった人はレビューでボロクソに書いています。

偽ゲーム「旅行青蛙.」は通報により1/24にはAppStoreから消えますが、かなりの収益をあげたのではないかと思われます。


■1/26 ゲームに関係ない公衆号で勝手広告コラボが出始める

WeiboやWeChatの公衆号ではゲームの配信もされていますが、基本的にはTwitterやLINEの公式アカウントと同じようにお店や会社のキャンペーン情報を流すためのメディアとして利用されています。

そこで最近流行っているのが「旅かえる」との勝手コラボです。

これはローカルグルメ情報サイトのアカウントのキャンペーン情報記事の中で発見した画像です。青蛙と仲間たちが美味しそうに串に刺した焼肉を食べています。

これは某日系コンビニの公式アカウントです。ものやキャラクターをお菓子やおにぎりに変えてあるオリジナル画像ですが構図などを見るとかなりギリギリの線を攻めています。

ちなみに知り合い経由でデベロッパーに聞いてみたところこれらのコラボは全て無許可な勝手コラボとのことでした。

このような商用利用ど真ん中の勝手コラボが無数に存在している一方、旅かえるは普段ゲームをやらない層にも確実に広がっています。

これだけの人々に愛されるコンテンツを作ったヒットポイントにはゲーム会社としてとても羨ましく思います。


【旅かえるの中国ヒット「旅情」説】

最後に「旅かえる」がここまでヒットした理由を私なりに分析してみます。

ヒットポイントは日本でも大ヒットした放置シミュレーションゲーム「ねこあつめ」を開発したデベロッパーとしても知られています。ねこあつめは中国でもヒットをしているのでヒットポイントにとっては2本目の中国ヒットといえます。

しかし、個人的にはとても好きなゲームなのですが、周囲では日本人中国人問わずねこあつめに比べてハマれないとか単調だという感想が多いです。

実際かえるが旅に出てしまうと待ち時間が長く、ねこあつめのように能動的にキャラクターをおびき寄せる手段が少ないため、起動回数はねこあつめでデイリー20回くらいであれば旅かえるはデイリー3回くらいで良い感じがします。

ですが私は気ままに旅に行ってのんびりとしたかえるが帰ってくるのを待つという世界観そのものがヒットの要因になっているのではないかと考えています。

周囲の友人に聞くと中国や台湾だけではなく日本、アメリカ、シンガポールに住んでいる華僑、華人の間でも流行っているようです。

今、中華圏では春節(旧暦の正月、Chinese New Year)前の大忙しの時期、日本でいう師走のタイミングです。今年の春節は2/16で連休は2/15-2/21の7連休になります。春節には日本の正月と同じように実家に帰ったり、旅行に行ったりするのが一般的です。

旅かえるのコンセプトは「旅好きのかえるを旅に送り出しのんびりと帰りを待つアプリ」とのことですので、この大忙しの中を春節休みを楽しみに乗り切ろうと頑張っている休憩時間にふと、気ままに旅へ出かけてしまう青蛙を見ると憧れます。癒されます。青蛙が帰ってきた時に持ってかえってくるお土産や写真は旅情をそそります。

中華圏では出稼ぎが当たり前で待つ人、帰る人がたくさんいます。春節になれば旦那が、息子が、父ちゃんが帰ってくるということを楽しみにしている家族からしても青蛙は癒しの存在になります。


ところで私は今年初めて春節を中国で過ごします。妻の親戚が大量に集まるとのことで今からとても楽しみです。2/15の飛行機で厦門に帰るので、それまでは旅かえるを愛でながら日本での仕事を頑張ろうと思います。

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中学時代からソフト開発販売、路上ライブ情報配信、地域情報動画配信で起業。2年のMBA生活+7年弱のサラリーマン生活を経てゲーム会社グラティーク創業。代表取締役将軍。中国でのゲーム開発をきっかけに月の半分厦門で生活しています。

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