不器用な家族愛【映画ネタバレあり感想】

どうも~千夏です。
今回は映画「ひとよ」のネタバレありの感想記事です。
アマプラで配信終了期限が迫っていたので観てみたのですが、ハマってしまって何回も何回も見ました。
なぜこんなにハマったのか自分でもびっくりです。
ノベライズも借りて二度読みました。

月曜日の放課後になんとなく見始めたんですが、
今週の月から金まで5日間連続で毎日観ました。

お目当ては完全に松岡茉優さんです。
彼女の登場シーンが好きで特に繰り返し見ちゃうんですよね😌

あらすじ


3人兄妹の大樹(鈴木亮平)、雄二(佐藤健)、園子(松岡茉優)は父からひどい虐待を受けていた。
ある日母・こはる(田中裕子)が3人の子を守るため父を殺してしまう。
そこから15年。
母が刑期を終えて家に帰ってくるが、15年間こはるの罪によって子どもたちは多くの苦労を抱えていた。子どもたちはそれぞれ違う気持ちを持ちながらも帰ってきた母にとまどう。



予告編について

え、こういう予告にするの?ってくらい映画を見たときとは違うところがありますが、
良い意味で映画の重要な部分がわからないようになっているところもあります。
自分が観る前にいれた事前情報はこの予告だけです。

ノベライズについて

映画で分からないところも細かく書いてあったり、逆に映画でしかわからないところもあったりします。
映画を見てから読むとどうしても映画のほうがいいなぁって思ってしまいますが、これはこれで好きです。
この本は舞台脚本を小説化したものであり、映画を小説にしたわけではないため違う設定があるのだと思います。
 ただ大樹の奥さんの設定だったり、兄弟の設定だったり、色んなところが映画と違って物語の救いのなさを感じました。
映画で迫力があるから楽しめる台詞も文字起こししたらイマイチみたいな部分も多いです。

初めて観たときの感想

全体的には良かったけどわからないところが多々あった。想像してねというところが多いからか余韻がすごく残る。メインの家族である大樹、雄二、園子、こはる以外は目立たない印象。
平日の月曜日から見るのは絶対やめたほうがいいですw
流し見したせいでよくわかんないな~で終わったので何度も見ました。
なんとなく観るのはもったいないです。




数回観た感想

細かく見て楽しむ仕掛けがあるわけではないはずなんだけど何度も観てしまいますw

でもこのシーンってこういう意味だったんだ~と見るたびに発見があるんです。

一応佐藤健さん主演らしいんですけど、主演って誰なんだ?って思うようになりました。

はじめ見たときは鈴木亮平さんかなーと思ってたけど松岡茉優さんも目立ってたし、
田中裕子さんもヒロインぽいし。

ただ佐藤健さんの役は一番どうしてきたのか良くわからないなーと思うので個人的には主演ではない気がしました。

主な登場人物について


こはる

初めのシーンから驚きました。
台詞一つ一つが強く感じます。
あんまり感情を出すことが上手くないけれど、いびつな愛がある人で本当に子どもたちを信頼しているのだなと思いました。
罪を犯す前の場面でもいや普通こんなことしないでしょというツッコミどころ満載なことをしていて不器用さに思わず笑ってしまいました(←本来は笑うとこじゃないです)


大樹


演じている人ほんとに鈴木亮平さんなの?というくらい今まで観たことのない役柄でした。
何度も見てると一番この人を応援したいなという気持ちになります。
松岡茉優さん目当てだったのにこの役が一番好きです。


不器用で時には手が出るんですけどそのシーンでは、自分の中で感情を処理しようとしてきたこれまでためていたものが全部あふれる感じが伝わってきます。

この映画では唯一吃音持ちのキャラクターですが、他の映画やドラマ作品より吃音が軽い感じに見えます。
吃音映画といえば「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」が有名ですが、志乃ちゃんは筆談していました。
洋画なら「英国王のスピーチ」もありますが、主人公はほぼすべての言葉にどもっています。

当事者からすると志乃ちゃんやジョージ6世より大樹くらいの吃音の人のほうが多い気がします。
軽いというのは憶測でしかありませんが、
筆談しなくても会話ができるし、電話するシーンもあったし、数秒待てばコミュニケーションを取れるので。
どの言葉もなかなか出てこない役、よりも難しそうですね。
言えたり言えなかったりの両方の面を出さなければいけないので。
どのセリフをどもらせてどのセリフをすらすら言えるようにするのかすごく考えて作られていると思います。
吃音の人が出てくるとなんだか話し方を真似されているような気分がしてちょっと見るのをやめるか不安になったのですが、今までみた吃音があるキャラクターの中で一番好きかもしれません。
 少年時代より大人の方が話せていたのは多分少年時代が非日常的なシーンばかりだったからだと思います。
か行とた行が特に苦手で連発、難発、伸発全部あるけど連発が多い印象。
時々言い換えたりもしていました。(「こども」を「むすめ」に言い換えるなど。)

鈴木さんの熱望によりノベライズの設定を急遽入れたことを知りました。
その設定を見逃していたことが繰り返し見るきっかけになったのですがなかなかその設定に気が付きませんでした。

不器用で真面目なところはこはるに近いかも。

 家庭があり、長男としての責任もあり、上手く感情を表せない不器用さもあり、吃音もありと描かれていたものが多かったこともあって特に印象に残りました。
家庭があるからこそ犯罪者の孫の家庭になるという恐れを抱き新たな問題に直面しているところも見どころです。

お母さんが帰ってきたことを機に変わらなくちゃ!と思っているからこそたくさんの葛藤に苦しむのです。

雄二


ミステリアスな感じですがかっこいい。終わりの方のシーンで父への思いがわかるところが好きです。墓参りのシーンで気づいたのですが、お父さんの名前が「雄一」なので、憎い父の名の一部を持っていることもあってなおさら憎しみが沸くのかもしれません。
タクシーにのる園子やほぼ歩いて移動する大樹と違い自転車で移動しているのも注目ポイントだと思います。

新人ドライバー堂下さんとのシーンが印象的で見ていて辛かったです。

こはるに激しく怒る大樹に対してこちらは静かに怒りをぶつけていました。
(ただし静かなのは抑えていただけなんだと後半に分かりますが…。)

そんなときでも佐藤健さんはかっこいいのですが、
佐藤健ではなく雄二としてしか見られません。

15年経っても何も変わらないと言いつつ夢を諦めていません。

主演なのは彼一人だけが東京暮らしだからなんですかね…。
長男みたいなポジションをやっているような次男で頼もしい。
長男は大樹ですが頼りないので園子はほとんど雄二を頼りにしている感じでしたね。

園子

初めて見たときに一番の癒やしで共感できる存在だなーと感じたキャラクター。
すぐ物を投げる癖があって荒っぽいんですけど、兄妹のなかで一番こはるを守ります。末っ子で虐待を受けた年数の少なさとお母さんに甘えたい年ごろに離れ離れになったというのもあってか憎しみをぶつけるシーンは少ないです。
松岡茉優さんがやったからとかそういう忖度なしでコミカルなシーンも多くて見どころいっぱいな役です。特に墓参りのシーンが好きです。
この役があるからただの重い映画にならないのかな。
お兄ちゃんの名前を「だいちゃん」「ゆうちゃん」って呼んでいるのも仲の良さの表れのような気がします。
こはるを信じ続ける彼女がいるから二人の兄もお母さんと縁を切らずなんとか繋がれているのでしょう。

話全体の感想

こはるたち、稲村家周りの家族が稲村家を支えていてとても素敵な映画になっていました。
堂下さんのある設定が稲村家に過去を思わせるような役割を果たしているように感じました。
その設定が余計だって思う方も多くいたみたいですがその設定があるから
ラストに単に前を向いて歩いて行こう!過去は捨ててこう!みたいな単純さが消えているのだと思います。
稲村家は機能不全家族で、4人で笑い合う関係になるのは簡単でないかもしれない。しかし兄妹は結びつきが強いのでなんとかこはると向き合えたのだと思います。


よく見ないとえ?ってなるところについて


レビューで見かけてえ?って思ったことをいくつか。

一つ目。大樹の吃音はおそらくですけど虐待されたからではないと思います。
別に虐待されたから吃音に「なった」わけではないはずです。
悪化はあり得るし、うまく話せないゆえ、暴力に抗えないというのはあると思いますが。

二つ目。
15年間嫌がらせとしてビラを貼られたというのは違うと思います。
こんなに続くのは不自然というふうに書かれていますけれどそもそも続いていたかは分かりません。
続いていたのは犯罪者の子として生きる時間であって嫌がらせではないはずです。
15年後母親が帰ってきて再び15年前と同様の嫌がらせを(継続的にではなく久しぶりに)受けたという設定ではないでしょうか。


音楽について

この映画、主題歌が無いんです。

だから最後まで話に集中できるし、主題歌や歌うアーティストで売っていないのがいいです。


それではまた~。