エッセイやコラムの書き方
エッセイの書き方について、moonさんのnoteが話題でした。そういえば、自分が過去に書いてきたものはエッセイなのか、コラムなのか、あまり意識せずに雑文を書き連ねてきたので。エッセイとコラムの書き方について、これを機にアレコレ考えてみます。エッセイとかを書きたい方の、参考になれば良いのですが。
エッセイとコラムと
エッセイ───随筆とも書かれますね。手元の辞書(大辞林)では〝エッセー〟で項目があり、こんなふうに説明が書かれております。
ざっくり言ってしまえば、「私はこう思う」を書いたものがエッセイですね。
コラムとの違いが分かりづらいですが、コラムはこんな説明があります。
コラムは短い評論。例えば小説などを読んだ・映画を見た感想だとエッセイに、評論ならコラムになりますね。では評論とは何かといえば、コチラの定義はこんな感じです。
どうも、境界線が曖昧になってきましたね。こうなると、論拠が有るか無いかという感じになりそうな。「他の人は嫌い(好き)だと言っても、私は好き(嫌い)だ」と書くのがエッセイ。この作品は〇〇の影響を受けているとか、「この作品の歴史的な価値は…」とか「この作品が作られた背景にはこんな事件があった」…とか、そういう話を書くのがコラム。映画の撮影こぼれ話なども、コラムの範疇になるのでしょうね。そういう意味では、歴史ウンチクなどを書いてきた当方の雑文は、全部コラムということになりますね。実際は、両方が入り乱れていますが。
では、具体的にエッセイを書くときに、どのような点に気をつけているかといえば。読者の立場にたったとき、エッセイを読む理由を考えてみると、
①今まで知らなかった視点や知識を得る
②読んで自分の考え方に変化が生まれる
③なにか思索したり行動するきっかけになる
などでしょうか? 他にもあると思いますが、自分が思いつくのはそんなところ。
①視点の面白さ
例えば、ドイツの文豪ゲーテの詩に、イチョウについて語ったものがございます。イチョウは太古に出現し、多くの地域で絶滅した種なのですが、それがわずかに中国で生き残っており、世界各地に伝わったものです。日本では、室町時代ぐらいに伝わったのではとされます。ヨーロッパにも伝わったのですが、ゲーテはこの東洋的な植物に対して、第二連(スタンザ)で「これは一枚の葉がふたつに分かれたのか? それとも二枚の葉が相手をみつけてひとつになったのか?」という意味のことを書いています。
科学的には、そこはいろんな解釈があるのでしょう。でも、そこを科学的に論じると、コラムになってしまいます。そうではなく、ひとつの葉がふたつに別れたのか、ふたつの葉がひとつにくっついたのか、そういう視点を投げかけることで、第三連に男女の結びつきを想起する。そうすると、今まで何気なくイチョウを見ていた人は、視点が変わりますよね? 誰かに話したくなったり、あるいは恋人やパートナーに会いたくなったり、しませんか?
ゲーテの詩は、そういう意味ではエッセイ的な要素を多分に含んでいますね。
①東洋から来たイチョウという植物の存在や形状を知る
②その葉に男女の出会いや別れを重ねる視点のおもしろさ
③それによって思索や行動をしたくなる部分
要するに、詩とかエッセイとかコラムとか、様式に関係なく、本質を掴むことが大事に思えます。
②組み合わせの意外性
イチョウの葉に、恋人同士の出会いと別れを見つける。この視点は、やはりセンスというもので、なかなかパッと出てくる人はいないでしょうね。でも、訓練方法はあります。それは、意外なものの組み合わせで、文章を書いてみるという手法。それこそ、辞書を適当に開いてみて、そこで目にした文字を組み合わせてみる。キウイフルーツとネコ、みたいな組み合わせですね。とは言っても、キウイフルーツネコキウイフルーツネコキウイフルーツネコ……とブツブツいってみても、ちっとも繋がりません。
そこで、キウイフルーツとネコの間に、橋渡し(ブリッジ)になる言葉を置いてみます。それが、マタタビです。「猫にマタタビ」という言葉があるように、ネコにマタタビの実を与えると、ゴロニャンとなるのは有名ですが。実はキウイフルーツって、マタタビ科マタタビ属の雌雄異株の落葉蔓性植物なんですね。キウイとネコという、関係なさそうなものをつなぐブリッジが、ここで生まれました。でもこれ、キウイフルーツの原種がサルナシという、日本の山にも自生する木の実だと知ってると、わりとあっさり繋がります。
③知識は武器になる
サルナシは漢字で書くと、猿梨。山のサルが食べる梨のような果物、という意味。言われてみれば、キウイフルーツの甘酸っぱさと、種のツブツブとした感じが、梨の実に似ていますね。これ、パイナップルがパイン(松毬)とアップル(林檎)の組み合わせで、見た目が松ぼっくりみたいで林檎のような甘酸っぱい味がする、という部分の投影です。こういう知識があると、キウイフルーツとネコから離れて、「キウイフルーツとサルナシとパイナップルとリンゴ」で、果物の命名のおもしろさを、ネタに一本コラムでもエッセイでも書けそうですね。
例えば、キウイとパイナップルを前ふりに使用しておいて、ライチーやスターフルーツ、ドラゴンフルーツなどの味を、何に例えるか? 古谷三敏先生の『BARレモンハート』では、ドラゴンフルーツを三角形に切った姿が、ごま塩を振った三角おむすびに似てる、なんてお話もありました。個人的には、ドラゴンフルーツのあのツブツブ感、キウイフルーツに似ているなと思います。そんなこともまた、一周回ってキウイフルーツとドラゴンフルーツという組み合わせで、エッセイが書けるかも知れませんね。
④どれを捨てるか?
さて、こうやって材料をアレコレと揃え、どの視点でエッセイなりコラムを各材料が広がったところで、この中から、何を捨てるか、という段階に入ります。植物図鑑とか読むと、次々に知らない知識が入ってきて、とても楽しく。ついつい、調べて得た知識を、全部盛り込みたくなりますが。でもそうすると、雑味が多くなります。自分なりに、オモシロイと思った情報に点数を付け、上位3つ以外はあえて切り捨てる。コレが意外に重要な気がします。
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実際に書いてみる
①コラム風に書いてみる
最初からコラムにするか、エッセイにするかは、商業プロでもない限り、決め付ける必要はないですね。書いてみて、自分に合っていれば、それはエッセイでもコラムでも、名を付けて発表すればいいでしょう。個人的には、鋭い感性にはまったく自信がないので、コラム風の文章で、ゆる~く。
1センテンス100文字で4ブロック。起承転結を意識するなら、これぐらいの長さが書きやすいですね。読者的には、キウイフルーツのウンチクと同時に、自分も買って食べてみようかな、という行動を起こさせることを、裏の目的にした文章です。こういう感じで、これを1セットに、4セットぐらい書くと、400字詰め原稿用紙で10枚ぐらい、1400~1600文字ぐらいの、コラム戈エッセイになります。どっちにするとしても、これぐらいの書き出しは、どっちに転んでも使えます。
②伏線を入れてみる
技術的な話をすれば、最初の章の段階で、無理やり「俵むすび」という言葉を入れています。これは別に、米俵でもラグビーボールでも良いんですが。ドラゴンフルーツに話を発展させるなら、それに繋がるワードを、さり気なく入れておくと、後でその言葉が出てきたとき、読者はテーマがきれいに繋がったような気がします。こういうのは、最初から入れるよりも、推敲する中で入れることが多いですけどね。
起承転結で言えば、承に当たるのですが、ここで見せ場の転のための、伏線が張られます。意外と、ここは単に起を受けるだけのパートと思われがちですが。承は軽視されがちですが、大事です。なお、この伏線は回収しないなら、消してしまって構いませんね。それが推敲ということで。
③意外な展開と伏線回収
さて、ここまで来たら転にあたるパート、意外な展開や予想外の動きを入れて、読む人の興味を引いたり、ザワザワさせる事が求められます。
ここらへんは、実際に筆者に起きたことではなく、知り合いに起きたことなのですが、その知り合いがエッセイを書いたら、という想定です。これを物語風に仕上げて、短編マンガにすることも可能です。そう考えると、エッセイと小説や漫画の距離感って、あんがい近いですね。実体験を持ってフィクションを大きくすれば、物語になるということで。
④締めと余韻の第4節
最後の締め。落語の世界では「一に落ち、二に弁舌、三が仕方」と言われております。落ちとはサゲとも呼びますが、最後の締めの部分。ラストがビシッと決まると、序盤や中盤では受けがイマイチの噺も、グッと評価が上がりますし。逆に、最後の締めがグダグダだと、序盤や中盤ではドッカンドッカン受けた噺も、グッと評価が下がります。
感動的にビシッと締めるのも良いですが、最後はお口直しというか、余韻を入れる感じですね。ここだと、次のキウイフルーツの購入へ思いを馳せることで、読んだ方がキウイフルーツを食べたくなったら、エッセイとしてはまずまずでしょうね。
で、いったん書き上げたら、それを寝かせるのが重要です。勢いで書いたモノは、自分自身も興奮していて、バイアスも掛かっていますから。興奮が収まるまで1日、できれば3日ほど寝かせると、推敲が捗ります。
遂行したバージョンは、またの機会に。当方、なんだかんだでけっこうな分量のコラムを書いていますので、最初から1段落100文字縛りの文章が書けてしまう職業病ですが、一般の方はそういう縛りは設けず、推敲前提で、勢いで書くのをオススメします。
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