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Kindleインディーズで売れるために

ぬこー様ちゃんさんの、こちらのツイートも、経験から得た幾ばくかの雑感を書き加えたいです。もっとも、売れると言っても、7000万円も売れるのではなく、プロでもアマチュアでも、サイドビジネスとしてそこそこ売れるための方法論にしかなりませんが。

こちらの件。 甘いことばかり並べるのもずるいので念のため言っておきますが、 誰でも儲かるわけじゃなくていくつか条件があります。

https://x.com/nukosama/status/1736876780995346914?s=20


①X(旧Twitter)は宣伝の場

①SNSでバズれ 当たり前だけどまずバズらないと読んでもらえない。ちゃんと読者のこころを揺さぶる漫画描いてね。

まずそもそも、バズるのが難しいのですが。ここで駄目な発想は、バズること自体が自己目的化することでしょうね。バズることが目的化すると、受けそうなネタとかトレンドに上がりやすいネタとか、そういうネタを選びがちですが。そうではなく。自分が好きなことや得意なことの中で、何ができるかを考えるのが良いでしょう。

まず、目安として自分のフォロワーの10分の1のインプレッション数なら、合格と考えるべきでしょう。100フォロワーなら10インプレッションで合格。フォロワー数と同じだけのインプレッション数なら、それはもう充分にバズっていると考えるのが、心の安寧かと。

フォロワー数の10倍のインプレッションなら、フォロワーが着実に増えます。まずは、自分の身の丈に合ったインプレッションをベースに、10ポストに1回、フォロワー数と同じインプレッションがあれば良い、というのが焦らずに、マイペースで続けるコツみたいなものですかね。

②二の矢、三の矢を用意する

②シリーズでだせ シリーズものとして出さないとバズっても一冊しか読んでもらえないので大した金額にならない。必ずシリーズとして執筆していき、どこから読んでも読者の気を引く構成にしてね。

一発屋を目指すなら、生涯に1本の大ネタがあればいいですが。少なくとも、ある程度は商売としてKindleインディーズを考えるなら、戦略的な仕掛けは必要でしょう。それが二の矢、三の矢を考えて、用意しておくことでしょう。例えば、梶原一騎先生の場合が参考になるでしょう。

当時、大人気のプロレスラー力道山と知己を得た梶原先生に、新聞社から仕事のオファーが来ます。力道山の人生をコンパクトにまとめた、評伝のようなモノ。でもここで梶原先生、編集部に力道山もやるが、その前に戦前のボクシングの名選手、ピストン堀口選手をやりたいと。

人気の力道山を取り上げれば、確実に人気が取れますが、それで使い捨てにされる可能性もあります。力道山という鉄板の矢の前に、一の矢を持ってくることを考えたのですね。ただ持ってくるだけでなく、ボクシングが好きでわざわざ東京から九州に試合を見に行った、名選手。

この思惑は当たり、ピストン堀口である程度の評価を得た後、力道山のネタを出す。尻上がりの評価で梶原先生、単発の仕事を連載に持ち込んだとか。ぬこー様ちゃんさんの言わんとする部分に、通じるかと。ちなみに梶原先生の作話手法も、大リーグボール2号の消える魔球のアイデアが先にあり、1号が後から生まれたようで。

③ 持続性がリピーターを生む

③再読性のある漫画を心がけろ
一度読んだら2度と読まない系はやめとけ。キャラが魅力的なもの、学びがあるものは時間をおいてからも再度読まれやすいし、それが収益になる。
展開だけを追う系の漫画は2度と読まれん。

再読性、これは本当に大事で。ただ消費されて終わりのネタは、けっきょくは利益に結びつきにくいんですよね。繰り返し読むのに耐える内容は大変ですが、そのぶん長い目で利益を生みます。繰り返し読ませるのは、ある種の濃さや深さが大事で、間口の広さはあまり関係ありません。

拙著『浮世艶草子』は、一話完結の読み切りという、大変に手間暇が掛かる作品で、作っているときは大変でしたが。結果的に、コミック艶の再録や、鬼平犯科帳などのコンビニ本のゲスト収録などで、連載終了後も不労所得をもたらしてくれています。これは『紅娘の海』や『はんなり半次郎』も同じですが。

では、再読性のために必要な要素は何かと言えば、
 ①資料的価値
 ②発見や気づき
 ③世界観の心地よさ

などでしょうか。

①は、データ的な資料や、証言などで参照したくなるモノ。ぬこー様ちゃんさんだと、キャッチ商法に引っ掛かりそうになった実体験など。自分自身が被害者になる可能性があるので、参考例として貴重になります。②は、孫子の兵法や五輪の書、十八史略など、人生哲学・人間哲学系の書などがそうですね。

自分の価値観を揺さぶったり、アップデートするきっかけになったり、実体験から引きつけて得心したり。こういうのは、繰り返し読まないと身につきませんしね。③は、古今亭志ん生師匠の落語とかですね。先々代の中村勘九郎さんなど、亡くなる前は志ん生の落語ばかり聞いていたとか。

筋も展開も落ちも解っていても、繰り返し聞ける中毒性とか、サラッとした淡泊さなどがそれで、これはかなり難しいですが。『放課後ていぼう日誌』や『異世界のんびり農家』などは、その心地良い世界観に浸る作品ですね。これは作家性の問題なので、難しいですが。

④呼び屋と聞かせ屋の重要性

この3つ大事。

とくに③が大事。
めちゃ意識してます。

実は僕のKindleインディーズ、3月から新刊出してないけど収益ほとんど落ちてないです。
なんなら今年の夏が1番収益あったくらい。

多分新刊出してたらもっと収益あったはずだけどね。
へへ。

呼び屋と聞かせ屋というのは、春風亭昇太師などの師匠としても知られる、春風亭柳昇師の言葉。東京落語は、寄席の役割が大きく、そこは芸を披露するだけ出なく、若手の修行の場としても重要ですが。その寄席を維持するには、寄席に客が足を運びたくなる呼び屋が必要と。

ただ、呼び屋だけではダメで、そこできたお客さんに、目立ての芸人とは別の、これはいいと思わせるような、内容のある芸を見せる芸人が必要で、客を寄席に呼び込む呼び屋と、客にじっくり話芸を聞かせる実力を持った聞かせ屋の、両方が大事なんですよね。どっちかに偏ってもいけないというのが、ポイント。

Kindleインディーズに関して言えば、ぬこー様ちゃんさんは、新刊を出していないのに、収益があるのは。もちろん、内容の良さがあるのはもちろんですが。X(旧Twitter)での呼び屋としての活動で、新規のファンを常にリクルートしているからですね。

そういう意味では、呼び屋がTwitterで聞かせ屋がKindleインディーズ。これは、呼び屋がTwitterで聞かせ屋がpixivやnoteという人もいるでしょう。呼び屋がYouTubeで聞かせ屋がKindleインディーズという人も。Twitter・Facebook・Instagram・YouTubeなどのSNSが呼び屋で、Kindle・pixiv・noteが聞かせ屋と。

こういう、棲み分けも重要でしょう。

⑤まとめとして

実際は、そう上手くはいかないでしょうけれども。ただ、出版社から原稿料と印税を貰うというマネタイズ方法から、自分で売って稼ぐという、方法論も保持しておけば、出版社との交渉も変わってくるでしょう。切れるカードが増えれば、交渉が有利になるのは当然ですね。

重要なのは、継続は力なり、という部分でしょう。どうにも、Web漫画媒体に入り込んでくる企業とか、短期で売り抜けて儲けようという感じの話が多くて。そうではなく、長期的なビジョンと、自分で戦略を持って、コツコツと積み上げていくのが大事かと。②の話とも、繋がりますが。

個人的に提案があるとすれば、Kindleインディーズ用の無料本だけでなく、書き下ろし新章などの付加価値を付けた有料版、あるいはAmazonのプリント・オン・デマンド版のサービスを利用した、POD版も用意するのも、ありでしょう。紙の本という、形を実感しやすいモノなら、有料でも購入しやすいですし。

ただ、そのためにはDTPの知識や技術も必要ですが。でも、ぬこー様ちゃんさんほどの売上があれば、編集プロダクションにデータ製作をアウトソーシングするのも可能でしょう。出版社が下請けとして使う編集プロダクションですが、作家が利用するのもまた、令和の時代には一般化するでしょう。

筆者の小説(電子書籍版)でございます。お買い上げいただければうれしゅうございます。投げ銭も、お気に入りましたらどうぞ。

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