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ありがとう細胞


先週、施設で1番ご長命だった方が亡くなった。
105歳だった。


情報漏洩になってしまうので細かいことは書けないのだけど
その方(以下Jさんとする)は、頻繁に「ありがとう」と感謝を伝えてくださる方だった。

オムツ交換をすると「ありがとう」
移乗した後「ありがとう」
訪室して顔を見せるだけで「ありがとう」

入居者さまに感謝されることは、介護士にとって1番の喜びだと思う。
よく聞くことだけど、本当に。

この仕事をしていると、見返りを求めなくなる。
介護することが仕事だから。私たちがやっていることは当たり前だから。
だけれども、そのお相手に「ありがとう」と感謝の言葉をいただけると
ちゃんと人の役に立っているのだな、と実感できて嬉しい。
Jさんは特に、誰よりも、感謝の気持ちを伝えてくださっていた。


そんなJさん。先月から少しずつ状態が落ちてしまい
食事は一切中止、ほぼ寝たきりとなった。
むしろ、105歳になっても普通に離床してごはんを食べ会話ができていたことがすごい。

そういう状態にあった中
夜勤で、体位交換のために居室へ訪室した時に
Jさんが私に向かってなにやら口をパクパクと動かしていた。

"ありがとう"

声にはならない感謝の言葉が聞こえた。


その数日後、食止めになって何日も経過していた頃。
ご家族様に見守られながら、Jさんは静かに息を引き取った。

「飲まず食わずで、一週間以上も生きられたのスゴすぎるよね」
とある職員がそう言った。

私は咄嗟に、
「"ありがとう細胞"のお陰ですよ」
と返した。
我ながら何言ってるんだろうと思った。

けれどきっと、Jさんの長生きの秘訣は"ありがとう細胞" だ。そう私は確信している。


Jさんのように、私もどんな時でも感謝の気持ちを忘れずに
そして思うだけでなくて、ちゃんと伝えていきたい。

いっぱいありがとうを伝えてくれて、ありがとう。Jさん。


p.s 今日は偶然にも3/9、サンキューの日でした。
Jさんに思いを馳せて、1日を終えようと思います。

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