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もし時間を戻せたら 前編

もう1週間ほど経っているけれど、
バレンタインにまつわる苦い思い出をひとつ。



大学時代、私には片思いしてる人がいた。
以下、Iくんとする。

Iくんは一つ下の男の子で、同じバイト先で働いていた。
彼は1年遅れて入ってきたのだが、
誰とも話さず淡々と仕事をするちょっと掴めない人だった。
一応バイト歴2年目の先輩として、気を遣って何度か話しかけたりもしていたが
いつもどこか素っ気なくて、会話はすぐに終わってしまう。目もあんまり合わなかった。
「あ〜これは仲良くなれないタイプだ。」とすぐに悟った。
ぶっちゃけ顔も別にタイプではなかったし、
まさかそんな彼のことを好きになるなんてこの時は思っていなかった。


正直、いつ頃から意識するようになったのかは分からない。
ただIくんとは、当時のバイトメンバーの中で唯一同じ京王線ユーザーだった。
自然と、2人で話す機会が増えた。
方向は違ったので、どちらかの電車を待つまでの数分間だけだったけれど
その時間が積み重なっていき、私はいつの間にかIくんに惹かれていた。

Iくんは、蓋を開けてみるととても話しやすくて
一緒にいて居心地の良さを感じる人だった。

当初素っ気なかったのは、1度限りではない相手には人見知りをしてしまう傾向にあるからとのこと。
「旅行先とかでは、誰に対しても物怖じしないで喋れるんすけどね〜」なんて言い訳がましいことを言っていた。
そんな、どこかひょうひょうとしているところも魅力的だった。

共通の話題もいくつかあり、SNSを交換してからは更に仲良くなった。
電車を待つまでの数分間だけでなく、LINEもポツポツとするようになりIくんとの時間はぐんと増えた。
相手も、私と会話する時はありのままでいてくれている感じがした。

かつての素っ気ないIくんとはまるで別人だった。


中編につづく

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