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A MAN

沈金(ちんきん)とは、江戸時代から日本に伝わる伝統工芸の一つです。塗り終わり完成した漆器に専用のノミを当て、文様を彫ります。

全て彫り終わってから漆を接着剤に、彫った溝に金粉を沈めます。「金」が溝に「沈む」ことから「沈金」と呼ばれる、漆芸の加飾方法の一つです。

彫る加飾技法のため、光の当たる角度によって表情が大きく変わる事が大きな特徴と言えます。

伝統工芸とは、その形状を最低100年保つことが出来なければ「伝統工芸」と呼ぶことは出来ません。

ー作品についてー

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The Rolling Stonesのギタリストであるキース・リチャーズをモデルに沈金をした作品です。本作品も、プラチナ紛を使用しました。

ストーンズの事もキースの事も何も知らず、ロック好きの友人が送ってくれた1枚の写真がきっかけとなりました。模写をして見せ合いをしようと持ち掛けられ、この人の笑いジワとか手の表情、素敵だな。。。デッサンをしたら必ず沈金で作品にしたいと思ったのが第一印象でした。

他の作品も手掛けながら、たまにデッサンをして気が付けば3年も経っていました。実際に彫るにあたり、どれだけの年月がかかるか予想もつかなかったので、のんびり構える事なく本腰を入れて集中し、彫り上がったのはおよそ1年後でした。

・第20回記念日本・フランス現代美術世界展入選作品
・第52回欧美国際公募クロアチア美術賞展推薦作品

ー作品制作にあたりー

どの作品においても、私はその作品に「生きて」欲しいと願い祈りながら
ノミを当て彫っています。色入れの際も同様に祈りながら。

動物や人物がモチーフの時は特にその想いは強くなりますが、般若心経のように文字のみの作品であっても風景であっても、想いは同じです。「生きた」作品が、どなたかの心に「生きて」何かを届けたとしたら、それが私の本望です。

また、伝統について語るとすれば、本来ならば伝統工芸という縛りの中で
アクリル板に沈金とは、考えられない事なのかもしれません。

しかし、「伝統」とは、時代時代によってその都度変化し少しずつ形を変えながら「伝統」として後世に残っていく物だと、私は考えます。

今後も、もしかしたら漆でもなくアクリル板でもない何か違う素材に沈金を施すのかも知れません。

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