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岩波少年文庫を全部読む。(144)社会の外から行動できるためには、悪人は社会の内部のものごとに通じていなければならない。 ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ『きつねのライネケ』(抄)

中世、宮廷は裁判所でもあった

百獣の王ライオンのノーベルが廷臣を招集します。

そこに狐のライネケがいません。狼のイーゼグリムは、ライネケが妻の名誉を傷つけたと訴えます。犬のヴァッカーロース、猫のヒンツェ、兎のランペなど、ライネケにひどい目に合わされた連中が被害者の会を結成します。

ライネケの甥、狸のグリムバートがライネケを弁護しますが、雄鶏のヘニングは、ライネケに惨殺された雌鳥クラッツェフースの屍体を提示し、一気にライネケ告発の動きとなります。
王はライネケを呼び出すことを決定し(中世、宮廷courtは裁判所courtでもありました)、熊のブラウンに使者としてライネケを連れてくるよう命じすのです。

熊の醜態、これって…

ブラウンはライネケの館につきます。でも狡猾なライネケにはかないません。

ライネケは蜂蜜の食べ過ぎで調子が悪い、と言います。「なに? はちみつ???!!!」とざわつく熊。
狐はブラウンを連れて、リュステフィール(という人間)の館の中庭へと赴きます。蜂蜜の魅力に、ブラウンは抵抗できません。

中庭の樫の木に、割りかけの樫の木が横たわっています。楔が2本打ちこんで合って、裂け目が空いています。
ライネケは、その奥に蜂蜜がたっぷり詰まっていると欺き、ブラウンが裂け目に顔を突っこんだときに楔を抜きました。
ブラウンは顔を木に挟まれて抜けなくなり、戻ってきたリュステフィールら人間どもにボコボコにされてしまうのでした。

熊が蜂蜜を求めてなんかにハマってしまうって、まんまプーさんのルーツなんじゃないでしょうか。

中世西洋文学のトポスとしての「狐物語群」

このあとも、動物たちのドタバタは果てしなく続きます。
いったんは宮廷に引きずり出され、死刑を宣告されます。ところが舌先三寸で王を丸めこみ、窮地を逃れたライネケは、さらなる悪行へと突き進むのです。

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