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『ゴリラーマン』的な階級闘争と、クリスマス・ストーリー 岩波少年文庫を全部読む。(141) エーリヒ・ケストナー『飛ぶ教室』

クリスマス前のギュムナジウム

オーバーバイエルンの寄宿学校ギュムナジウム生たちの、クリスマス休暇前の短い期間を描いた小説『飛ぶ教室』(1933。池田香代子訳、岩波少年文庫)は、エーリヒ・ケストナーの代表作のひとつです。

メインとなる5人の5年生(14歳前後でしょうか)は、学校のクリスマスイヴェントにSF劇「飛ぶ教室」の上演を控えています。そのひとりひとりに気がかりがあり、事情があり、直面すべき問題があります。

5人のメインキャラ

ヨナタン・〝ジョニー〟・トロッツは、アメリカ人(おそらくWASP)とのハーフ。親に捨てられ、おば夫婦に育てられました。養父であるおじは船長として外国を回っています。文学少年のジョニーは物静かなロマンティスト。クリスマスに帰省せず、寮で過ごすことになりそうです。

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