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ストリートスナップ 渋谷でスローシャッター

街で写真を撮っていれば、「今日はダメかもしれない…」という日がある。スナップ写真好きならわかってくれると思う。晴れていたのに曇ってきたり、そもそも曇りの日は気分が下がる。晴天下の昼間でもスナップなら問題ないし、雨が降ってると最高だ。それでもダメな日はダメだから撮り続けなければならない。

で、この日は晴れていたけどダメな日だった。こんなこと言って玄人感が出てるけど、普段からダメ写真を量産してるから言い訳にしかならないね。いつもは24-70mmのズームレンズで、35mm固定・F8・SS 1/500で撮っているため、被写界深度が深く被写体の動きもピッタリ止まっている。だからタイミングが合わなかったり、妥協して被写体から離れて撮ると、見事クソ写真のできあがりだ。良い写真を撮りたいなら被写体にグッと近づいて、好みのフレーミングになるまで下がるのが定番だと思うけど、ストリートフォトではそんなの強情の者でもなければ不可能だから、ビビってる写真が大量にSDカードに保存される。

ダメすぎて己の手を撮ることしかできなかった

だからスローシャッターで遊んでみることにした。良い写真を撮ることに集中するよりも、お試しでいろんな表現方法を楽しむのも写真の楽しさのひとつだと思う。とはいえ、何も考えずに撮るのではなく効果的に活かすための練習だと思って撮った。

F22 1/10s ISO 50

騒がしい都会にスローシャッターは似合うが、ただブレているだけでは、表面的な部分しか表現できない。「スローシャッターで撮りました」以外の情報がなく、誰かの琴線に触れることはない。ぼくは修行中の身ゆえ、拙い表現力に耐えて撮る。誰かの心にグッとくる写真が撮れたら幸せだね

F22 1/5s ISO 50

カメラを動かして撮るのか、被写体が動いているのを撮るのかで結果は変わる。個人的には、カメラごと動かして全体をブレさせるほうがダイナミックで好きだ。「おっきくブレさせるほうが好きなんス」と言えば、ほんの少しだけ作品として説得力を得られると思う。あとは経験とタイミングと被写体の選択で説得力を強固にしたい。

F5.6 1/10s ISO 100

これはフォーカスをMFにしてスーツを着た男性を少しピンボケさせて、強めにカメラを動かして撮った。モノクロにして男性のコントラストを上げることでドラマチックになった。ストロボを使えばもっとシャッタースピードを遅くして、もっと背景を流せるが、「光らせました」感がもろに出ると安っぽくなる。街でストロボを使うときはやっぱり夜かな。

F16 1/20 ISO 500

この日撮れた写真ではベスト。被写体のディテールはほとんど失われているけど、わずかに顔のディテールが残っていて、不気味な雰囲気が出ている。この場所では長髪の人が通り過ぎるを待っていたが、ベストな被写体が来てくれず、練習がてら撮り続けていたら撮れたものだ。偶然とはいえ、これは嬉しかった。

F16 1/5 ISO 200

写真は難しすぎる。「良い写真」とは何かいつも考えている。過去の巨匠の作品を見ていると、圧倒的なクオリティに気圧されて自分のやってることが本当にちっぽけに見える。巨匠の産みの苦しみと、凡人の産みの苦しみではやはり深度が違う。生活を犠牲にし命を懸けて写真に全てを捧げている伝説たちに少しでも近づくためには、言い訳している暇はない。ぼくはもっと撮る必要がある。

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