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大喜利論の論:学習における規則と体験

はじめに

 本記事は以下の記事の「大喜利論の論」で語った内容を、ある本の力を借りて修正するものです。
ちんちんこパール雑記|ちんパール (note.com)

 上の記事で、僕は「理屈と抽象」という対比で大喜利論を捉え、理屈で述べるものは初心者レベルにより有効、抽象で述べるものは中級者以上により有効と言いました。
 これについて、「理屈と抽象」よりも適切な対比「規則と体験」で語り直します。規則と体験は、もろに『体はゆく』から拝借したものとなります。

意識の領域の規則と、それを跳び越える体験

 初心者に必要なのが「規則」の学習です。その分野においておおむね通用している規則を知り、まずはその通りに振る舞うことができるようになる。ネット大喜利で言えば、「距離感」「つまらなさの排除」といったキーワードで語られるような内容になります。(余談になりますが、僕は距離感という概念は微妙にネット大喜利的な感覚をうまく表現できていないと感じています。それに代わる概念が僕の中にあり、それについてはいつか記事にする可能性がある!)
 しかしながら、規則を学習しただけでは、トップ層と同じように振る舞うことはできないと僕は思っています。意識の領域の規則を跳び越える『体験』が、感覚の領域へ連れて行ってくれる。これについて、『体はゆく』より、ピアノの学習についての記述を抜粋します。直撮りの画像で引用しますので、視認性の低いこと、これは我慢してください!(マジで見づらいです!)

~ここから、途中部分を飛ばして次へ行きます(p.38→p.47)~

 ピアノの学習において、「このように指を動かす」という規則を学習するだけでは高いレベルへ行けなかった人が、エクソスケルトンという器具により、ハイレベルな運動を体験することで、「あ、こういうことか」と感覚を理解する。
 皆さんにもこうした拍子抜けのような学習の体験の記憶はあるのではないでしょうか。主観的に拍子抜けのようであっても、それは意識的に規則を駆使することではどうしても超えることができない壁だったわけです。外部から体験を提供されるというパターンでなくても、ネット大喜利に参加した当初はわからなかった感覚を、回答を考えているときにふと理解できたという自発的な跳び越え体験をしている人もいるかと思います。
 ネット大喜利は身体運動ではないため、ピアノのように器具によって体験を作る、というのは難しいです。そんな中で、以前の記事で紹介した以下のツイートは、できる範囲での体験の提供をハイレベルで行っているのかなと思います。

 このツイートについて、ハイレベルな「抽象」として僕は捉えていたのですが、それは表現としていまいち本質を突いておらず、感覚の世界の「体験を見せる」ものとしてハイレベルだったということです。エクソスケルトンツイートです。

エクソスケルトンは、意識と関係なく指を動かすことによって、意識することのできない動作、つまりイメージすることのできない領域へと、私たちの体を連れ出してくれます。そのことによって、自分ではできない動作のイメージを与えてくれるのです。
 頭の中でゴール=イメージを設定してやること。これはつまり、前節で論じた「目指すべきかたち」に相当するでしょう。自分の今の動きを、どっちの方向に洗練させていけばよいか、その判断の参照点となる「かたち」。

体はゆく p.49

 大喜利論が、「自分ではできない動作のイメージを与える」のが役割だとすれば、中級者→上級者へジャンプさせるものは、理屈、規則によって記述することが難しく、上級者の体験を見せるようなものの方が有効であると思います。

学習の段階

 『体はゆく』の中で、著者はヒューバート・ドレイファスという哲学者が提唱している技能の段階のモデルを紹介しています。

ドレイファスは、技能獲得を五つの段階に分けています。①ビギナー→②中級者→③上級者→④プロ→⑤エキスパートの五段階です。

体はゆく p.90

 ドレイファスの理論によると、習熟度が高まるに従って、意識的に規則を運用することから離れていく。これが正しいとすれば、やはりどこかの段階で、規則を記述したような大喜利論は頭打ちになるということです。その地点で必要なものが、高度な感覚を理解するということで、そのためには特別な「体験」が必要、ということになります。

その他面白い部分

 以上で大喜利論の論は終わりです。以下にその他の部分で本書の面白かった箇所を紹介します。断片的な紹介となりますので、しっかり読みたい人は本を手に取ってみてください。

職人の感覚

「感覚」「方向性」など、ネット大喜利でも語られる言葉

ないしっぽをふる

個人的に、大喜利は運動学習に近いものだと思っています

あとがき

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